全国有数の進学校となった渋谷教育学園幕張中学・高校(千葉市)と同渋谷中学・高校(東京・渋谷)。東京大学など国内の一流大学のみならず、ハーバード大学など欧米のトップスクールに進む生徒が増えている。グローバル人材育成校として全国的な注目を集めている。保守的な日本の教育界で、両校創立者の田村哲夫理事長兼学園長(86)は、なぜ「渋幕・渋渋の奇跡」を起こせたのか。 東大より欧米大志望なら渋渋へ「桜蔭より渋渋に行きたい」 2022年春、全国トップの女子進学校、桜蔭と渋渋の両中学に合格した生徒は、両親に渋渋進学を熱望した。桜蔭は「女子御三家」と呼ばれる伝統校で、今年の東大合格者数は77人、卒業生228人のうちの現役合格率は30%超。しかも3人に1人は国公立大学の医学部医学科に進み、最難関の東大理科3類の合格者数は13人と灘高校を抑え、初めて全国トップに立った。 一方、渋渋は1996年に旧渋谷女子校を衣替
東京大学の最難関科類といわれる理科3類(医学部医学科に進学するコース)。2022年の合格者数でトップに立ったのは桜蔭高校。これまで灘高校や筑波大学付属駒場高校、開成高校の男子校ビッグスリーがトップを競ったが、初めて女子校が首位になった。女性ドクター時代の象徴的な出来事かもしれない。 桜蔭から理3に13人、天才タイプではない「天才タイプの子はあまりいないのでは。コツコツ努力の桜蔭ですから。まあ、負けん気の強い子が多いですが、見た目は至って普通ですね」。桜蔭出身の東大医学部医学科の女子学生は笑いながらこう話す。 東大の合格者数は毎年3千人あまりだが、理3の募集人員は97人の狭き門。全国トップクラスの成績優秀層が競う。天才肌で個性的な学生も少なくない。19年のミス東大グランプリにも輝いた上田彩瑛さんは、「趣味はダンスとお笑い」と話し、本をペラペラめくるだけで暗記してしまうと語っていた。 上田さん
授業料は東大の10倍、それでも米国の理系トップ大学、マサチューセッツ工科大(MIT)に進学する日本の若者が増えている。ノーベル賞を受賞した先達らのように、生涯かけて世界最先端の研究に携わり続けることが、彼ら彼女らの目標だ。ただ、ネックになるのが生活費も含め年間700万~800万円ともされる費用。MITに限らず、世界のトップ大学で学ぶ意欲的な日本人学生への資金サポートが課題として浮かび上がってきた。 ニューヨークの女性篤志家に頼る構図2018年9月からMITの大学院でコンピューターによる高度な撮像技術(コンピューテーショナル・イメージング)を研究している前田智大さん(22)は、同大の学部から、米大手IT(情報技術)企業の研究員など社会人志望組らに競り勝って進学を果たした。灘校出身で在学中に国際生物学オリンピックに出場した。東大とMITに合格し、MITを選んだが、問題は留学資金。実家は自営業だ
東京大学より欧米有名大学を志望する生徒が増えている。グローバルな舞台で活躍する人材になるには海外大の方が有利だろう。ただ、高額な学費や生活費で年間1000万円近い費用もかかる。留学支援の応援団長役を買って出たのがカジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの会長兼社長の柳井正氏が率いる「柳井正財団」だ。NIKKEI STYLE キャリア編集長の代慶達也が柳井財団の奨学生を取材した。 「人工知能(AI)は本当に人間を追い越すかな」。柳井氏の質問に「計算機と人間では実現できることは違うのでは。人間には人間にしかできないこともあると思います」と答えたのは英オックスフォード大学1年生の篠川誠人さんだ。東京都立の小石川中等教育学校出身だ。 自分にも他人にも厳しいといわれる柳井氏だが、高校生相手の留学支援の「最終面接」では笑顔を絶やさないという。 柳井財団 2016年以降に155人を
東京大学を受験ヒエラルキーの頂点とする考え方が変わりつつある。東大よりも米ハーバード大学など海外有名大学への進学を目指す高校生が増えている。グローバルな舞台で活躍する人材になるためには欧米の名門大で学び、人脈を形成することが圧倒的に有利だ。国内進学校の勢力図も変わるかもしれない。 英名門のハロウ校が日本進出「今夏に英国の名門パブリックスクールのハロウ校が日本に進出してきます。新たな脅威になるかもしれませんね」。 開成中学・高校の野水勉校長は英語担当教員の言葉に耳を傾けた。8月にも岩手県八幡平市の安比高原に開校するのは全寮制の「ハロウインターナショナルスクール安比」。対象は小学6年生から高校3年生で、将来は900人規模の国内最大級のボーディングスクール(寄宿制学校)になる予定だ。 1572年創立のハロウ校はチャーチル元英首相の出身校として知られ、イートン校と並ぶ英国の伝統的な中等教育機関。優
