たなかあきみつ詩集『イナシュヴェ』について 詩は言語を用いる作品であるが、その伝達においては概念的コミュニケーションよりはイメージコミュニケーションの果たす役割が大きい。もちろん、論理的に明快である詩もあるし、感情が明快に伝わってくる詩もある。そういう詩作品においては、言語が概念として論理的に機能し、あるいは言語が感情の伝達を媒介するものとして滞りなく機能している。そういう詩作品を前にした読者は、「この詩はこういうことを言っているんだね」と容易に理解することができる。 だが一方で詩は、言語にうまくなじまないようなものも言語を媒介に伝達してしまうものであるし、作者の方でも言語にうまく回収できないものをぎりぎり言語化して伝達するものでもある。言葉が概念を伝達するテクストの典型的なジャンルは論文であり、言葉が物語や感情を伝達するテクストの典型的なジャンルは小説である。詩はテクストの諸ジャンルの果
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