死ぬまで題材には困らない すべての部品に存在理由がある精密機械に魅力を感じる一方で、鈴木さんが追い続けているヤクザという存在は、ひと言で説明がつくものではない。 「覚せい剤密売団のボスに『カネが貯まったら何をしたいですか?』と聞くと、発展途上国に病院を造りたいとか言うわけ。人間は悪にまみれていても善を希求したりするわけで、それが人間のダイナミックさなんですよね。暴力団を取材すると、たびたびそういう矛盾に遭遇します。自分のなかにも矛盾はたくさんあるし、一生かけてもその矛盾が解決することはないんでしょうね」 歌舞伎町のなじみの中華料理屋の前で。1度ハマると凝る性分の鈴木さん、実は料理も日々探究中。「土井善晴さんのレシピで作ると魔法使いになった気分になれるんだよね」 撮影/伊藤和幸 鈴木さんが尊敬するノンフィクション作家に溝口敦さんがいる。食肉の世界で暗躍した人物に肉迫した『食肉の帝王』などで知