南米ボリビアで、インカ帝国の時代から500年以上にわたり継承され、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されている先住民カジャワヤの伝統医術が、若手の後継者が不足し、存続の危機に立たされている。 中心都市ラパスから車で北に約6時間、標高約4200メートルのアンデス山脈の峡谷部。カジャワヤの代表的な集落、チャハヤ村。村の最長老のラモン・アルバレス・キスピさん(83)が、コカの葉を宙に放り、葉の落ち方を見て、女性患者(26)の病状を占っていた。「軽い風邪。心配しすぎのため、症状を悪化させている」 カジャワヤの医術は、大地の神への祈りと占い、脈診、薬草による治療を組み合わせたもので、インカ時代には中心的な医療だった。当時の医師は、北はパナマから南はアルゼンチンまで出張し、「旅する医師」として知られていた。だが、西洋医療が主流となると、伝統医術は「非科学的」とされ、一時は取り締ま