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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (22)

  • 辺境と文明が逆転する『遊牧民から見た世界史』

    中国がなぜ中国かというと、世界の中心を意味するから。 中国皇帝が世界の真ん中にあり、朝廷の文化と思想が最高の価値を持ち、周辺に行くにつれ程度が低くなり、辺境より先は蛮族として卑しむ華夷思想が根底にある[Wikipedia:中華思想]。 しかし、蛮族とされている遊牧民から見ると、舞台はユーラシア全体となる。遊牧生活によって培われた軍事力で圧倒し、スキタイ、匈奴の時代から、鮮卑、突厥、モンゴル帝国を経て、大陸全域の歴史に関わる。中心と周辺が反転し、中華は一地域になる。 視点を反転することで、いままで「常識」だと考えてきたことが揺らぎ、再考せざるを得なくなる。歴史を複眼的に眺めるダイナミズムが面白い。『遊牧民から見た世界史』は、その手がかりを与えてくれる。 「モンゴル残酷論」の誤り たとえば、「モンゴル残酷論」これは誤りだとする。 モンゴル帝国といえば、暴力、破壊、殺戮というイメージが付きまとう

    辺境と文明が逆転する『遊牧民から見た世界史』
  • この本がスゴい!2018: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    まとめ すごく長くなったので、まとめる。まず、今年のベスト。 このがスゴい!2018のラインナップ。 このがスゴい!2018の一覧は以下の通り。 ◆フィクション 『ランドスケープと夏の定理』高島雄哉(東京創元社) 『舞踏会へ向かう三人の農夫』リチャード・パワーズ(河出書房新社) 『寿司 虚空編』小林銅蟲(三才ブックス) 『直線』ディック・フランシス(ハヤカワ文庫) 『ブッチャーズ・クロッシング』ジョン・ウィリアムズ(作品社) 『槿』古井由吉(講談社文芸文庫) 『平家物語』古川日出男(河出書房新社) ◆ノンフィクション 『知の果てへの旅』マーカス デュ・ソートイ(新潮クレスト・ブックス) 『愛とか正義とか』平尾昌宏(萌書房) 『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』吉川浩満(河出書房新社) 『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』ふろむだ(ダイヤモンド社) 『文学

    この本がスゴい!2018: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
  • これが教養だ! 『これは水です』

    書店に行くと「教養」を謳う雑誌やの多いこと。 ひと昔前のマジックワード「品格」「大人の~」と一緒やね。来ソレが足りなかったり欠けていることを指摘して、その雑誌なりを「買う」ことで補完できるというレトリック。あるいはソレに価値を見いだしている自尊心をくすぐるテクニック。騙されるほうが馬鹿なんだが、わたしもよく騙される(レジまで騙されたら負け)。 つまり「教養」を人質に、コンプレックスを煽るビジネスなのだ。 エセ教養人の手口 「ビジネスリーダーに求められる教養」とか「人生を豊かにする教養」という惹句で、人間関係を円滑にしたり信頼関係を築くためのツールとしての「教養」が重要だという。で、よくよく聞いてみると、ただの雑学や豆知識だったりする。要するに、アイスブレイクや知的マウンティングに使える小話のことを、「教養」と呼んでいるにすぎぬ。 そうやって「教養人」を名乗り、まとめサイトやWikip

    これが教養だ! 『これは水です』
  • 読書猿『問題解決大全』はスゴ本

    一生役立つ一冊。 これ、言い切っていいと思うが、わたしが直面するあらゆる問題は、検討済みである。 新しい問題なんてものはない。「問題」をどの抽象度で定義するかにもよるが、新しく「見える」だけで、分析してみれば、分解してみれば、裏返してみれば、再定義すれば、古今東西の人たちがすでに悩み、検討し、着手し、対処してきた問題であるにすぎぬ。 ただし、対応する人にとってみれば、それは新しい問題である。または、初見の状況に直面することもある。だが、人や状況が違えども、問題そのものは、ほどいてみれば、既出なのだ。新しい状況下で、新しい人が、既出の問題を解き直しているといえる。 そして、問題を解決するための方法もまた既出である。わたしが知らないだけで、古今東西の人たちがすでに考え抜いている。ある手法は学問分野になっていたり、またある方法はライフハックやビジネスメソッドになっていたりする。規制や法制度化され

