焼身自殺と報道 1963年6月の南ベトナムの首都サイゴンの大通りでの光景だ。当時のゴ・ジン・ジェム大統領は、反政府運動の巣窟になっているとして、仏教徒を弾圧した。社会混乱が起きて数百人の人が殺害された。73歳の高僧ティク・クアン・ドック師が抗議のために焼身自殺を行った。 「後にその様子を見る機会もあったが一度で十分だ。炎が体から舞い上がり、体はどんどん小さくしぼんでいき、頭は黒く焦げていった。あたりは皮膚が焼ける臭いがたち込めた。人間というのは驚くほど早く燃えてゆく。 私の後ろからは集まったベトナム人のすすり泣きが聞こえた。泣くにはあまりにショックで、書きとめたり疑問を投げかけるにはあまりに混乱し、うろたえて、考えることすらできなくなった。燃えていく彼は微動だにせず、声も発さず、彼の落ち着きはらった様子は周りの泣き喚く人々とのコントラストを醸し出していた」 大統領の弟で、秘密警察を仕