epub PDFで読めます 1.災因論の物語と代替不可能な関係 ベネディクト・アンダーソンのいう、想像のスタイルで区別される「共同体」について述べてきたが、ネイションという「想像の共同体」はなぜ必要とされているのだろうか。いいかえれば、「国民」という共同体への誘惑はどこからくるのだろうか。 アンダーソンは、その答えを近代以前は宗教がもっていた、自らの有限性を露わにする受苦の運命を連続性へと転化する機能をネイションという「想像の共同体」が受け継いでいるからだと説明している。アンダーソンは、ナショナリズムという近代のイデオロギーと、他の自由主義やマルクス主義といった自覚された近代の政治的イデオロギーとの違いは、後者が死と不死にあまり関わらないのに対して、前者が死と不死に関わっていることにあるとして、ナショナリズムの想像力はむしろ宗教的想像力と強い親和性をもっているという。宗教は、病いや身体障害