長崎市長崎学研究所は、シーボルト事件の実行犯として処罰されたオランダ通詞・稲部市五郎に関する新史料を2017年に東京の古書店から購入。東京大史料編纂所共同研究員のイサベル・田中・ファンダーレンさんと共に研究を進めてきた。今年3月に長崎歴史文化博物館であった公開学習会や、同月末発行の紀要論文で報告した研究成果を紹介する。 1786年、市五郎はオランダ通詞の中でも身分の低い内通詞家に生まれた。当時は長崎に外国船の来航が増えつつあった頃。通詞の需要が高まり、1823年からは正規の通詞職に昇格した。その後、28年のシーボルト事件でシーボルトに日本地図を渡した罪で処罰され、40年に監禁先の上野国七日市藩(現群馬県富岡市)で病死した。 今回、同研究所が購入した史料「阿蘭陀小通詞末席稲部市五郎病死ニ付死骸御見分取扱控」は、死亡した市五郎の検分記録。購入をきっかけに、オランダに残る史料なども掘り起こしなが