哲学者、田中美知太郎氏は現実の政治に対してもさまざまに発言している。特に著書『今日の政治的関心』での言葉は有名だ。「いわゆる平和憲法だけで平和が保障されるなら、ついでに台風の襲来も、憲法で禁止しておいた方がよかったかも知れない」。 ▼憲法9条さえあれば平和を守ることができる。そんな戦後の現実離れした平和主義や護憲運動を痛烈に皮肉っているのだ。碩学(せきがく)のこの「金言」を持ち出すまでもなく、今の日本は憲法だけで国を守れる国際環境の中にはいない。いやむしろその憲法ゆえに危うくなりつつあるといえる。 ▼沖縄の尖閣諸島に食指を動かす中国はついに「日本の実効支配の打破」とまで言い出した。いよいよ「本気」である。多数の日本人を拉致した北朝鮮は、核実験や日本の上空を通過しそうなミサイル発射で威嚇する。近隣諸国はもう、やりたい放題だ。 ▼少々乱暴を働いても、日本は「平和憲法」による自縛で手も足も出ない