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ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (15)

  • 既存の「わかりやすい」人類史を現代の知識・研究でとらえなおす、『ブルシット・ジョブ』著者の遺作となった大作ノンフィクション──『万物の黎明 人類史を根本からくつがえす』 - 基本読書

    万物の黎明 人類史を根からくつがえす (翻訳) 作者:デヴィッド・グレーバー,デヴィッド・ウェングロウ光文社Amazonこの『万物の黎明』は、世の中にはやってもやらなくてもいいようなクソどうでもいい仕事で溢れているのではないかと論を展開した『ブルシット・ジョブ』で知られるデヴィッド・グレーバーの最新作にして、遺作となった大作ノンフィクションである(単著ではなく、考古学の専門家デヴィッド・ウェングロウとの共著)。今回テーマになっているのは、サブタイトルに入っているように、「人類史」だ。 多くの(特に売れている)人類史には、環境要因に注目したジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』や「虚構」をテーマにしたユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』のように「わかりやすい切り口」が存在するものだが、書(『万物の黎明』)の特徴の一つは、数多語られてきた「わかりやすい切り口」の「ビッグ・ヒストリ

    既存の「わかりやすい」人類史を現代の知識・研究でとらえなおす、『ブルシット・ジョブ』著者の遺作となった大作ノンフィクション──『万物の黎明 人類史を根本からくつがえす』 - 基本読書
  • 索引の歴史は、時間と知識についての物語である──『索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明』 - 基本読書

    索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明 作者:デニス・ダンカン光文社Amazon主に重要な単語や人名が何ページに出てくるかを示すために巻末についている「索引」。索引はノンフィクションについていることが多いが、これに注意を払う人はあまり多くないだろう。調べ物でもなくただそのノンフィクションを頭から尻尾まで楽しみたい人にはそこまで必要なものとはいえない。実際、僕も読まない方が多い。 しかし何か具体的な目的を持ってあるを読んだり、読み返したりする人にとってはとても重要な存在である。えーとこののフロイトについて言及してる箇所が知りたかったんだけどどこだったっけな……という時に、電子書籍なら検索で一覧が表示されるが紙の場合は索引がなければ最初から読み返す必要があるからだ。 書『索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明』は、そんな索引の歴史について書かれた一冊である。僕が日頃読むノンフィクションには日

    索引の歴史は、時間と知識についての物語である──『索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明』 - 基本読書
    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2023/09/13
    "現代でめったにフィクションに索引がないのはなぜなのか(失敗の歴史があるからだが、どのように失敗してきたのか)[...]本書の索引は、日本語版索引、索引家による索引、コンピュータによる索引と3つもあって、力作"
  • 旧石器時代の人間の意識、世界の認識を「体験」する過程──『人間のはじまりを生きてみる: 四万年の意識をたどる冒険』 - 基本読書

    人間のはじまりを生きてみる: 四万年の意識をたどる冒険 作者:チャールズ・フォスター河出書房新社Amazonこの『人間のはじまりを生きてみる』は『動物になって生きてみた』で知られるチャールズ・フォスターの最新邦訳作。『動物になって生きてみた』は、僕も刊行当時読んで記事を書いているが、衝撃的な傑作であった。『動物になって〜』の中で、チャールズはアナグマやキツネ、カワウソといった動物になりきって生活し、その過程で彼らがどのような世界を観ているのかを実際に体験している。 それが、仲間や撮影スタッフを引き連れて数時間アナグマ的な体験をしました〜といった内容だったら微笑ましい内容だが、彼の凄いところは普通の人間がやらないレベルまでやっていたところにあった。アナグマとして生きる章では、巣穴を格的に彫り始めるところからはじめ、何日もそこで泊まり込み、ミミズを生でい、雨が降っても家に戻らず、川や地面に

    旧石器時代の人間の意識、世界の認識を「体験」する過程──『人間のはじまりを生きてみる: 四万年の意識をたどる冒険』 - 基本読書
  • われわれは運動をするために進化してきたわけではない──『運動の神話』 - 基本読書

