今までの人生でお金に困ったことは一度もなかった。ただ、愛に飢えていた。そして、一般的に見れば恵まれているからかも知れないが、承認欲求にも飢えていた。65歳で父親は早々にリタイアを決め込み、いくつかのマンションやアパートと、父親が趣味でやっていたジャズ・バーを引き継いだ。もともと愛想がよくなかったのと、常連もわずかだったので、ほとんど客は来ない店となった。ただ一人の少女をのぞいて。 僕の日常と言えば、マンションやアパートの管理と、家賃収入のあれこれがメインで、それは月のうちの数日で終了する。両親は、変なところがケチだったので、管理に多分に関わっていたが、僕はほとんどを管理会社に丸投げした。その分、実入りは減ってしまうが、僕一人が生きていくのに十分あまりある収入と、このジャズ・バーを維持していくには十分だった。このジャズ・バーだってお金に苦しくなったら売り払えばいいと思っていた。ただ、一人の少