そばといえば信州。中でも「幻のそば」として知られるのが、八ヶ岳西麓に伝わる「献上寒晒し(かんざらし)そば」です。厳寒期に手間ひまをかけて作られ、夏に食べられる最高位のそばとして、江戸時代には徳川家に献上されました。現在、食べられるのは長野県茅野市の限られた店で、7月のわずか10日間ほど。そんな貴重なそばのルーツを辿りました。 仕事柄、取材でさまざまなそばを食べる機会も多い筆者。そばが好きなこともあって、オヤマボクチ(山ゴボウ)をつなぎに使った「富倉(とみくら)そば」や、丸めたそばを投じ籠に入れて具と汁で湯がく「とうじそば」など、長野県内のちょっと珍しい信州そばは大抵食べたことがあります。しかし、さすがに「これは未経験!」と言えるのが、八ヶ岳西麓に伝わり、絶品と名高い「寒晒しそば」です。