今どきの東大生の人気就職先はどこなのか。東京大学新聞社がまとめた2021年卒業・修了者の学部・大学院の就職先ランキングによると、民間企業のそれぞれの首位は楽天、ソニーなど国内有名企業だった。ただ、実際の憧れの就職先として多くの学生が挙げるのは、「MBB」と呼ばれる外資系コンサルティング会社(外コン)の3強だ。 マッキンゼー、ボスコン、ベインの「MBB」がビッグスリー「やはりビッグスリーの人気は圧倒的に高い。東大生は文理、学部、院生に関係なく、相当数の学生がMBBにトライしますが、大半が落ちますね」。東大大学院の修士2年の男子学生は話す。 MBBとはマッキンゼー・アンド・カンパニーとボストンコンサルティンググループ、ベイン・アンド・カンパニーの戦略系コンサル3社を指す。東大新聞によると、21年卒の就職先ランキングでは学部が1位は楽天、2位は三菱商事、3位は三菱UFJ銀行。大学院が1位はソニー
「女子御三家」桜蔭・女子学院・雙葉、違いすぎる校風BSテレ東番組コラボ特別編(下)2021 / 9 / 19 BSテレビ東京で毎週月曜日夜10時から放送中の番組「THE名門校」は毎回、ユニークな学校文化をもつ名門校を取材し、その魅力を伝えている。番組解説は当欄「進学校の素顔」の筆者で、教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏。今回の連載はTHE名門校とのコラボレーション特別編として、番組進行役を務める角谷暁子アナウンサーと登坂淳一アナにこれまでで特に印象に残っている放送回ベスト3を選んでもらい、おおた氏に各校の魅力を解説してもらった。2回目は登坂アナ編。 3位 東京「女子御三家」、意外な秘密登坂アナのコメント 女子御三家と言っても学校のカラーはここまでかと思うほど違う。もちろん、テストの順位は出ないというような共通点もあるが。桜蔭学園の「礼法」の授業はすごい。単に立ち居振る舞いの動作が美しいだ
桜蔭中学校高等学校の名物授業の一つが水泳だ。約50年前にできた温水プールは当時珍しかったが、老朽化に伴い学校創立100周年記念事業の一環として建て替える。100年の歴史を経て、桜蔭が「変えるもの」と「変えないもの」は何か。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が取材した。 (上)東大合格トップ女子校 桜蔭の原点は「学びへの渇望」 (中)桜蔭生「勉強してない」は嘘 書道部員が明かす本音 礼法に並ぶ名物授業は水泳全国屈指の大学進学実績で知られる桜蔭は、関東大震災の翌年の1924年に、男性と同等の学びの機会を渇望する女性たちによってつくられた。 建学の精神は「礼と学び」。中学の3年間と高2で必修の「礼法」が桜蔭の名物の一つであるが、もう一つ、桜蔭生にとってはもはや日常になっている名物がある。「水泳」だ。 「創立2年目に千葉の富浦で水泳の指導を行ったという記録も残っています。創立当初から、知力と体力
桜蔭中学校高等学校は校内テストで成績順位を公表せず、宿題もほとんどない。生徒が自発的に勉強する文化が全国屈指の大学進学実績を下支えしている。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が、数々の受賞歴を誇る書道部の活動を通じ、桜蔭生の実相を探った。 (上)東大合格トップ女子校 桜蔭の原点は「学びへの渇望」 (下)桜蔭100周年で新校舎建築 あえてプールを残す理由 週1回の書写だけで字がきれいに女子ご三家の一つとして知られる桜蔭。進学実績に関しては、そのなかでもずば抜けた存在だ。一方で、高2まで、なんらかの部活に所属することが必須となっており、水曜日の6限は部活の時間として定められている。 書道部の活動を見学させてもらった。全日本書芸文化院主催の全国書道コンクールや全国書初大会、成田山全国競書大会に出品。内閣総理大臣賞、文部科学大臣賞、最優秀賞など多数の受賞者を輩出している。全国書初大会では、毎年1
