未知の言葉だらけにもかかわらず、不思議とすらすら読めてしまう。作家、酉島伝法(とりしまでんぽう)さんの新刊『宿借りの星』(東京創元社)は、そんな奇妙な体験へと読者をいざなう。独自の造語をふんだんに使って人類以後の意識を描き、日本SF大賞を受賞したデビュー作『皆勤の徒』から約6年。満を持して放つ初長編で、さらなる洗練を見せた。 舞台は、かつて卑徒(ひと)を滅ぼした異形の殺戮(さつりく)生物たちが暮らす惑星。罪を犯して倶土(くに)を追われた主人公のマガンダラは、異種蘇倶(ぞく)の道連れとともに旅をしながら、彼らの日常が少しずつ変化していることに気づく。それは、静かなる奪還戦争の前ぶれだった――。 冒頭から見たことのない造語が説明もなく並ぶ。それでも、漢字の意味や音がもたらすイメージに身を任せていれば、徐々に世界が像を結んでいく。「じわじわ造語が染み入って、いつの間にか普段から使っている言葉みた
最初に聴いたのは「スターリニズム」という7インチだった。報道では、「遠藤ミチロウはパンク・ロックのゴッドファーザーと呼ばれている」などと書かれているが、どうなんだろうか。 というのも、スターリンが登場したときはUKではパンクはすでに過去のもので、「スターリニズム」がリリースされた1981年においてはポストパンクすらも過渡期を迎えようとしていた。この年PiLは『フラワーズ・オブ・ロマンス』を発表し、ジョイ・ディヴィジョンの残党がニュー・オーダーを始動させている。ザ・スペシャルズが最後の力を振り絞って「ゴーストタウン」を出して、ザ・レインコーツがセカンドを、ニュー・エイジ・ステッパーズが最初のアルバムを発表している。パンクが終わり、アンチ・ロックンロール主義的なポストパンクが沸点に達しているときに、「スターリニズム」の1曲目に収録された“豚に真珠”のパンクのクリシェ(常套句)というべきサウンド
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