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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp (136)

  • 中国は大国ぶった「隠れ小国」

    「敵」を見ればその国の大きさがわかる。一人の芸術家や「ジャスミン」という検索語にも脅える中国が大国のはずはない 国力を測る方法はたくさんあるが、どれも非常に不完全なものと言っていい。GDP(国内総生産)という概念を考案した米商務省の担当者らは、当の意味での経済の健全性をみる指標として使うべきではない、とくぎを刺した。GDPはかなり限定的なものだし、そこに含まれていない多くの要素があるからだ。 防衛支出だけで、ある国の軍事力を測るのも不十分。軍事力を考える上では、それを行使する政治的意思といった他の要素が極めて重要になってくるからだ。天然資源はあるに越したことはない。しかし資源があるがゆえに、それ以外の分野の開発がなおざりになれば資源は「災いの元」になりかねない。教育が行き届き、雇用が確保され、国民と政府が目標を共有していれば、人口の多さは素晴らしい原動力になり得る。しかし実際はそういうケ

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    iGucci 2011/04/09
  • ポルトガルが支援要請に追い込まれた日

    飛び火 ギリシャ、アイルランドに続き3カ国目(シャッターが目立つリスボンの通り) Jose Manuel Ribeiro-Reuters 4月6日、ポルトガル政府はついにリングにタオルを投げ入れた。ギリシャ、アイルランドに続いて、EU(欧州連合)に緊急金融支援を要請したのだ。 ポルトガルが財政破綻の崖っぷちに追い込まれたのは、市場での国債売りが加速したため。「外部への支援要請は最後の手段だとずっと思ってきたが、いま決断しなければ、この国が破綻のリスクにされされる」と、ジョセ・ソクラテス首相はテレビ演説で国民に訴えた。 破綻を回避するために必要な額の詳細は現時点ではわからないが、過去の試算に基づいて判断すれば、150億ユーロの緊急支援を含む総額750億ユーロ程度が注入される可能性が高い(ギリシャとアイルランドには計1950億ユーロが融資された)。 ブリュッセルのEU部は以前から、ポルトガル

  • リビア空爆はオバマの戦争だ

    それはまるで矛盾という名の地雷原を慎重に歩いているような物言いだった。バラク・オバマ米大統領が3月28日に、リビア軍事介入への国民の理解を求めようとワシントンで行った演説のことだ。 オバマは、アメリカの重大な戦略的権益が何ひとつ危機にさらされていないなかで踏み切ったリビア空爆を正当化する道を探していた。しかし、これが「戦争」であることは疑いようもない事実。ある国の軍が国境を越えて他国に侵入し、ミサイルを撃ち込んだり爆弾を落とすという行為が戦争と呼ばれないのは、ジョージ・オーウェルが描いた全体主義世界くらいのものだ。 現在、リビアに対して行われているのは人道目的の戦争であり、それは質的には間違っていない。問題なのは、オバマがこの軍事作戦の根拠について明確に説明しないこと。そして彼自身、その曖昧さを自覚している様子が見て取れることだ。 オバマが演説で述べた攻撃の理由は、ほとんどすべてが先制措

    リビア空爆はオバマの戦争だ
  • 震災でわかった日米の競争力格差

    部品がない 日が止まると世界にこんな工場が増える(写真は2010年、業績悪化で閉鎖されたGMの工場) Rebecca Cook-Reuters 津波と原発事故が複合した日の震災の深刻さが明らかになる中、90年代にアメリカが日に経済的に勝利したという考えもまた、実際には神話に過ぎなかったことが明らかになりつつある。 ボルボは今週、日製のナビゲーションとエアコンの在庫が10日分しか残っておらず、工場が操業停止になる可能性があることを明らかにした。ゼネラル・モーターズ(GM)は先週、シボレーコロラドやGMCキャニオンを組み立てているルイジアナ州シェリーブポートの従業員数923人の工場を、日製の部品が不足しているために閉鎖すると発表した。 アーカンソー州マリオンでは、ピックアップトラックのタンドラなどトヨタ車の後部車軸を作っている日野自動車の製造工場が、日から輸入されるギアなどの部品が