桜蔭中学校高等学校は国内有数の進学校。だが、そんなイメージとはかけ離れ、大学受験との関係が薄そうな道徳の授業にも伝統的に力を入れている。生徒が自分の頭で考え、自分なりの行動規範を身に付けるためだ。女学生の「学びへの渇望」が学校創立の原点だった桜蔭の現場を教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏がリポートする。 (中)桜蔭生「勉強してない」は嘘 書道部員が明かす本音 (下)桜蔭100周年で新校舎建築 あえてプールを残す理由 校長自らが教壇に立つ道徳の授業女子校としては唯一、東大合格者ランキングトップ10に名を連ねる桜蔭。医学部進学者数の多さでも有名な、日本屈指の進学校である。 この日、中学1年生の教室では、齊藤由紀子校長自らが教壇に立っていた。桜蔭では、中1の道徳の授業を、校長自らが担当するのが習わしになっている。初代校長が修身の授業で語った「学べや学べ、やよ学べ」は、いまも桜蔭の合言葉として有
国際物理五輪に7年連続 大阪星光学院、強さの秘密大阪星光学院中学校・高等学校(中)2021 / 3 / 14 物理や化学の「オリンピック」と呼ばれる国際大会で目立った成績を挙げる大阪星光学院中学校・高等学校。同校はあえてスーパーサイエンスハイスクールに申し込まず、ハイレベルな結果を出し続ける。世界レベルの理系生徒を育てる背景を、おおたとしまさ氏が探った。 <<(上)もとは工業高校? 大阪星光学院、100日寝食ともに あえてSSHは見送った大阪星光学院の物理部は2013年以降7年連続で国際物理オリンピックに出場し、しかも必ず銅メダル以上を獲得している。16年には金メダル。直近の19年には銀メダルだった。国際物理オリンピックに出場するには、日本国内で行われる全国コンテストの物理チャレンジで上位入賞しなければならない。 学校としてスーパーサイエンスハイスクール(SSH)への申請を検討したこともあ
東京大学など難関大学への進学状況は受験生の親でなくても気になるところ。今回から特別編として、東大・京都大学・国公立大学医学部・総合の4回に分けて進学校の合格者数ランキングを紹介する。大学通信の協力を得て作成したランキングを、教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏に読み解いてもらった。 特別編(2)京大合格ランキング どうして大阪の公立校が急伸>> 東大合格者数ランキングは複数年の平均で見るべき本連載「進学校の素顔」は、最難関大学合格者数ランキングで上位にある学校に実際に足を運び、単なる進学校としての魅力以外のちょっと変わった角度から光を当て、その学校の素顔を明らかにしようという企画である。しかし2月末の全国一斉休校要請以降、学校現場に取材には行けない状況が続いている。 そこで今回から4回連続でやや趣旨を変え、最新の最難関大学合格者数ランキングを掲載し、上位校の顔ぶれとそれぞれの魅力をかいつま
ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、都心部のオフィス街の人出は再び減少傾向にある。ビジネス書の売れゆきもさえない。そんな中、書店員が注目するのは、1996年から今日まで四半世紀の日本銀行の動きを丹念に追いかけた経済記者による迫真のドキュメントだった。 「試練と苦悩の四半世紀」に焦点その本は西野智彦『ドキュメント日銀漂流』(岩波書店)。著者の西野氏は時事通信社を経てTBS記者となり、日銀や首相官邸、大蔵省(現財務省)、自民党などの取材を担当、金融動乱の時代を間近にみてきた経済記者だ。その著者による「日銀の『試練と苦悩の四半世紀』をドキュメントしようという試み」が本書だ。 プロローグは96年3月、日銀本店の一室から始まる。じっと考え込む男は福井俊彦副総裁(当時
GAFAはなぜ邪悪になったのか 巨大IT企業の闇『邪悪に堕ちたGAFA ビッグテックは素晴らしい理念と私たちを裏切った』より2020 / 8 / 13 「デジタル支配、懸念深まる」「動き出すGAFA規制」――GAFAと呼ばれることの多い巨大IT企業、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムに対する風当たりが強くなっている。米経済をリードする立場にある輝かしいIT企業が「邪悪な巨人」とまで評されるようになったのはなぜなのか。その理由を7月に刊行されたラナ・フォルーハー著『邪悪に堕ちたGAFA ビッグテックは素晴らしい理念と私たちを裏切った』(長谷川圭訳、日経BP)からひもといていこう。 ◇ ◇ ◇ 一気に独占的地位に駆け上がった著者のラナ・フォルーハーは経験豊富な経済アナリストであり、現在はフィナンシャル・タイムズで巨大IT企業(ビッグテック)に関する記事を中心に執
