形あるものはいずれ終わりを迎える。人の人生も星の一生も始まりがあれば終わりがあるのは世の理であって、この宿命から逃れることはできない。高齢社会と一口に言っても、人が亡くなることは自明として、人がどう終末を迎えるのか、周りがどう送るのかが高齢社会問題に対するひとつの視点だ。幸せを感じて安寧のうちに幕を閉じることができる人を増やせる社会が望ましいことは言うまでもない。人が人として生きていくにあたって、その最期にあたっては人として尊厳ある終わり方を迎えたいと願うのもまた、意識という恵みを持つ存在であるが故の理であろう。 本稿では認知症が引き起こす社会問題について、主に都市政策にまつわる視点から取り上げる。いままでも、高齢社会を考えるにあたって重要なパートであった認知症を患う高齢者は重要だという認識は強かったが、九州大学久山町研究を通じて2025年に日本で認知症が700万人を超える推計が発表[1]