恋は人を愚かにする。 でも、愚かだからこそ、リアルで、刹那的で、いとおしい。 フランス映画の恋愛ものは大抵は愚かそのもので、エリック・ロメール監督*1作品はそれをよく描いているし、往年の名画で描かれる男女も同じようなもので、『終着駅』*2のただならぬ陳腐さは驚愕に値する。 とはいえ、漂う哀切感を一笑に付せないのは、この悲恋という甘美な美酒に陶酔する喜びを一方では求めているからであろう。 恋心はかくも人を愚かにさせ、素直になれずに天邪鬼になったり、相手や自分を傷つけずにいられなくさせたりする。それでも時折、不意に本当の思いが溢れ出て、言葉や態度に表出したとき、信じ難いほどの煌めきを放つ。 「ねえ、レン。」「ウン?」 「‥‥無理だよ、もう昔みたいにあんたとは暮らせない。あたしにも意地があるから。‥‥でもたまにこんな風に会って、抱き合ったり、お互いのこと話したりできたらいいなと思う。‥‥それでい