社会学者の稲葉振一郎氏の新著「社会学入門・中級編」の構造推定の説明がちょっとおかしいと言う話が流れていたのだが、他の人々も誤解をしていたりするのかなとtwitter検索をしてみたところ、複数の社会学Ph.Dの人が両者の違いについて疑問を呈しているのが観測された。どうも社会学者の間では、よく考えれば当たり前なのだが、構造形と誘導形という単語に馴染みが無いらしい。 1. 構造形 経済学は数理モデルによる学問体系を持っており、モデルの中でははっきり示されるが、現実には直接観察できない概念(パラメーター)がある。資本と労働が投入要素の生産関数を考えてみよう。もっとも素朴に考えると、以下のような推定モデルが思いつく。 を推定すれば、β1<1とβ2<1が満たされることで限界代替率逓減法則が成立するし、β1+β2を計算することで規模生産性を評価することができる。こういう風に経済モデルと対応関係のある推定