カモは水上を悠々と進んでいるように見えるが、水面下では必死に足を動かしている。 「カモの水かき」は美術館運営にも当てはまる。名画や名品を展覧会で優雅に披露するために、膨大な労力と時間、お金が費やされている。しかし、人々がそんな舞台裏を知る機会は少ない。 それ故、「美術館は敷居が高いと思われている。少しでも親しみを持ってもらえるようにしたい」と本書を出版した。担当編集者らと3~4か月かけて対話を重ね、外部の人が何に興味があるのか探り、日本の美術館の成り立ちや独特な展覧会の作り方、学芸員の仕事、作品の 真贋 ( しんがん ) や盗難にまつわる話などで構成した。 1980年に国立西洋美術館の学芸員になり、84年から2年間は「印象派の殿堂」として知られるパリ・オルセー美術館の開館準備室に在籍した。そこで欧米の美術界の多くの有力者と親しくなり、数々の展覧会を実現させてきた。 取材は、2006年からは