生産年齢人口の高齢化が加速する中、最近は労働者の健康が注目される機会が多くなってきた。本稿では、心の健康(メンタルヘルス)と労働との関係について、幅広い読者層を念頭におきながらこれまでの研究から明らかになってきたことを労働経済学の視点から概観・整理し、今後の課題を提示することを目的とする。労働と健康に関連する研究は、労働が健康に及ぼす影響を検証するものと、健康が労働(生産性)にどのような影響を及ぼすのかという2つの視点に大別できる。本稿ではまず、第一の視点である労働が健康に及ぼす影響についてこれまでの研究を整理・考察する。具体的には、労働時間の長さや働き方が、個々の労働者の健康にどのような影響を及ぼすのか、計量経済学の手法を用いて統計的に検証を行った結果を紹介する。そのうえで、労働者の個体差を統計的に取り除いたとしても、労働時間の長さや仕事の性質や働き方、上司との関係性などによってメンタル