    読書猿『問題解決大全』はスゴ本
  • 事実のフリした意見を見抜く、隠れた前提を暴く、核心を衝く質問をするトレーニング『国語ゼミ』

    「2週間でこの変更に対応するということだから、残業時間を増やすか、休日出勤するか、どちらにするか君のチームでまとめておいてくれ」※ などと言われると、すぐに詭弁センサーが動き出す。 「2週間でこの変更に対応する」とは、そもそも事実か。何の権限において、誰が、どのようなプロセスを経て決定されたものか。オマエの意見じゃないの? 「残業を延ばすか、休日出勤するか」とあるが、なぜ2択なのか。「対応しない」「品質を下げる」「要員追加」「対応版を後から出す」等は検討したのか。2択なのは、オマエの意見じゃないの? そして、オブラートに包んだ形で尋ねると、たちまち皮が剥がれる。客から電話で受けた要求を、進捗会議でそのまま伝えたら、部長がその2択を出してきたとのこと。オマエは御用聞きか! 実は、重要な問題は※そのものではない。※の中に前提が隠れており、その前提を明確にせずに議論の土俵に乗ってしまうのが、真の

    事実のフリした意見を見抜く、隠れた前提を暴く、核心を衝く質問をするトレーニング『国語ゼミ』
  • 『ゲーデル、エッシャー、バッハ』はスゴ本

    一生モノの一冊。 「スゴ=すごい」の何が凄いのかというと、読んだ目が変わってしまうところ。つまり、読前と読後で世界が変わってしまうほどのこそが、スゴになる。もちろん世界は変わっちゃいない、それを眺めるわたしが、まるで異なる自分になっていることに気づかされるのだ。 『GEB(Godel, Escher, Bach)』は、天才が知を徹底的に遊んだスゴ。不完全性定理のゲーデル、騙し絵のエッシャー、音楽の父バッハの業績を"自己言及"のキーワードとメタファーで縫い合わせ、数学、アート、音楽、禅、人工知能、認知科学、言語学、分子生物学を横断しつつ、科学と哲学と芸術のエンターテイメントに昇華させている。 ざっくりまとめてしまうと、書のエッセンスは、エッシャーの『描く手』に現れる。右手が左手を、左手が右手を描いている絵だ。「手」の次元で見たとき、どちらが描く方で、どちらが描かれている方なのか、

    『ゲーデル、エッシャー、バッハ』はスゴ本
  • 基本から詭弁まで『議論の技術』

    よい議論のためのルールとメソッドを、懇切丁寧に説いた好著。類書と一線を画しているのは、ルール破りや詭弁術の見抜き型・対策まで網羅しているところ。議論の技術とは、ルールブレイカーを追い詰める技術なのかもしれない。 「よい議論」とは、主張のメリット・デメリットを掘り下げ、お互いにとって望ましい結論を導き出せる話し合いのこと。言いたいことをまくし立て、声の大きさやマウンティングで勝ち負けを決めるようでは失格だ。残念ながらそういう輩は会議室に跋扈しているものの、マシンガントークや詭弁使いにとどめを刺す方法も書いてあるのでご安心を。 議論の技術は5つの基技術から成り立つという。 伝達の技術 相手に分かりやすい話し方 傾聴の技術 議論の流れを正しく把握する 質問の技術 論点を深める効果的な聞き方 検証の技術 間違った意見に惑わされない方法 準備の技術 シナリオを作り予防線を張る ロードマップやラベリ

    基本から詭弁まで『議論の技術』
  • 『なぜエラーが医療事故を減らすのか』はスゴ本

    「バグを排除しようと圧力をかけると、バグが報告されないプロジェクトになる」 この寸言は、よく忘れられる。シックス・シグマや日経ナントカに染まった管理者が、バグを目の敵にし、バグゼロの号令をかける。不具合が表面化すると、たまたまそこに詳しいだけの担当を犯人扱いし、なぜなぜ分析を強要し、ccメールや全体会議で晒し者にする。 なぜなぜ分析とは、「なぜそれが起きたのか?」「その原因の原因は?」と、原因を幾重にも掘り下げる手法のこと。5段階も遡及すると、たいてい「私の不注意でした」となり、対策は「意識を入れ替える」という小学校の学級目標になる。反面、もっと深刻な「仕様変更が電話口で伝えられていた」とか「アジャイルの名のもとにテストが省略されていた」などは放置される(なぜなら、「人」を原因にしたいから)。 こんな冗談みたいな施策を続けていくと、スケープゴートになった人はどんどん心をすり減らし、不具合の

