2017年12月6日の朝。渡辺照子(わたなべ・てるこ)さん(1959年生まれ)は、派遣労働者として16年8カ月勤めた東京都文京区のコンサルタント会社へ出勤した。ただ、この日で雇い止めとなる。派遣先ではなく、派遣元の営業マンから通告された。派遣先からは「最後の日に入館カードを返してください」とだけ言われた。 その日夕、渡辺さんは同僚に入館カードを託し、会社を後にした。賞与や交通費が出ない派遣労働者には、退職金もない。時給は1750円で始まり、3カ月ごとに60回以上契約更新したが、昇給はたった80円だった。 ▽シングルマザーに 「派遣はまるで物扱いだ。働くことは収入を得るだけでなく、社会とつながり、キャリアを積んでいくことだと思うが、派遣労働者はそれができない」と渡辺さん。 事務用機器操作という専門業務の派遣社員だったが、電話対応や海外招聘(しょうへい)者のアテンドなどもした。しかし、賃金は1