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ブックマーク / yomimaru.hatenadiary.org (9)

  • 紫色のクオリア - 読丸電視行

    返信しない心のクオリア著:うえお久光 画:綱島志朗 電撃文庫*1毬井ゆかりの紫色の目には、誰も彼もがロボットに見える。《汎用性の高いスーパー系》のあたしは、彼女の特殊能力を狙う魔の手に――思考実験ガジェット盛沢山の少し不思議ストーリー。 事故のせいで人とロボットが逆に見えるようになり、《人に見えるロボット》に恋をしてしまう『火の鳥 復活編』(手塚治虫) *2を思わせる設定の作ですが、見た目がロボットじゃ嫌の『火の鳥〜』と、見た目がロボットでも別にいいじゃないの作の間に、三十数年の年月の流れを感じます。 私もそうなんですが、プログラマーには、「自分は生体コンピュータ、夢は脳のガーベージコレクション」っていう感じを持っている人は結構いると思うんです。そういう感覚からすると、哲学的ゾンビの問題って、何だかちょっとナンセンス。題名の「クオリア」という言葉で茂木健一郎が頭に浮かんでしまい*3、何

  • 会長の切札 忍者ガールで罠をはれ! - 読丸電視行

    蚕の内臓を伸ばして作ったテグスで釣る魚著:鷹見一幸 画:KeG 角川スニーカー文庫*1母校存続を賭けた第2戦は、桜川女子高校との町内《水雷艦長》陣取合戦。副会長 光明は、楢高男子が色仕掛け作戦に篭絡されていることに気付き――『六韜・三略』*2の基は今もなお、の国盗物語。 第1戦のチャンバラに続き、第2戦は水雷艦長。何とも昭和の香りのするテーマで、戦前の子供の遊びを詳しく紹介した『わんぱく天国』(佐藤さとる) *3と通じる匂いがあります。 光明の奇策が目立つようではありますが、実のところ、下調べの差や指揮系統の確立の差が、勝敗を大きく左右していることがわかります。 『わんぱく〜』では、模型飛行機の流行をきっかけに、対立する2つのグループの子供たちが協力して自分が乗れる飛行機を作り始める『雲のむこう、約束の場所』(新海誠) *4展開になるのですが、シリーズも、第3戦以降では、三校協力して、

  • アクセルワールド 1 黒雪姫の帰還 - 読丸電視行

    黒い爪のイベリコ豚を溶かす彼女の体温著:川原轢 画:HIMA 電撃文庫*1いじめられデブ中学生ハルユキの唯一の楽しみは、速さだけを競うスカッシュゲーム。誰にも負けないと自負するスコアを塗り替えられ、ショックを受ける彼を加速の世界に誘うのは、学内一の美人の先輩《黒雪姫》――ただしイケメンに限る、とは限らないデブ男スピードアクション、第15回電撃小説大賞 大賞受賞作。 学園生活を描く日常篇とゲーム世界を描くブレインバースト篇が交互に現われる作。その日常篇は、いじめられ転校生に余計なお世話をして人気者に仕立て上げる『野ブタ。をプロデュース』(白岩玄) *2を、転校生サイドから見たような状況。 男が男を助ける『野ブタ〜』では、卑屈な心を克服した相手と敵対して破局を迎えるわけですが、作では、ハルユキと黒雪姫を異性にしたことで、大分違う展開が待っています。 二人の幼馴染み チユリとタクムがつきあっ

  • ラノベ部 2 - 読丸電視行

    ♪幼なじみは隣りの娘 いつも手が出る足が出る著:平坂読 画:よう太 MF文庫J*1ライトノベルを読んでは駄話に耽る気楽なサロン、軽小説部を高校に創部したのは、美人部長 美咲と、隣の家に住む腐れ縁の龍之介だった――鈍感主人公は存在しうるかコメディ。 溜まり場での会話を基線とし、現実の作品をネタとして採用してしまう、という点では、『生徒会の一存シリーズ』(葵せきな) *2と類似する構成の作ですが、作に登場する女の子は、男の子に媚びる気配がまったくない点が特徴。 龍之介のあしらわれ方は、『マリア様がみてる』(今野緒雪) *3の柏木とか、『よくわかる現代魔法』(桜坂洋) *4の聡史郎とかに通じるものがあります。男と女が、普通に「同じクラブの知人」なところが好み。 美咲と龍之介が、何を経て、安定した「幼なじみ」のポジションに至ったか、を描くラノベ部設立のエピソード、美咲の一言が衝撃的。二人の姿

