「日本人が、自分を守るのは自分しかないことに気づくには相当の時間がかかるだろう…」 後に首相となる池田勇人氏は昭和28(1953)年、ロバートソン米国務次官補を前にこう予言した。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で天下に披(ひ)瀝(れき)した中国政府の「砲艦外交」に屈した日本政府の見苦しき「幇(ほう)間(かん)外交」は、残念ながら池田氏の端(たん)倪(げい)を証明してしまった。 「自らの安全を自らの力によって守る意志を持たない場合、いかなる国家といえども独立と平和を期待することはできない」(塩野七生著「マキアヴェッリ語録」)。この歴史的必然をこの国は忘れている。 安全保障について思考停止している「相当な時間」が続けば同盟国・米国の日本離れも加速する。現時点で加速していないのは、太平洋を挟み海洋権益が激突しつつある中国に対する戦略に、日本の利用価値が残っているからに他ならない。ソ連牽(けん)制(