    『なぜエラーが医療事故を減らすのか』はスゴ本
  • 「嘘と虚構」を考える

    明日のスゴオフは「嘘と虚構」がテーマ(なんとタイムリーな!)。嘘を嘘と見抜けないと難しいのは、ネットに限らない。中の人が信じるあまり、演じる自覚が無くなってしまい、ただの詐欺やペテンを超えて、ニュースを受け取る「外の人」を巻き込んでいるのが新しい。スゴオフに先立ち、わたしが選ぶ「嘘と虚構」のをご紹介。 まず小説小説は全てフィクションなので「あらゆる小説」が俎上に上る。そこから一歩歪めてメタ視線から小説を捉えなおすと、「小説が語る嘘」が見えてくる。ボルヘスは架空の書物がすでに存在すると見せかけて、要約や注釈を差し出せとアドバイスする。スタニスワフ・レムは具体化して、存在しない書評集『完全な真空』、そして存在しない作品の序文集『虚数』を著す。 なにしろ架空のだから、何だって創造(想像)できてしまう。そもそも小説として成立しなくても、その書評という形態なら示すことができる。例えば『

    「嘘と虚構」を考える
  • ONEとKanonと『サクラカグラ』

    人生に、意味はないけど、甲斐はある。わたしは、様々な「生きてて良かった」に生かされている(密かに"業/ごう"と呼んでいる)。囚われているから、あゆんでいける。 これに書も入る。見かけたとき、目を疑って、飛び上がって、それから踊った。「永遠はあるよ、ここにあるよ」に初めて触れた感情や、「それでは最後のお願いです、ボクのこと、忘れてください」を耳にしたときの感覚がよみがえる。物語に呑みこまれ、もみくちゃにされ、撃たれた記憶が戻ってくる。『ONE』『Kanon』の脚を書いた久弥直樹の、初の長編小説がこれなのだ。 ピンと来ない人向けに言うと、「確定スゴ」。この人が書いたなら、読む前からスゴだと確信できる。ほとんどは死んで評価が定まった作家に対するものだが、生きてる人には珍しい(デビュー作にしてスゴは希少)。編集者も分かっているようで、フルカラー印刷のイラストや、ブルーの栞などチカラ入れま

    ONEとKanonと『サクラカグラ』
  • コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』

    「嘘つきは経済学者の始まり」という諺があるが、コンサルタントも入れるべき。 中の人として働いたことがあるので、その手法は分かってる(まとめ:[そろそろコンサルタントについて一言いっておくか])。だから書は、徹頭徹尾、黒い笑いが止まらない。騙される幹部が悪いのだが、振り回される社員はたまったものではない。ファームであれジコケーハツであれ、理論武装を「外」に求める人は、予習しておこう。あるいは、コンサルティングを「説得の技術」と捉え、逆にそこから学ぼう。 書は、マジシャンが種明かしするようなもの。コンサルタントの方法論である「適応戦略」や「最適化プロセス」「業績管理システム」は、役に立たないどころか、悪影響にもなると暴きたてる。著者は経営コンサル業界で30年も働いて、いいかげんこの「お芝居」にウンザリして、懺悔の名を借りた曝露を出したという。その具体例が生々しい&おぞましい&あるある。

    コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』
  • 『科学と宗教』はスゴ本

    オックスフォード大学の教科書(Very Short Introductions)で、専攻問わず大学新入生の必読書。 片方の肩を持つのではなく、「そもそも何が問題となっているか」を整理する。科学と宗教は、とかく対立するものとして見られるが、そうではないことが分かる。むしろもっと根が深い。「正しいか、正しくないか」ではなく、争点が政治にあることが問題なのだ。 定番のテーマであるガリレオ裁判、進化論に対する理解の変遷、そしてID(インテリジェント・デザイン)説をめぐる論争や、ドーキンスの利他性の問題を採り上げ、科学哲学と宗教的含意の議論をまとめている。 歴史の俎上に乗せてしまうと、科学と宗教は驚くほど似通っていて、対立というよりも、補完・強化する関係になっていることが分かる。先進的な科学者v.s.保守的な教会という構図はドラマティックだが、現実は違う。どちらも頑迷さと寛容性があり、どちらにも知的