  • さよならピアノソナタ 4 - 読丸電視行

    逃げろ直巳、逃げろ光彦、遁げろ家康著:杉井光 画:植田亮 電撃文庫*1真冬の誕生日に贈るプレゼント相談を千晶にすれば罵しられ、神楽坂には大胆に迫られ、真冬をクリスマスに誘おうと思えば――ナオの優柔不断はどこまで貫けるのか、革命音楽ラブストーリー完結篇。 真冬、千晶、神楽坂の3人から恋慕われているのに、まったく気付かないナオなんですが、ここまで来ると、鈍感というだけでは済まされない何かを感じます。もっとも、諸方面に対するお詫びの境地に達してしまうと、話は終わってしまうんですけど。 天才バイオリニスト由布と凡庸なピアニストまりあの恋、待つ女と待たせる男を描く『パルティータ』(竹坂かほり) *2 *3とは、男女の役割が入れ替わっている感のあるシリーズ、ナオの優柔不断と行動しなさ加減は、ラストギリギリまで一筋が通っちゃってます。ここまでくるといっそ清々しい。 シリーズ途中で登場する新キャラに

  • 会長の切り札 一芸クラブに勝機あり! - 読丸電視行

    高校生の台詞「あわてるな孔明の罠だ」のリアルさ著:鷹見一幸 画:KeG 角川スニーカー文庫*1廃校か存続かを懸けて文武両道の熱血男子エリート高校と勝負することになった楢高生徒会会長 朋絵は、副会長の光明が繰り出す知略に――高校生の高校生による高校生のためのチャンバラ合戦絵巻。 士官学校を卒業したばかりの若輩マイトが弱小国の艦隊を指揮して強大な敵に立ち向かう『アウトニア王国奮戦記 でたまか』(鷹見一幸) *2が宇宙を舞台にした戦国絵巻なら、作は軟弱共学校が踏ん張る話。智力や一芸といった点では『古典部シリーズ』(米澤穂信) *3と共通するところもありますが、大人を信用しない『古典部』に対して、大人を利用するのが作。 敵も高校生なだけに、光明の知略がピタリとはまるところは、「ありそう」な感じで気持ちいいです。ネットの慣用句が登場人物の台詞としてちりばめられているのも、イマドキならこれぐらい言

  • MA棋してる! 1 - 読丸電視行

    囲碁は打つもの、将棋は指すもの著:三浦良 画:ぽぽるちゃ 富士見ファンタジア文庫*1喋るインコを国に帰そうとした奏だが、正体不明の射撃魔法に襲われて、オリジナルの魔法手続を構築せざるをえなくなり――初手3八銀の将棋っ娘魔法バトル。 作ヒロインの奏は、魔法の規則性・論理性・制限性から(詰)将棋に投影することを選択するんですが、この選択が小学五年生の女の子にしてはかなり非凡。一方ライバルは、『よくわかる現代魔法』(桜坂洋) *2と趣向はちょっと違うものの、プログラミング魔法を駆使。 両方とも「一人遊び」がモチーフになっていて、魔法少女たちが周りからちょっと浮いてしまっている状況がうまく暗示されています。周囲からのそんな風に見られていても、うまく折り合いをつけて暮らしている奏の精神的な逞しさ・動じなさがいいですね。 次巻からは、『しおんの王』(安藤慈朗・かとりまさる) *3 *4みたいに、作

  • ラノベ部 - 読丸電視行

    台湾では軽小説ではなく浮文字というらしい著:平坂読 画:よう太 MF文庫J*1苦手な国語を克服すべく文芸部入部を希望した文香だったが、部そのものが存在せず、かわりに軽小説部に入部することになり――まったり部室会話の全17篇掌篇集。 文香が初めてライトノベルに出会う第1話「暫定的プロローグ~ラノベ部、はじめました~」は、眠るのを忘れて読み耽ってしまうシーンに共感。初めてのジャンルでも、適切な《推薦図書》を紹介されると、こういう状態になります。 ホモ好き 綾や隠れた才能 暦のように、かなりはまっている登場人物もいるのですが、それでも、ラノベに はまりきっているわけではなく、対象との適当な距離を保っている印象があるところがいいかも。部長 美咲が同級生に恋をする「コイバナ」にも、ちょっと好き、という、普通っぽい感じがあります。 SF好きのSFに対する作中語りが濃厚な『サマー・タイム・トラベラー』

  • ハーフボイルド・ワンダーガール - 読丸電視行

    halfよりharfの方が昭和的著:早狩武志 画:バーニア600 一迅社文庫*1ずっと好きだった幼馴染 美佳から衝撃的な告白をされた俊紀は、彼女の真意を探るため、ミステリ研会長 佐倉井綾に相談を持ち掛けるが――兄と弟、姉と妹の縺れをほどいてくれるのは彼女ストーリー。 『ぼくと、ぼくらの夏』(樋口有介) *2へのオマージュ作でもある『僕と、僕らの夏』*3のシナリオライターが綴る作。台詞回しは今風ですが、新感覚ミステリーというよりは、昭和の少女小説の香り。ハーフボイルドなだけに、『半熟せりかの探偵ごっこシリーズ』(久美沙織) *4とかをちょっと思い出したり。 病院の跡継ぎと目されていた大学生の兄が亡くなり、医学部に行くか否かの窮地に立たされる俊紀。親の言いなりで進路を決めた兄に対する反発、兄が跡継ぎになるから好き勝手にできた忸怩たる思い、と、悩みもどこか懐しくて嬉しい。 今巻は『プラトニック

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