考察:テツ その1 テツはシアワセな男か? 『チエ』の登場人物の中で、テツほど幸せな人間はいないと思う人も多いだろう。献身的な美しい妻と、しっかりものの娘がいて、定職にも就かず、ただ毎日遊び暮らしているだけで、生活は妻と娘に支えてもらっている。ガキ大将がそのまま大人になったような男で、腕っぷしの強さで周りに子分を従え、自由奔放にさまざまな騒動を巻き起こす。一見、こんなにいい御身分の男はいない、と思われる。 しかし、作品を読んでいると、テツ自身は、たえず欲求不満を抱えており、奇妙な被害者意識を持ちながら生きていることが明らかになる。ふだんは漫然とぶつぶつ文句を言っているだけだが、ときおりそれは明確な表現を取る。 「くそー!くやしいなあ… チエや花井がおまえのその顔を見たら、ワシが被害者やゆうことがはっきり分かるのに…」(単行本第17巻「捨丸のオミヤゲ」) このセリフは、部屋でヨシ江と二人だけ
![jarinkotetu](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/a91820336c12a01451aea80e141a0f655b0835e7/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fhomepage1.nifty.com%2Fpdo%2FTETSU2.gif)