山形、福島両県境の山あいにあるJR奥羽線の峠駅(米沢市大沢)の立ち売りが、この5月で115年を迎えた。標高626メートルの無人駅近くにある茶屋の売り子が、わずか30秒の停車時間に名物の「峠の力餅」を売り歩く。JR東日本管内で唯一残る立ち売りに、今もファンが根強く残る。 「ちから~もち~ とうげのめいぶつ~」。今月上旬の朝。2両編成の列車がスノーシェッド内にある駅に到着すると、5代目経営者の小杉大典さん(39)が声を響かせた。自ら売り子としてプラットホームに立つ。 「峠の茶屋 峠の力餅」と書かれた法被を着込み、大正時代から受け継ぐツゲ製の木箱を肩から提げる。中には、あんこが入った餅10個入りの包みが5、6箱。1箱1000円だ。 通勤途中らしい十数人の乗客に動きはない。上下線各1本を見送った後、「平日のこの時間帯は、こんなもの」と話した。 奥羽線福島-米沢間が1899年に開通して2年後