ポーランド出身の映画作家イエジー・スコリモフスキは、母国で撮った『身分証明書』(64)、『不戦勝』(65)、『バリエラ』(66/※1)で頭角を表し、ジャン=ピエール・レオを主演に迎えた『出発』(67)はベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞、ジャン=リュック・ゴダールは『出発』を“ポーランド的でやぶれかぶれな映画”(※2)と“羨望と親愛の情を込めて”高く評価したという。“ポーランドのゴダール”とも呼ばれたスコリモフスキの作品に対するゴダールの評価をそのように伝えた山田宏一は、1972年の洋画ベストにて、『早春』(70)をドン・シーゲル『ダーティーハリー』(71)、ベルトルッチ『暗殺の森』(71)を差し置いて、堂々1位に選出している。 順風満帆に見えたスコリモフスキのキャリアだが、『手を挙げろ!』(67)が祖国ポーランドで上映禁止を喰らい、その後、約10年間に亘ってチェコスロヴァキア、ベルギー、ス