    『科学と宗教』はスゴ本
  • 猫専門書店「にゃんこ堂」いってきた

    珍しい専門店「にゃんこ堂」。とはいっても、神保町の姉川書店という普通の屋の中に棚がある構成で、いわば書店内書店なのだ。客足が途切れず、好きホイホイとなっている。 エッセイ・コミック・写真集、絵小説・専門書と、ひたすらづくしで、好きにはたまらない棚だろう。大型書店で限定期間で、を揃えることはあっても、ここのように常設しているのは珍しい。専門ネットショップ「書肆 我輩堂」にも悶絶させられるが、ここのように実際に手に取れるのも嬉しい。 たぶん、今あなたの頭に浮かんだはだいたいある。『100万回生きたねこ』『語の教科書』『綿の国星』あたりがピンとくるが、ありったけを貼っておくので、あなたのイチオシがあるかどうか、探して愉しんでくださいませ。 『ネコを撮る』という発想がイイ 『ノラや』『綿の国星』は鉄板ですな 『ねこのオーランドー』も定番と聞く と写真

    猫専門書店「にゃんこ堂」いってきた
  • より“良い”判断のため『意思決定理論入門』

    十年前、初めて買った年末ジャンボは、一等の番号と完全一致していた。 実は組違いだったのだが、問題はその後。一等組違いの十万円に味をしめ、毎回結構な額を買うようになる。当然かすりもせず、購入額の累積が十万を越えたあたりで期待値に気づく。以降、きっぱりやめてしまった。 文字通り「夢を買う」宝くじを、なぜ買ってしまうのか。合理的に考えるとワリの合わない賭けに、どうして乗ってしまうのか。書を読むと、不合理な選択をする理由が“合理的に”分かる。 もちろん「宝くじはバカに課せられた税金」と貶してもいい。だが、これによると、人は意思決定する際、自分が直面している確率を歪んだ形で認識しているように振る舞うらしい(プロスペクト理論というんだそうな)。 つまり、誰でも確率の計算はできるものの、必ずしもその通りに行動しないのが、“人”なんだそうな。自分では「正しく」判断しているつもりでも、「統計的な確からしさ

    より“良い”判断のため『意思決定理論入門』
  • 『レトリック感覚』と『レトリック認識』はスゴ本

    使い慣れた道具の構造が分かり、より効果的に扱えるようになる。これまでヒューリスティックに馴れていた手段が、一つ一つ狙い撃ちできるようになる。こいつ片手に、そこらのラノベを魔改造したり、漱石や維新を読み直したら、さぞかし楽しかろう。 レトリックというと、言葉をねじる修飾法とか、議論に勝つ説得術といった印象がある。もちろんその通り。アリストテレスによって弁論術・詩学として集大成され、ヨーロッパで精錬された修辞学は、言語に説得効果と美的効果を与える技術体系だ。 だが、「技巧や形式に走る」といって、棄ててしまったのが現代なのだと弾劾する。ものには名があるから、妙に飾らないで、名で呼ぶのがいい……そんな俗物的な言語写実主義の教訓が、私たちの楽天的すぎた科学主義=合理主義=実用主義と混ぜこぜになって、言語感覚を狂わせたのだという。 できあいの言語をじゅうぶん便利なコミュニケーションの道具と信じ、形

    『レトリック感覚』と『レトリック認識』はスゴ本
  • わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: 名著!「デッドライン」

    長くなりすぎたこのエントリのレジュメ …というか、見出しの一覧。これ見てご興味ある方はお読み下さいませ。 マネジメントの4つの質 マネジメントおける簡潔で痛切なエッセンス(一部) 設計とデバッグに関する恐ろしい事実 残業と生産性とプレッシャーに関する恐ろしい事実 生産性の測定について 管理者の怒りについて 会議を効率よく行うための、たったひとつの冴えたやりかた 大事なことが、ずばり書いてある。背中を押したのは「ソフトウェア開発の名著を読む」なんだけど、確かに名著だ。初読は物語を楽しみ、再読、再々読で血肉にすべきだな。 延ばし延ばしにしてた一冊を読み始めて「どうして今まで読まなかったんだあぁぁっ」と叫びだすような逸品がある。書がまさにそう。デマルコは「ピープルウェア」がピカイチと決め付けてた自分が恥ずかしい。 「ピープル」がプログラマ・チームリーダーの視点で書いているが、「デッドライン」

    わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: 名著!「デッドライン」
  • 「悪意の情報」を見破る方法