    運動の神話 上 作者:ダニエル E リーバーマン早川書房Amazonこの『運動の神話』は、『人体600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病』などの著作や、身体活動に関する研究で知られる人類学者ダニエル・E・リーバーマンによる、運動についてのノンフィクションである。書名に「運動の神話」とついているのは、書が運動にまつわる神話とその実態を紐解いていくだからだ。 たとえば、運動の神話のひとつに「私たちは運動をしたがって当然だ」というものがある。われわれはもともと狩猟採集民で、日頃ずっと歩いたり走ったりと身体活動が活発な状態にあったわけだから、体を動かすのが当然なのだと。そうやって運動を推奨し、運動は薬だ、老化と死期を遅らせる魔法の薬だ、と吹聴しつづける人たちもいるが、著者はそうした人たちのことを”エクサシスト”(exercist)と呼んでいる。 運動なんてしたくなくて当然だ 実際のわれわれは

    われわれは運動をするために進化してきたわけではない──『運動の神話』 - 基本読書
  • 『ゲド戦記』や『闇の左手』のル・グインによる、最後のエッセイ──『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて』 - 基本読書

    暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて: ル=グウィンのエッセイ 作者:アーシュラ・K・ル=グウィン出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2020/01/25メディア: 単行ル・グインは何をおいても『闇の左手』や『ゲド戦記』の、類まれなSF作家・ファンタジィ作家であるが、僕は彼女が書いたエッセイや評論も大好きだ。詩的でメタファーに満ち、それでいて明快だ。書に収められているエッセイも、2010年以降の、80代という老境に入ってからの文章にも関わらず相変わらず鋭く、力強い。 書は2010年から始めていたブログの記事41篇をテーマごとに沿って並び替え、まとめたもので、2018年にこの世を去ったル・グインによる最後のエッセイ集になる。これまでのエッセイ集ではファンタジィやSFフェミニズムなどテーマがはっきりとしていることが多かったが、書は元がブログということで、飼っている

    『ゲド戦記』や『闇の左手』のル・グインによる、最後のエッセイ──『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて』 - 基本読書
  • なぜ人類は国家を作り、発展させられたのか?──『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 - 基本読書

    反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー 作者:ジェームズ・C・スコット出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2019/12/21メディア: 単行我々人類の大半は今は家畜を飼い、農耕を行い、足りない分を輸入することで定住生活を営んでいる。一般的に、そうやって定住して生活をすることは文明的であることの証である。なぜなら我々人類は、狩猟採集生活から、動植物の家畜化・作物化が発生し、そこから固定した畑での農業、定住に繋がったと思われているからだ。 だが、定住は動植物の家畜化・作物化よりもずっと早かったし、初期文明とされる農耕-牧畜文明の連合体が発生する4千年前には、飼いならしによる家畜化や作物化はすべて行われていたのである。つまり、人間は農耕の技術を得てから即、国家を作り始めたわけではない。その後長い年月をかけてようやく国家らしきものが成立しはじめたのである。国家を作り上げることで人間

    なぜ人類は国家を作り、発展させられたのか?──『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 - 基本読書
  • 中国だけで2100万部、話題性と本物のおもしろさを兼ね揃えたバケモノ級の中国SF──『三体』 - 基本読書

    三体 (ハヤカワ文庫SF) 作者:劉 慈欣早川書房Amazon『三体』とは! 中国の作家劉慈欣によって書かれたSF三部作の第一部目にして、中国国内だけで三部作累計2100万部を刊行し、さらに日でも人気のケン・リュウによる翻訳によってアメリカ歴史あるヒューゴー賞を受賞した傑作である。ヒューゴー賞受賞の何が凄いかと言うと、翻訳書としてははじめてのの受賞になるのだ。 それぐらい作品の内容が圧倒していたともいえる。で、あまりSFとは縁のなさそうなオバマやザッカーバーグも絶賛していたりとか、アニメ化が決定したりとか話題は尽きないんだけれども、とにもかくにもこれだけは覚えて帰ってもらいたいのは、この『三体』は、話題先行の内容はまあおもしろいね、いうほどじゃないけど的な軟弱な態度で読み終わる作品ではなく、その肥大化しきっているともいえる話題性に劣らない、圧倒的なおもしろさのある、純粋におもしろいSF

    中国だけで2100万部、話題性と本物のおもしろさを兼ね揃えたバケモノ級の中国SF──『三体』 - 基本読書
  • 演技を通してその人の人生を浮かび上がらせてゆく──『プロフェッショナル13人が語る わたしの声優道』 - 基本読書

    プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道 作者: 井上和彦,大谷育江,関智一,田中真弓,千葉繁,飛田展男,冨永みーな,朴璐美,速水奨,平田広明,三ツ矢雄二,宮充,森川智之,藤津亮太出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2019/05/25メディア: 単行この商品を含むブログを見る藤津亮太さんが聞き手となって行われた、インタビュー集である。すべて雑誌『Febri』に掲載されたもの。対象は1980年代後半から1990年代前半にキャリアをスタートさせた、今ではトップのベテランの人々で、連載の単行化は『声優語〜アニメに命を吹き込むプロフェッショナル〜』に続く二冊目/後篇となるけれども、こちらもビッグネーム揃いだ。13人の名前と目次のコピーを並べると下記になる。 朴 璐美  自分の体験・体感が根底にないと当にならない 井上和彦  自分の幅を全部使って演じたい 千葉 繁  主役は大っ嫌

    演技を通してその人の人生を浮かび上がらせてゆく──『プロフェッショナル13人が語る わたしの声優道』 - 基本読書
  • 脳が進化していくどのタイミングで神が現れたのか?──『神は、脳がつくった――200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源』 - 基本読書

    神は、脳がつくった 200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源 作者: E.フラー・トリー,寺町朋子出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2018/09/27メディア: 単行この商品を含むブログを見る神は脳がつくったとはいうが、だいたいの感情や概念は脳が作っとるじゃろと思いながら読み始めたのだが、原題は『EVOLVING BRAINS, EMERGING GODS』。ようは「具体的に脳が進化していく過程でどの機能が追加された時に、神が出現したのか?」という、人間の認知能力の発展と脳の解剖学的機能のを追うサイエンスノンフィクションだった。神は主題ではあるが、取り扱われるのはそれだけではない。 認知能力が増大した5つの変化 書では主に、認知能力が増大した5つの重要な段階を中心に取り上げていくことになるが、最初に語られるのはヒト属のホモ・ハビリスである。彼らは230万年前から1

    脳が進化していくどのタイミングで神が現れたのか?──『神は、脳がつくった――200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源』 - 基本読書
  • 社会科学者らが立ち向かう困難──『歴史は実験できるのか 自然実験が解き明かす人類史』 - 基本読書

    歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史 作者: ジャレド・ダイアモンド,Jared Diamond,ジェイムズ・A・ロビンソン,James A. Robinson,小坂恵理出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会発売日: 2018/06/06メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る科学において実験というのは重要な手順だが、そうはいっても実験できない領域というのもまた存在する。進化生物学、古生物学、地史学、歴史など、すでに起こってしまって大規模な再現が不可能である場合があるからだ。また、現代の歴史学者は経済発展について知りたければパソコンで調べればGDPなどのデータが手に入るが、18世紀の経済発展について知りたくてもデータがないのでそうはいかない。 そのような学問領域では、現実に発生していた、多くの部分が似通っているが一部が異なったシステム同士を量的に比較・分析する

    社会科学者らが立ち向かう困難──『歴史は実験できるのか 自然実験が解き明かす人類史』 - 基本読書
    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2018/07/17
    『想像の方法学』ではデュルケムの『自殺論』がこういう比較の論理で出来てるって話だったな
  • 人間とロボットの相互作用における責任の条件──『ロボット法』 - 基本読書

    ロボット法 作者: ウゴパガロ,Ugo Pagallo,新保史生,松尾剛行,工藤郁子,赤坂亮太出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2018/01/30メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る最近『ロボット法』関連のが出はじめ、刊行予定にも並び始めたのだけれども、書はその中でも、ロボット技術の現在と、今後起こりえる技術発展を見据えて実定法上の問題を27に分類し、一つ一つそこにどのような問題があるのか、法制度は今のまま、既存の法を延長することで新たな状況に対応することができるのか。不可能なのであればそれはなぜなのか、といったことを丹念に解き明かしていく一冊である。 書の目的は法的に1つの正しい答えというものが手の届くところにあるのか、法制度が代替的解決を受け入れ可能か、または政治的決定が行われる必要があるかを決定することである。典型的な実例は軍事ロボット分野における自律

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  • アニメとはまったく違う、乙野四方字の『正解するカド』を──『正解するマド』 - 基本読書

