4.植民地支配の「絶対に外せない歴史的事態の本質」? 先に見た創氏改名の記述は全体の中ではそれでもまだマシな方である。創氏改名の話に続いて植民地支配の「本質」の話に入るのだが、ここからは與那覇の理屈を理解すること自体が困難になってくる。 まず、與那覇の議論の前提を確認しておこう。この節の冒頭で、與那覇は近代日本の植民地支配をとらえるポイントとして次のように記す。 「決定的に重要なポイントは、それらを「江戸時代」を東アジアに輸出する試みとして理解することです(本野英一「歴史の変奏としての東アジアの現在」。むろん、その多くは押し売りでしたが)」(p.190-191) 本野英一論文の出典表示はこの一文のみにかかっており、「江戸時代〔化〕」というワードは與那覇の造語なので、いかなる意味の出典なのか興味が湧き調べてみた。すると、そこには次のように記されていた。 「巨視的比較文明論の最近の定説を踏まえ