    ニセ科学、デタラメ統計に振り回されないための入門書。 「嘘は三種類ある。嘘、真っ赤な嘘、そして統計だ」という冗句があるが、これをもじったタイトルが秀逸だ"Lies, Damned Lies, and Science"。これは、嘘つきサイエンスの告発でもある。 科学や技術について考えるのに役立つ視点を提供するとともに、問題の質をはっきり鮮明にとらえることを目的としている。「書は世界を見るための新しいレンズなのだ」と勇ましく言い切る。たしかに同意するが、ネットに出回るデマ学説や詭弁に慣れ親しんだ人には喰い足りないかも。 「マイナスイオン」や「コラーゲン」の胡散臭さを、そのメカニズムから説明し、遺伝子組換品を「フランケンフード」と呼ぶ底意地を指摘する。「地球温暖化」や「ダイオキシン」といった、評価が『多様化』した事例を解説する姿勢が良い。単純に白黒つけられないものには、「ここまでは分かっ

    「悪意の情報」を見破る方法
  • 安くて強くて猥雑で「東京右半分」

    写真の質は「覗き」だ(と思うぞ)。 きれいなお姉さんをナマで見つめることはできないし、立入禁止の場所を見ることは許されないが、写真なら可能だ。写真は、こうした見る欲望を満足させてくれる。書では、普段見れない・知らない・許されない東京を、思う存分「覗く」ことができる。 しかも、東京の右半分に限定だ。渋谷ではなく浅草、銀座じゃなく赤羽、麻布よりも錦糸町だそうな。なぜ? それは、書き手/撮り手である都築響一が喝破する。 古き良き下町情緒なんかに興味はない。 老舗の居酒屋も、鉢植えの並ぶ路地も、どうでもいい。 気になるのは50年前じゃなく、いま生まれつつあるものだ。 都心に隣接しながら、東京の右半分は家賃も物価も、 ひと昔前の野暮ったいイメージのまま、 左半分に比べて、ずいぶん安く抑えられている。 現在進行形の東京は、 六木ヒルズにも表参道にも銀座にもありはしない。 この都市のクリエイティブ

    安くて強くて猥雑で「東京右半分」
  • セックスの回数が増えている件について

    3.11の前と後で、増えてる、きちんと数えてないが、2倍ぐらい(当社比)。 未曾有の危機を目の当たりにし、「ゆれ」に対して極端に敏感になっており、身体モードが戦闘態勢に入っているからだろうか。加えて、目先の不安、将来の不確かさが「生きること」そのものへの欲求をつのらせているからだろうか。生命の危機に瀕すると、生命を残そうとする情動スイッチが興るのだろうか。 吊橋効果というコトバがある。ぐらぐらする吊橋を男女で渡るとき、恐怖によるドキドキを恋愛によるドキドキと勘違いしてしまうやつだ。聞くところによると、婚約指輪がバカ売れしているそうな。コンドームも然りかと。揺れているのは福島だけではない。日列島という弧が巨大な吊橋と化しているのか。 いずれにせよ、スイッチが入ったのは、わたしだけでない。行為に没頭することで不安を鎮めようとするのか、互いが互いにしがみつく。だが、これが「」になると想像力を

    セックスの回数が増えている件について
  • 嫁とKanon(最終回 : あゆと名雪とオレの嫁)

    (前回までのあらすじ)木曜 25:00、BS-i のひそかな愉しみをエロDVD鑑賞と間違われる(その1)。のちにエロゲ原作のアニメだと知られ、マジ離婚を検討される。しかし、ナユキストであるダンナに引きずられるように、いつしか一緒に観るようなるのだが――(その2) このエントリは、京アニKanonの最終回のネタバレを含むよ(反転表示)。 いわゆるギャルゲについての認識が根的に誤っていたことを、京アニに思い知らされる、しかも徹底的に。 つまりこうだ、ギャルゲとは、複数の女の子から一人の娘を選び取り、その子と仲良くなるプロセスを楽しむことが醍醐味だと思っていた。したがって、選ばれなかった子たちは、選ばれなかったエンディングへ向かうことになる。 より反語的な例として「君が望む永遠」を挙げよう。あれは、「選ばれなかったほう」のストーリーこそ秀逸であり、いかに彼女らが傷心と共に己の運命を受け止めたか

    嫁とKanon(最終回 : あゆと名雪とオレの嫁)
    hyaknihyak
    hyaknihyak 2010/05/24
    Kanon問題の正しい解決方法は、「決して諦めないこと」だった、というお話。