  • オバマはデモ隊の味方? リビア空爆で更に複雑化したアラブ情勢

    3月19日(土)のフランス、英国、アメリカ(およびカナダ、イタリア)によるリビアのカダフィ政権に対する空爆は、オバマ大統領としても苦渋の選択だったと思います。まず、空爆に踏み切った理由ですが、大きく2つあると思います。1つは、日の原発危機に端を達した国際的なエネルギー危機の渦中で、カダフィはベンガジという大油田の破壊を示唆しており、アメリカとしては、これを許すわけには行かなかったという点。もう1つは、このままリビアの反政府勢力を「見殺し」にすれば、オバマのイスラム政策、すなわちチュニジアやエジプトでの民衆の蜂起を支持し、アラブの民主化を支持する姿勢が対外的に貫けなくなるという問題です。 ですが、アメリカとしてはここで全面的に攻撃の先頭に立つことはできませんでした。それは、オバマ大統領として2008年の大統領選で当選したのは「ブッシュのイラク戦争」への反対という世論に乗っていた面が強いわけ

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    iGucci 2011/03/21
  • 中国の独身男は革命に興味なし

    革命の嵐が吹き荒れる中東で、反体制デモの中心になっているのが若い独身男性であることを考えれば、中国でも革命が起きて良さそうなものだ。しかし中国の独身男性は、反体制デモに関心があるようには見えない。 人口動態の専門家らによれば、中国には現在、結婚相手を見つけられない独身男性が少なくとも2000万人いる。要は、男が多過ぎるのだ。2020年までには、男性が女性より3500万人も多くなると予測される。原因は、「一人っ子政策」と伝統的に男児をほしがる傾向だ。超音波技術で出産前に性別が分かることにより、女児の中絶も増加した。これらが重なって、80〜90年代生まれの世代の男女の人口比に大きな差が生じた。 近年はこうした「男子偏重」傾向も改善されつつあるが、既に激増してしまった若年男性世代を減らすことはできない。ではなぜ、中国の男たちは一斉蜂起して共産党独裁政権に立ち向かわないのか? 簡単に言えば、彼らに

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    iGucci 2011/03/09
  • オバマ演説で遠のくアメリカ財政再建

    どこかの国と同じ 一般教書演説でも痛みを伴う財政赤字をどう実現するかの説明はなし(1月25日) Pablo Martinez Monsivais-Pool-Reuters 先週、米議会で一般教書演説を行ったオバマ米大統領は、アメリカの財政が置かれている現状を国民にきちんと説明せずに演説を終えた。 アメリカ人は皆、財政赤字を減らしたいと思っている。カイザー家族財団の調査では、54%が議会と大統領に「迅速な行動」を求めており、57%が増税よりも歳出削減を支持している。 だが社会保障給付の削減には64%が反対だ。メディケア(高齢者医療保険)縮小には56%、メディケイド(低所得者医療保険)縮小には47%が反対している。一般教書演説はこうした矛盾と正面から向き合い、次々に歳出を増やす政府の実態を国民に知らせるチャンスだった。 だが国民が聞かされたのは中身のない話ばかり。アメリカが今後「借金の山に埋も

  • サウジ増産でも1バレル150ドルの恐怖

    真の実力は? 米石油業界の大物ブーン・ピケンズは、サウジアラビアには日量1200万バレルの生産能力はないと指摘する Ali Jarekji-Reuters 中東各国に政情不安が広がり、原油の供給不足への懸念は募る一方。そんな中で世界最大の産油国サウジアラビアは2月24日、原油の増産を発表して市場を一安心させた。 ところが翌日、テキサス州の石油業界の大物ブーン・ピケンズ(82)が、サウジアラビアには十分な余剰生産能力がないかもしれないと指摘した。 日量130万バレルの生産量を誇るリビアでは、カダフィ政権打倒の機運が高まり、原油の供給はストップ状態。ロイター通信によれば、その不足を補うために、サウジアラビアはすでに原油生産量を一日当たり70万バレル増の900万バレル超に引き上げているが、当局はさらに1200万バレルまで増産できると主張している。 これに対して、「1200万バレルの生産能力はない

