失業の就業促進で、ポジティブな姿勢をはじめ、精神面の変容を求めるのは適切か。 海外で問題視する動きがあるようだ。 「前向き」な態度を強制 英国ウエルカム・トラストとロンドン大学バークベック・カレッジの社会科学の研究グループが、医学人文科学の国際的専門誌メディカル・ヒューマニティズ2015年6月号に報告しているもの。 失業の就業促進では、「意欲の欠如」や「労働に対して心理的に抵抗がある」などと決め付けるような指導がありがちと指摘する。 研究によると、就業促進の技能教育において、「ポジティブ・シンキング」を奨励したり、「あなたの態度を変える」と練習を求めたり、本人の同意が乏しい中で進め、結果として、心理的な負担をかけている問題が起こり得ると見る。 就業促進の趣旨外れるか 実際に、給付金の承認をバックとして技能講習、自己啓発ワークショップ、講習会などに参加させて、「楽天主義」「自信」「願望
魚をよく食べる人は食べる量の少ない人と比べて、うつの危険性が低くなるようだ。 過去の研究をまとめた 中国の青島大学の研究グループが疫学の国際誌であるジャーナル・オブ・エピデミオロジー・アンド・コミュニティー・ヘルス誌のオンライン版に2015年9月10日に報告した。 魚を食べるとうつの危険性を変化させるか、研究グループは過去の研究データをまとめて分析した。 対象としたのは、2015年3月までの全ての関連する研究。パブメド(PubMed)、エンベース(EMBASE)のほか国際的なデータベースに基づいて文献を抽出している。 うつの危険性は8割程度に 研究グループは26の研究を選び出し、合わせて15万278人分のデータをまとめた。 魚を最も多く食べているグループと、最も少なく食べているグループを比べると、食べているグループではうつの危険性が0.83倍に低下すると分かった。 研究の方法によら
日本では、総コレステロール値が上がり続けているにもかかわらず、冠動脈心疾患による死亡率は下がり続けていると分かった。 米国、ピッツバーグ大学公衆衛生大学院の関川暁氏らの研究グループが、疫学分野の国際誌であるインターナショナル・ジャーナル・オブ・エピデミオロジー誌において2015年7月16日に報告している。 なぜ日本だけ? 研究グループによると、1960年代に世界7カ国が参加した「7カ国研究」において、日本は冠動脈心疾患による死亡率が低く、総コレステロール値が相対的に低いことに起因すると報告された。 米国への日本人移住者を対象として1970年代に行われた研究では、冠動脈心疾患率の高まりが認められて、日本人の生活様式が欧米化するに従って冠動脈心疾患による死亡率も高まることが予測された。 不思議なことに、1970年以降、冠動脈心疾患による死亡率は下がり続けている。 世界の病気発生を調査 研
海外で虫刺されと言えば、蚊も問題になるが、南京虫も問題になる場合があるようだ。 トコジラミという虫で、寝ているときに刺してきて、強いかゆみを引き起こす。 このところ米国では虫が急増中で、「来襲」が増えているという。日本からは外務省も米国に限らず海外での被害に注意を促している。 予防策もあるようで、海外滞在の際には参考にしたい。 帰ってきた南京虫 今回、米国ベイラー医科大学の研究者が南京虫対策の情報を提供している。米国皮膚科学会がこの8月にその内容を紹介する。 研究者によると、南京虫の数が米国全体で過去数年間にわたって増加している。 旅行者が「来襲」の被害に遭う場合も珍しくないようで、このところの増加は南京虫の「復活」ととらえられるようだ。 ゴキブリ退治が思わぬ影響 一つの要因は、殺虫剤の禁止の動きがある。「DDT」と呼ばれる過去の殺虫剤が、化学薬品の人や環境への害のため使えなくな
緊縮経済政策が自殺者の急増につながり得るようだ。 もともと欧州でも最も自殺者の少ないとされてきたギリシャの月別自殺者数が分析された。 米国ペンシルベニア大学とギリシャの研究グループが、国際的医学総合誌BMJのオンライン姉妹誌BMJオープンで2015年2月2日に報告した。 政策と自殺者の急増 ギリシャは人口およそ1000万人の国である。その国で、1983年〜2012年に1万1505人の自殺者があった。男性9079人、女性は2426人。歴史的には、ギリシャは欧州で最も自殺率が低い国であったが、グローバルな景気後退の悪影響を最も強く受けたと言われてきた。 研究グループは、経済の動向、特に緊縮財政と自殺者数の推移の関連を、30年間の月別データから分析している。 2008年の景気後退の始まりとともに、男性の自殺率が上昇を始めた。上昇幅は前月比13%以上となり高い水準が続いた。 さらに201