    正解するマド (ハヤカワ文庫JA) 作者: 乙野四方字,東映アニメーション,野?まど出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/07/06メディア: 文庫この商品を含むブログを見るTVアニメ作品『正解するカド』が、先日賛否両論を巻き起こしながら終了した。否定的な意見にうなずきながらも僕は毎週楽しみに観ていたけれども、最終話には大いに笑かしてもらって、とにかく楽しい作品であったと思う。最後の大ネタはあまりにもバカバカしく「もうなんでもええわい」とおおらかになってしまうんだよね。 と、そんなわけで書『正解するマド』はそのノベライズにして、スピンアウト作品である。アニメ作品のノベライズといえば、アニメの内容をそのままなぞるものからまったく別の話まで様々だが、書は"まったく別の話"にあたる。しかも凄いのは、アニメ脚との密接なリンクを構築しつつ、野崎まど作品への強烈なオマージュであり、さら

    アニメとはまったく違う、乙野四方字の『正解するカド』を──『正解するマド』 - 基本読書
  • 文体、プロット、トピック、全てを解析する──『ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』 - 基本読書

    ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム 作者: ジョディ・アーチャー,マシュー・ジョッカーズ,西内啓,川添節子出版社/メーカー: 日経BP社発売日: 2017/03/23メディア: 単行この商品を含むブログを見る書は「ベストセラー小説に普遍的な法則は存在するのか?」という問いかけを、独自の判定モデルをつくりあげ検証した著者らによる一冊である。小説がヒットするかどうかは時の運という人も多いし、実際運が関与しない事象などこの世に存在しない以上それは正しい部分はある。そうなってくると次に出てくる問いかけは、運の割合はいったいどの程度のものか? というものだ。書はそれを解析してみせる。 手法のひとつを簡単に説明すれば、まず小説の特徴を抽出するアルゴリズムを用いて評価したいの各特徴を分類/定量化する。その後、ベストセラーと非ベストセラーを大量に読み込ませ、機械学習

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  • 最後の一秒まで楽しかった──『けものフレンズ』 - 基本読書

    ようこそジャパリパークへ(初回限定盤) アーティスト: どうぶつビスケッツ×PPP出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント発売日: 2017/02/08メディア: CDこの商品を含むブログ (8件) を見る全12話、たいへんおもしろいアニメだった。 それだけでなく、わけがわからんぐらい物凄い話題になった。なぜこんなに物凄い話題になったのか、というのは運も絡むところであるし、「これだ!」と原因を言い切っても仕方がないが、少なくともつまらなければこの結果はなかっただろう。 全体的に予算があるとは言い難い。動くはずのところが動かない、アクションがあまりにショボい、など幾つもの要素が"安い"が、明確なコンセプト、洗練されたキャラデザ、細かな感情や空気感の伝わってくる脚/動物たちの仕草、"安く"とも"目指す志"の伝わってくる絵作り/構成などいくつものプラスの要素があった。その結果としていくつ

    最後の一秒まで楽しかった──『けものフレンズ』 - 基本読書
    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2017/03/31
    ビデオコンテについて多作との比較/図書館以降は自分たちでカルチャーを持ててるフレンズの話になったといえそう
  • 印刷が変えた人々の日常──『印刷という革命:ルネサンスの本と日常生活』 - 基本読書

    印刷という革命:ルネサンスのと日常生活 作者: アンドルー・ペティグリー,桑木野幸司出版社/メーカー: 白水社発売日: 2015/08/20メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る主に15、16世紀を舞台に人々の生活をいかにして印刷が変えていったのかを丁寧に600ページ近くかけておったのが書『印刷という革命』である。お値段5000円をゆうに超えており趣味で買って読む人はたぶんほとんどいないんじゃないかとも思うが、まあ図書館もあるし。数百年の単位で着々と変化を経て、その時々で人々がどのような判断をして、どのように適応していくのかを知るには最適な一冊だ。 抜的な技術革新というのは起こった瞬間に何もかもが一変するのではなく、だんだんとそれが浸透・拡散していくものだ。技術革新が起こるたびにそれが受け入れられて、新しいやり方を構築するまでに数十、数百年の時間がかかるのは当たり前

    印刷が変えた人々の日常──『印刷という革命:ルネサンスの本と日常生活』 - 基本読書
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