  • 「打倒カダフィ」血のシナリオ

    往生際は カダフィは、エジプトのムバラクのようには引き下がらないかもしれない Osman Orsal-Reuters 最高指導者ムアマル・カダフィ大佐が権力の座について40年以上。大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国(リビア)の独裁体制は終わりを迎えるのか。リビアからの報道は断片的でときに矛盾するものだが、どれもカダフィ体制が危機的状況にあることを示している。 リビアで2番目に大きな都市ベンガジはデモ隊の手に落ち、彼らは嬉々として反体制のスローガンを叫んでいる。首都トリポリは混乱状況にあり、建物は放火され、警官は姿を消した。かつて政権に忠実だった部族の大物や政界のエリートは反体制派に回っており、リビア軍の一部も離反し始めた。 しかし終わりはまだ見えない。カダフィの息子で後継者とされるサイフ・アルイスラム・カダフィは2月20日の演説で「ここはチュニジアでもエジプトでもない」と語り、

  • 最大産油国サウジアラビアが抱える爆弾

    アキレス腱 油田や石油関連施設が密集する東部には不安がいっぱい(アラムコのクライス油田) Ali Jarekji- Reuters 主要な産油国としては初めて、リビアで政権を揺るがす反政府デモが発生した。このニュースに原油価格は急騰し、ガソリン価格の上昇も必至だ。 リビアの最高指導者ムアマル・カダフィの独裁体制に終わりが近づいているかもしれない。そんな憶測の下、実際の原油供給にはまだ何の支障も出ていないにもかかわらず、投機家たちが原油価格を過去2年の最高値水準まで押し上げている。 もしも同様の反政府デモがサウジアラビアで起こったら、やはり同じ結果になるだろう(反政府デモが起こる可能性は否定できない)。サウジは世界の原油価格を左右する重要な存在。世界の原油需要の10%をまかない、例えばリビアの日産160万バレルの供給が突然途絶えるような非常事態に備えた臨時の生産能力において、世界トップレベル

  • バーレーン危機にサウジが怯える理由

    止まらない連鎖 バーレーンの首都マナマの真珠広場には連日、デモ隊が集結している(2月15日) Hamad I Mohammed-Reuters 2月18日午後、バーレーンの首都マナマの中心部に位置する真珠広場をめざして、数千人が街を練り歩いていた。前日のデモに参加して命を落とした市民の葬儀を終えて、広場に集まってきたのだ。待ち受けていた治安部隊は、非武装の群衆に向けて発砲。この衝突で50人が負傷し、少なくとも4人が死亡したと伝えられる。 14日に始まったバーレーンの反政府デモは日を追うごとに激しさを増している。政府は19日に軍を真珠広場から撤退させてデモ隊に対話を呼び掛けたが、応じる気配はない。アメリカがバーレーン当局にたびたび自制を求めている中で起きた武力行使は、近隣諸国にも多大な影響を与えかねない。 中東を席巻する民主化運動の連鎖がペルシャ湾の島国バーレーンにまで及んだ事態に、とりわけ

  • スエズ運河を窺うイランの思惑

    イランが軍艦をスエズ運河を渡らせ地中海に送り込むという「挑発的な」計画を中止した。2月17日、エジプト当局者が発表した。理由については語られなかったが、この当局者によるとイランの軍艦2隻(フリゲート艦と補給艦)がサウジアラビアの紅海沿岸の都市ジッダ付近に停泊しているという。 イランの軍艦がスエズ運河を通過すれば、1979年のイラン・イスラム革命以来初めて。スエズ運河の航行にはエジプト政府の許可が必要だが、イランはエジプトと国交断絶状態にある。エジプトがイラン革命で国を追われたバーレビ国王の亡命を受け入れたためだ。エジプトがイランと敵対するイスラエルと平和条約を結んでいることも関係している。 そのイスラエルのアビグドル・リーベルマン外相は16日、イランのスエズ運河通過計画を明かし、声高に非難していた。リーベルマンはイランは西側諸国を挑発しているとし、イスラエル政府は「このようは挑発行為をいつ

