大阪科学医療グループ・香取啓介 「HeLa(ヒーラ)」という名前の細胞を知っていますか? 人工的に培養され、無限に増える能力を持つヒトの細胞だ。誕生からちょうど60年。世界中で培養され、病気や薬、細胞のメカニズムなどあらゆる研究に使われてきた。しかし、HeLaの物語は、科学に大きな課題を突きつけている。 ◇世界での貢献 遺族は20年余知らず 大阪府茨木市、医薬基盤研究所の細胞バンク。タンクのふたを開けると、マイナス196度の液体窒素の煙の中から金属のタワーが現れた。そのラック一つに80本ずつのガラス製アンプルが納められている。 「これ1本に100万個のヒトの細胞がはいっています」。小原有弘研究員が説明した。収集した細胞を培養してストックし、国内外の大学や研究機関、製薬会社などに有償で提供している。年間約3500本。 ヒト細胞の培養は現在、世界で当たり前のように行われているが、出発点はひとり