企業収益が増えても生産性は上がらない ――生産性という言葉がよく聞かれるようになりました。その分、言葉の誤用も多く、議論に混乱も見られます。昨年11月に刊行された著書『生産性』は時宜にかなったものでした。 内閣府や経済産業省などの政策担当者や企業経営に携わる方から、生産性について尋ねられることが多くなっていた。そうした中、生産性についての誤解が驚くほど多いことに気づいた。内外の研究成果や最新のデータを踏まえて、生産性について俯瞰するものを書こうと思った。 ――代表的な誤解にはどんなものがあるのですか。 まず、生産性の概念のうち、企業の方々がよく使うのが「労働生産性」だ。これは労働者1人1時間当たりにどれだけの付加価値が生み出されたかという数字。分子にあたる付加価値は、日本経済全体の場合にはGDP(国内総生産)、企業の場合には売上高から原材料や光熱費を差し引いた数字、ざっくりいえば粗利になる