  • 増強する中国軍のステルスな実力

    大きな誤算 対艦ミサイルや次世代ステルス機の開発など、中国軍の軍備増強のペースはアメリカの予想を大きく上回っていた David Gray-Reuters 中国が世界に「力こぶ」を見せつけている。昨年末にアメリカの空母を標的にでき、米軍の戦術的優位を揺るがす対艦弾道ミサイル「東風21D」が配備目前と報じられ、1月初めにはレーダーに捕捉されにくいステルス戦闘機「殲20」の試作機の写真がネットに出回った。 人民解放軍の脅威は見せ掛けだけなのか、物なのか──アメリカの安全保障関係者の間では論争が起きている。台湾から状況を見守ってきた軍事アナリストは、一連の噂によって、アメリカの軍事戦略を撹乱するという中国の主たる目標は達成されたと言う。 「ワシントンの戦略立案者に対しては、心理的に極めて有効な抑止力になった」と、かつて台湾国防部の副部長(副国防相)を務めた林中ビン(リン・チョンビン)淡江大学国際

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    iGucci 2011/02/14
    殲20は実物大の模型だと主張していた専門家はもういないのか?
  • デモ隊の英雄になったグーグル幹部

    英雄の帰還 当局からの解放後、タハリール広場のデモ隊と合流したゴニム Dylan Martinez-Reuters 1月27日、グーグル・ドバイ支社の幹部ワエル・ゴニムはツイッターに恐ろしいメッセージを書き込んだ。「エジプトのために祈ろう。明日、政府が戦争犯罪を犯そうとしているのではないかと心配だ。われわれは皆、死ぬ覚悟ができている」 そして彼は姿を消した。 翌日、怒りに満ちた群集は催涙ガスに息を詰まらせながらも、放水やゴム弾、実弾に立ち向かい、カイロ中心部のタハリール広場で、ホスニ・ムバラク大統領の退陣を訴えた。 27日から消息を絶っていたゴニムは、彼の解放を求める国際的な動きもあって2月7日に解放された。「自由とは戦って得る価値のある神聖なものだ」と、彼は午後8時過ぎにツイートした。 解放された日の夕方、民間テレビ局ドリーム2のインタビューに答えたゴニムは、視聴者の感情に訴える言葉でム

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    iGucci 2011/02/09
  • 中国の不動産高騰はこれからも続く

    今年も中国経済の快進撃が続きそうだが、アナリストたちは中国不動産の値上がりを警戒している。中国の国家統計局によると、過去1年の不動産価格の値上がり率は7・7%。しかし実際にはもっと大幅に上昇していると、多くの専門家は考えている。 政府は住宅ローンの貸し出しを制限して市場の沈静化を図っているが、昨年、土地への投資と建物の建設の増加率は共に30%を突破。住宅価格は大部分の中国人には手が出ない高値のままだ。この2つの点を考えれば、不動産バブルを警戒する人が多いのも当然に思える。 しかしどんなに過熱しているように見えても、中国文化的要因に支えられてバブルは膨らみ続ける。中国では伝統的に、自分の家を所有することは高い地位の証しだった。増加する中流層もこの伝統に縛られているようだ。 最近の世論調査によると中国女性の大半が、家を所有していない男性は結婚相手として考えられないと答えている。そのため、親

  • 独裁政権の裏をかくハッカーたちの頭脳戦

    先週、エジプト政府が国内のインターネット網を遮断してから数時間後、意外な連中が状況打開に乗り出した。世界の「ハッカー」たちだ。 すべての始まりは、アメリカ起業家シャービン・ピシェバーがネットが遮断直後にツイッターに書き込んだメッセージ。エジプトにある普通のノートパソコンをインターネットルーターに転換するソフトウェアを現地に送りたい、そのために力を貸してほしいというものだ。このソフトを使って、パソコンからパソコンへメッセージを順次送っていく形の通信網「メッシュネットワーク」を作ろうというのだ。 世界の技術者たちはこのメッセージを次々に広め、「オープン・メッシュ・プロジェクト」への協力を申し出た。ルーター機能を生かせば近くの人との通信は可能になる。もしネットワーク内の1台がダメになっても、別のパソコンを通じたルートを探してメッセージを伝達できる。「携帯型の臨時ネットワークは作れる」とピシェバ

