ノルウェーが生んだ21世紀を代表する若き巨匠、レイフ・オヴェ・アンスネス。 インタビューを2回にわけてお届けします。 <第1回> 1970年生まれというから、今年で38歳になるはず。それだけ若いというのに、すでに大成した芸術家の風格を漂わせるレイフ・オヴェ・アンスネス。右から左へ、音楽が洪水のように消費される現代社会にあって、自分の血肉と化したレパートリーしか取り上げない、というのは、よほどの意志の力がなければできないことに違いない。急峻な岩山を、一歩一歩足場を確保しながら登っていくような演奏。その演奏が登り詰めた山の頂からは、きっと誰も見たことのないような絶景が広がっていることだろう。 Q:古典派のレパートリー(ベートーヴェン、シューベルトなど)を近年積極的に手がけられています。いま演奏することに理由はおありですか? A:ピアニストとして本格的に練習を始めた頃は、主にロマン派のレパートリ