音楽家・文筆家の菊地成孔が音楽映画について語るロングインタビュー後編。前編では、この10年の音楽映画は音楽の価値が肯定的に描かれ、人々に「生きる希望」や「愛」を与えるものとして機能してきたが、今は曲がり角に入ったという指摘があった。人を狂気に誘うなど音楽のダークサイドを描いたり、音楽そのものの扱いが今までとは異なる作品が増えてきたという。本年度のトニー賞(アメリカの演劇/ミュージカル界で最も権威のある賞)の受賞作からも同様の変化が見てとれるようだ。変わりゆく音楽映画の現状を解説してもらうとともに、今後の可能性や期待することを訊いた。 前編:【菊地成孔が語る、音楽映画の幸福な10年間「ポップミュージックの力が再び輝き始めた」】 『セッション』の新奇性とは この10年、映画の素材として音楽の価値は肯定的に扱われてきました。それは子どもや動物の物語が感動的に描かれるのと同じで、音楽は性善説的に強