    独裁政権の裏をかくハッカーたちの頭脳戦
  • ロシア「民主化改革」の欺瞞

    かつてロシア最大の石油会社だったユコスの元社長ミハイル・ホドルコフスキーに昨年末、再び有罪判決が下った。ホドルコフスキーは既に実刑を言い渡されて服役中だが、今回の判決で民主化へ向けた国民の期待は無残に打ち砕かれた。 世論調査によると、今回の裁判で問われた横領罪についてホドルコフスキーが有罪だと考えるロシア人はたった13%。彼の有罪判決は、メドベージェフ大統領の大胆な公約が空約束だったことを印象付けた。 大統領就任から1年たった09年、メドベージェフは「蔓延する腐敗」の一掃を宣言。「ロシアは民主的な方法で発展を遂げられることをわれわれ自身に、そして世界に示そうではないか」と国民に呼び掛けた。 その後の年次報告演説でも、大統領はロシア社会の「法律無視」を厳しく糾弾。警察や官僚が権限を利用して私腹を肥やしている実態を非難した。この演説で国民は勇気づけられたが、今回の判決でメドベージェフへの信頼は

  • エジプト危機に震え上がるイスラエル

    エジプトのホスニ・ムバラク大統領の退陣を求める抗議デモの様子を、イスラエル人は固唾をのんで見守っている。ユダヤ国家であるイスラエルにとって平和条約を交わしたエジプトは、アラブ世界における頼れる盟友と言っていい。 ムバラク政権の崩壊は「イスラエル、ヨルダン、サウジアラビア、湾岸諸国、ヨーロッパやアメリカにとって大惨事になる」と、イスラエルの元駐エジプト大使エリ・シャケドは言う。「我々の友人の中で、この最悪のシナリオで得をする者などいない」 イスラエル政府が事態を深刻に考えていることは、デモについてのコメントを控えるよう閣僚らに指示していたことからもうかがえる。1月31日になって初めて、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が「イスラム主義組織による支配への懸念」を示した。 イスラエルにとってムバラクはアラブ世界における穏健派の要となる存在で、アラブ諸国への橋渡し役だった。「79年に平和条約を結んでからず

  • 失策続きFRBをもう誰も信じない

    FRB(米連邦準備理事会)とはけんかをするな──投資の世界の古いことわざだ。政治家がメディアにけんかを売らないのと同じで、投資家はドルをいくらでも刷れる連中に逆らうべきではない。FRBが金利を下げたがっていて、そのために大量の米国債を買い入れる用意もあるというなら、普通は市場も納得する。 だが今度は違う。11月にベン・バーナンキFRB議長が長期金利を引き下げるために6000億ドルの米国債を買い入れると発表してから、政治家や各国の通貨当局までが戦闘モードで身構えている。 ドイツのウォルフガング・ショイブレ財務相は追加緩和策を「無知」と呼び、右派の経済学者らはバーナンキの経済失策を書簡で非難。怒りのあまり集団発作を起こした市場では、債券利回りが急騰した。もはやFRBが90年代のような絶対的な権威を持たないことは明らかだ。 90年代には、当時のアラン・グリーンスパンFRB議長が常に経済の先を読ん

  • オバマが恐れるムバラク後のエジプト

    混乱は続く エジプトの首都カイロで広がる反政府デモは、アラブ世界に訪れる大きな変化の前兆か(1月28日) Goran Tomasevic-Reuters エジプトで大規模な反政府デモが続くなか、バラク・オバマ米大統領は「国王問題」に直面している。民主化運動が高まりを見せていた1978年のイランで、当時のジミー・カーター米大統領が直面したジレンマだ。長年アメリカの後ろ盾で独裁政権を敷いてきたイランのモハマド・レザ・パーレビ国王を支援し続けるべきか、それとも国王を見限って、民主化を求めて声を上げ始めた民衆を支持すべきか――。 カーターは両方をやってのけようと試みた。パーレビ国王への支援体制を軌道修正し、政治的な自由を呼びかけ、非武装のデモ参加者に対して武力行使を行わないよう警告した。ところが79年のイラン革命でパーレビ政権は倒され、パーレビに肩入れしてきたアメリカは新政権から激しい反発を受けた