忘れるまでの時間はどうやって決まるのか。 神経細胞を直接見て確認した研究が報告された。神経細胞から飛び出すとげが延びて、ほかの神経細胞とつながる場所である「シナプス」の入れ替わりのサイクルが記憶を保つ期間と連動しているようだ。 精神や神経の働きを考えるヒントになる。 海馬の記憶保存期間は約1カ月 バイオ医療分野における世界的な拠点である、米国スタンフォード大学Bio-Xを含む研究グループが、有力科学誌ネイチャー誌2015年6月22日号オンライン版で報告した。 脳の左右にある「海馬」と呼ばれる場所は記憶を担うと知られている。何らかの「エピソード」を記憶しているのはこの海馬となる。エピソードの記憶とは、出来事や会話の記憶となる。記憶は思い返さなければ、時間とともに忘れ去られる。 海馬で得たエピソードの記憶は1カ月保っていられる。その後、「新皮質」という脳の異なる領域で再度保存される。記
水たばこが思わぬ悪影響を及ぼす可能性があるようだ。 中東で一般的な水たばこを、日本でも都市部などで提供する場もあるが、注意すると良さそうだ。 水たばこによる喫煙 ヨルダン理工科大学の研究グループが、アテローム性動脈硬化症と関連する病気に関する国際的医学誌アセロスクレローシスで、2015年2月28日に報告した。 水たばこによる喫煙を含む新しい形態のたばこは世界的に人気が高まっているようだ。 研究グループは、たばこを吸っているということを除けば健康な人を対象として調査を行った。 研究対象となったのは53人。そのうち女性は36%、平均年齢22.7歳、BMI23.4と標準体重の範囲だった。 安静時の前腕の血流のほか、血管の抵抗、静脈の容量、静脈を流れる血液の量を計測した。 運動の習慣については「略式国際身体活動アンケート」と呼ばれる調査で判定。体力は6分間のウォーキングと握力で判定した
人は学習したり、記憶したりするときに、脳の中でDNAを破壊していると分かった。 うまく直せない場合はダメージが残ってしまうことになる。認知症の謎にもつながるかもしれない。 米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループが、有力科学誌のセル誌オンライン版に2015年6月6日に報告した。 遺伝子を活発にしている なぜDNAを破壊するプロセスがあるかといえば、重要な遺伝子の働きを活発にできるからだ。学習と記憶に伴って、脳において必要な機能を有効にしていくというものだ。 人は年を取るに従って、このDNA損傷を修復する能力が弱まってしまい、結果として退化へとつながっているとも見られた。 700の遺伝子で変化 研究グループは神経細胞を使って、DNAの破壊に伴って変化の起きる遺伝子を検証した。 DNA破壊につながる化学品で細胞を処理、それで活発になったDNAを反映するRNAを集めた。ここか
小児性愛の傾向のある人は顔に関係した特徴や左利きの傾向など、発達と関係した特徴があるという研究報告が出ている。 カナダのウィンザー大学を含む研究グループが、国際性研究学会(IASR)の公式誌で性科学分野の有力誌アーカイブズ・オブ・セクシャル・ビヘイビアのオンライン版で2015年6月10日に報告した。 140人を評価 小児性愛は、大人になってからも、子どもに対して過剰な性愛の感情を抱くことを言う。精神的な病気としても位置づけられている。 顔の小さな異常には耳たぶがたれていない、日本で言ういわゆる福耳ではないという特徴のほか、耳の形が通常と異なっている、口の中の天井が深くなっているといった特徴も含まれている。胎児期にウイルスやアルコールおよび薬物、栄養不足、母親の産科的な合併症などにさらされると起こる場合が多いという。 このような特徴は男性に多いと説明する。男性の方が母親のおなかにいると
言うまでもなく、膵臓がんの予後を決めているのは転移性だ。亡くなった私の友人も、発見されたときにはリンパ節は言うに及ばず、多くが肝臓転移を伴っていた。 小さいうちから転移しやすい 膵臓がんはできたがんが小さいうちから転移しやすい。転移メカニズム研究には、できるだけ人に近い動物での実験を可能とする必要がある。膵臓がんについては、人と同じ突然変異を膵臓だけに起こしたマウスが存在する。 今回紹介する米国フレッド・ハッチンソンがん研究センターからの論文は、このモデルを使って転移しやすい膵臓がんを知るための指標を調べた研究だ。6月4日号の有力科学誌セル誌に掲載された。 タイトルは「Runx3は膵管腺癌の転移性スイッチをコントロールする(RUNX3 Controls a Metastatic Switch in Pancreatic Ductal Adenocarcinoma.)」だ。 問題が「Ru
貝などに多く含まれる「ビタミンB12」の欠乏が、学校の留年や不登校に関連していると報告されている。 米国のミシガン大学公衆衛生学部を中心とした研究グループが、ジャーナル・オブ・ニュートリション誌で2015年5月13日に報告した。 留年や不登校と関連するのか 微量栄養素は神経の発達に不可欠となっている。教育との関係についてはよく分かっていない。 研究グループは、微量栄養素の状態に関する指標を調べて、留年および欠席率との関連性について検討した。 対象としたのは、コロンビアのボゴタで公立学校に通う5歳から12歳の生徒3156人。 血液中の鉄分に当たるフェリチン、ヘモグロビン、亜鉛、ビタミンA、ビタミンB12、赤血球葉酸、平均血球体積(MCV)を測定した。 留年や不登校の危険度を、「ポワソン回帰」と呼ばれる方法によって微量栄養素状態の指標によって分析した。 2.36倍の留年のリスク ビタ