都内でも有数の超進学校である筑波大学附属駒場中学校・高等学校(筑駒、東京・世田谷)。都会の学校にもかかわらず、実際の水田で田植えなど稲作実習があるという意外な取り組みも特徴。その由来は学校の成り立ちにさかのぼるという。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が訪ねた。 <<(上)筑駒生が文化祭で学ぶ裏方としてのリーダーシップ (下)スマホを使った物理実験 筑駒の型破りな授業の狙い >> 日本近代農業発祥の地で実習毎年6月、全身泥んこになった高校生たちが学校に入っていく。なかにはリヤカーを引いている生徒もいる。水田稲作学習の一環で、田植えをしてきた帰りである。学校から徒歩約5分のところに「ケルネル田んぼ」と呼ばれる水田があり、中1と高1が1年間を通して稲作の実習を行う。収穫された米は、卒業式や入学式で赤飯として配られるのが伝統だ。 東京都世田谷区にある筑波大学附属駒場中・高等学校は1学年たった1
東京大学の合格者数で圧倒的な強さを誇る筑波大学附属駒場中学校・高等学校(筑駒、東京・世田谷)。勉強だけでなく、音楽祭などの学校行事に力を入れているのも特徴だ。行事の運営を通じて、生徒に真のリーダーシップとは何かを学んでもらう目的もあるようだ。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が訪ねた。 (中)都会の超進学校・筑駒 なんでコメ作りをガチで体験?>> 音楽祭、体育祭、文化祭が3大行事筑駒には3大行事がある。6月の音楽祭、9月の体育祭、11月の文化祭だ。 音楽祭は、クラス対抗の真剣勝負で行われる合唱コンクール。時期的にも「クラスの団結を強める機会」とある生徒は言う。筑駒は男子校。男子100%の歌声が、人見記念講堂に響き渡る。 体育祭は2日間にわたって開催される。中学は縦割り3色、高校は縦割り4色でのチーム対抗。生徒たちの頭髪は、各チームカラーに染まる。グラウンドや体育館など複数の会場で複数競技
「数学五輪」の常連、灘の数研 先生もかなわない才能灘中学・高校(上) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ2020 / 1 / 5 灘中学校・高等学校(神戸市)は、中高一貫の男子校として難関大学に多くの合格者を出す「超有名」進学校だ。特に医師を志す人が挑む難関中の難関、東大理科3類と京大医学部医学科への合格者数では他を圧倒する。灘の強さの秘密は、どこにあるのか。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が学校を訪ねた。 (中)灘の畳が映す「柔道の父」の教え グローバル人材育む >> 数学オリンピック入賞者も多数灘には数学研究部という部活がある。おいたちははっきりしないが、少なくとも50年以上の歴史をもつ。大学の数学科の学生が読むような、数学の教科書や専門書を読んで輪講する「自主ゼミ」が主な活動内容だ。活動は部員の自主性に任されており、顧問が指導することはほとんどない。 本年度の「自主ゼミ」グループ
世界最難関ミネルバ大で育つリーダー 決断力の導き方『最難関校ミネルバ大学式思考習慣』 山本秀樹氏2019 / 7 / 17 新発想の「ミネルバ大学」が評価を高めている。日本のビジネスパーソンが入学するのは難しいが、運営や学びの手法を仕事に生かすことはできそうだ。『最難関校ミネルバ大学式思考習慣』(日本能率協会マネジメントセンター)を書いた山本秀樹氏は「ミネルバ大はオンライン授業だけではなく、ありよう自体がビジネス的な示唆に富む」という。入学せずに「ミネルバ流」に触れる方法を教わった。 【ミネルバ大学(Minerva Schools at KGI)とは】 運営母体は、米国の著名起業家だったベン・ネルソン氏が「既存の大学のあり方を刷新する」ことを目的として2012年に設立した「ミネルバ・プロジェクト」。21世紀のグローバルリーダーを育成することが教育の主眼だ。 「校舎はなく世界7都市を移動しな
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く