その作品を読んだことがない者はいないといっても過言ではない文学者、遠藤周作と芥川龍之介。2人は日本人とキリスト教、キリシタンに関する数々の作品を発表した。多くの人々がその作品に触れ、影響を受けたが、彼らのキリシタン理解はいかなるものだったのか。長年、上智大学キリスト教文化研究所所員を務め、日本キリスト教文学会の役員でもある著者が、精緻な史料分析によって遠藤と芥川が参照した史料を明らかにし、作品に表れたキリシタン観・宗教観を考察する。 本書の第一章で取り上げた「最後の殉教者」は、キリシタンを題材にした遠藤の初めての小説であり、ル・フォールやベルナノスなどのカトリック文学で扱われた殉教観も取り入れられている。そこには、その弱さ故、神を何度も捨てた男のゆるしの体験と神への回帰が描かれており、第二バチカン公会議の「愛とゆるしの神」の先取りともいえる作品となっている。この短編を皮切りに、キリシタンを