アルコール、たばこ、認可されていない精神薬、ギャンブルなど、依存症のデータを世界中から入手した初めての総括がまとまった。 最大の問題となる行動は、たばことアルコールの使用で、最も大きな害を及ぼしていると結論付けている。 依存症や中毒に関する専門誌アディクションの依頼を受けたオーストラリアのアデレード大学の研究者を中心とする国際的な共同研究グループが、同誌2015年6月号で報告した。 億単位でアルコールとたばこの依存 研究グループは依存症や中毒に関するデータを、世界保健機関(WHO)、国連薬物犯罪オフィス、アルバータ・ギャンブル研究所から収集した。 推計で、世界の成人人口の4.9%(2億4千万人)がアルコール使用による障害に苦しんでいる。男性人口の7.8%、女性人口の1.5%となっている。10万人当たり257障害調整生存年数(DALY)が喪失していると見積もられている。障害調整生存年数
ストレスを受け入れることがストレスを減らすよりも重要である。ストレスは人を強くし、賢くし、そして幸福にする。 スタンフォード大学の研究グループが同大学のスタンフォード・レポートで2015年5月7日に報告した。 ストレスに立ち向かう 研究グループは、「ストレスは常に害のあるものではない」と強調する。 いったんストレスをうまく扱えるようになれば、新しい問題に立ち向かうことをより容易にすると指摘。ストレスを害のあるものと考えずにより人生の助けになる部分として考えることが重要という。高いストレスのある期間においてもより良い肉体的健康、精神的な健康、そして生産的な仕事につながる。 ストレスをどのように考えるかが生き方を変える。ストレスにどのように応じるかは全く違ってくるからだ。ストレスを害のあるものと考える人はより助けにならない方法で対処する。 例えば、「酒を飲んでストレスを解放する」「スト
たばこを吸うことにより、感染症まで凶悪にしてしまうと分かった。 喫煙の悪影響ががんや心臓病、脳卒中だけではないというわけだ。 たばこは感染症も悪くするか 米カリフォルニア大学サンディエゴ校のエリザ・K・マッキーチャン氏らの研究グループが、感染症の専門誌であるインフェクション・アンド・イミュニティ誌において2015年3月30日に報告している。 たばこを吸うのは、人によっては難しいながらも、やめようと思えばやめられる。 喫煙はがんや心臓や血管の病気をはじめとして病気のリスクを高めるのはよく分かっている。見方を変えれば、たばこをやめればリスクが下がる。予防可能な死亡、病気、身体障害の原因と考えられる。 たばこの煙は炎症を増強して、免疫細胞の抗菌機能を損なわせる。 研究グループは、さらに感染症を悪くする原因としてのたばこに着目した。感染症も悪くするのか。 煙が細菌を鍛えるような影響が?
「ビーフなのに魚」 1回聞いただけではちょっと意味が分からない。そんな研究成果がこの5月11日に中国から発表された。 遺伝子改変技術により肉牛に魚の油を作せるようにして、健康なビーフを実現したという内容だ。 いったいどういうことなのか? 健康効果が続々のオメガ3脂肪酸 中国の西北農林科技大学を中心とした研究グループが、バイオ技術分野の国際誌であるバイオテクノロジー・レターズ誌で報告した。 同じ油でも魚の油は、健康への効果の面で別格であると次々と判明していた。魚の油に含まれている、「オメガ3系長鎖多価不飽和脂肪酸」、簡単に言えば「オメガ3不飽和脂肪酸」「オメガ3脂肪酸」が有効と分かっている。こうした脂肪酸は、DHA、DPA、EPAなどという名前で呼ばれている。日本では「頭が良くなるイワシなど青魚の油」とよく知られるようになった。 最近では、脳や神経の機能を高める効果にとどまらず、心
ニコチンを体に入れると、アルコール依存になりやすくなると分かった。 米スクリプス研究所のオリバー・ジョージ氏らの研究グループが、神経科学分野の専門誌、ニューロサイエンス誌において2015年4月14日に報告している。 ニコチンと神経細胞に関連 研究グループによると、たばこを吸う人は、吸わない人に比べて、アルコール依存症になるリスクが5倍から10倍高い。 いったいなぜだろうか。 研究グループはニコチンが飲酒に及ぼす影響をネズミで検証した。 ネズミは2つのグループに分けて、最初にどちらのグループにもアルコールを与える。人間でビール1、2杯分に相当する量を飲んだネズミには、酔った様子を見せる前に与えるのを止める。その上で、片方のグループにはアルコールの蒸気に触れさせ、もう片方のグループにはニコチンとアルコール蒸気の両方に触れるような環境に置いた。 すると、ニコチンに触れないグループでは、
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