1990年代以降の東京郊外、あるいは首都圏の端っこ。 そんな地域に漂う空気とその匂いが伝わってきます。 匂いを伝える小説、ならば従来ありましたが、論説は珍しい。 実は赤木氏の論説が「匂いを伝える」こと自体が「問題」を象徴しています。 そう、彼が主題とする若年非正規雇用問題について、匂いに鈍感な論説が多すぎるという「問題」。 匂いに鈍感なままどんなに正論を連ねても、人々は動機づけられず、物事の手当ては見当外れになる。 僕も85年から96年までの十年余り、売買春フィールドワークで北海道から沖縄まで回わりました。 バブル崩壊の翌92年頃、地方が急速に空洞化し始めたこと、背後に対米追従外交があることに気付きます。 対米追従を支えるのは、対米ケツナメを右だと考える馬鹿右翼と、護憲平和を左だと考える馬鹿左翼。 右はアジアを敵に回して自立に必要な重武装化のチャンスをつぶし、左は米国軍事力への依存を平和と
過日、聞いたある小学校の学テ対策。 学テ結果が全項目平均以下だったことに突き動かされたのだそうだ。 月に一度だったものを毎週、10分間の算数と国語のテストに変えた。 これは、テストだけでなく、毎日家で宿題をやったかどうか親がチェックし、教師がこれをチェックする作業と一体化している。当然、採点だけでなく、この結果を子ども毎に一覧表にしたりする作業を教師に強いることになる。 全学年の教師に、学テ問題と結果に対応して何をするのか対応策を提出させた。だから、学テ結果を全教師に配布した。別の学校では6年の教師だけだったと聞く。 さらに、10分間テストの時間に校長が見て回って、遊んでいる子どももいるからと、問題数を増やしたテストを級と称して実施するように求めた。 これは職員の反対で撤回。職員の反対理由は、子どもたちはだれも課された問題を解きたいと思っているのに、解かないままに終わってしまうことに傷つく
現地取材をせずにウソだらけの記事を書いた、と大江健三郎の『沖縄ノート』を批判する曽野綾子は、「現地取材」や「当事者へのインタビュー」を売り物にしているようだが、「集団自決裁判」の原告の一人・梅沢裕に関しては、以下のような、最新の「現地取材」に基づく驚くべき「話」も伝えられている。梅沢は、当時、戦場で朝鮮人慰安婦を常に同行、最後は、朝鮮人慰安婦と共に米軍の捕虜になり、住民から石を投げられながら、米軍に保護され、トラックに乗せられ連行されていったそうだ。この話も、曽野の「現地取材」によれば、真っ赤なウソということになるのだろうか。しかも、1987年4月18日の神戸新聞に掲載され、裁判でも証拠資料として採用されている「座間味の集団自決に梅澤氏の命令はなかった」という文書と記事は、どういう背景の下に捏造されたか。恐ろしい話だが、これまた、「現地取材」でその真相が明らかになっている。事件の核心を知る
「他人を審くなかれ」が普遍の経験則 ≪専門家からも適切な警告≫ さる7月27日付の本欄に於いて筆者は、光華寮事件に関する最高裁の判決は司法権独立の尊厳を自ら放棄して対中迎合の俗論に媚(こ)びたものだ、との厳しい批判を加へ、その際筆のついでに、裁判員制度の導入といふ司法界の知的退廃症状に対し最高裁が意識的不作為、むしろ実施推進の姿勢を取つてゐる倒錯の状に深い不信の念を述べた。ただ裁判員法の性格については〈司法権の独立を脅かす危機とまでは読まないでもよい〉であらうとの感想を付しておいた。 筆者の感想に対して元東京高裁部統括判事大久保太郎氏が書を寄せられ、これは実は司法権の尊厳の放棄といふべき大不祥事なのだと指摘された。大久保氏は『文芸春秋』11月号掲載の論策「裁判員制度のウソ、ムリ、拙速」の中で、憲法違反の性格が顕著なこの様な悪法は決して施行されてはならない、との正論を強く説いてをられる方であ
先日とあるホテルのロビーのパーティー案内板を見て仰天した。某大学の「保護者総会」という文字があったからだ。保護者って何だよ、保護者って。小学生や中学生や高校生じゃないんだぞ。 現役入学者なら大学生は二年次に成人になる。単純計算で大学生全体の六割以上が成人だ。実際には浪人経験者がいるから、七、八割は成人である。成人にどうして保護者が必要なのか。 一九六八−六九年の東大闘争の時、学生の母親たちが慰撫(いぶ)か懐柔のつもりだろうかキャラメルを配って歩き「キャラメル・ママ」と揶揄(やゆ)嘲笑(ちょうしょう)された。もちろん、マスコミにも警備当局にも全共闘の学生たちにもだ。その全共闘世代も還暦を迎える。「学生の保護者」はその一回りは下の世代だから、そんな記憶もないのだろう。こりゃ、そのうち大学にモンスター・ペアレンツも現れるぞ。 実は、私自身いくつかの大学で講師を務めているので、十年ぐらい前からおか
沖縄戦について書かれた本の記述をうのみにして、大戦末期、当時の守備隊長らが、住民に集団自決を命令したと、決めつけただけではない。会ったこともない元隊長の心の中に入り込んでしまう。 ▼「戦争犯罪人」であり「屠殺者」は、「あまりにも巨きい罪の巨塊」の前で「なんとか正気で生き伸びたいとねが」い、「かれのペテンはしだいにひとり歩きをはじめた」とまでいう。三十数年ぶりに『沖縄ノート』を読み返して、あらためてノーベル賞作家の想像力のはばたきに脱帽した。 ▼もっとも、書かれた方はたまらない。個人名がなくても、隊長は島に1人しかいないのだから特定は容易だ。そもそも「軍命令などあり得ない」と、元守備隊長らが、著者の大江健三郎氏と岩波書店に損害賠償などを求めた訴訟を起こしている。 ▼先週大阪地裁であった口頭弁論で、大江氏側から提出された陳述書を読んでまた驚いた。大江氏は元隊長ら個人に対してというより、当時の日
現代の生活環境が子供の発達に及ぼす影響を分析した英国の元教師の本が、日本語版で発売された。 最新の科学的な研究成果や知見に基づいて、生活環境改善の具体策も提案しており、日本にとっても示唆に富む内容だ。 出版されたのは、教育評論家スー・パーマーさん(58)の「子どもはなぜモンスターになるのか」(原題は「有毒な子供時代」)。教師歴10年で、退職後も読み書きの指導法で教師に助言する立場にあった。 同書は、ハンバーガーやスナック菓子など、カロリーは高いが栄養価の低い「ジャンクフード」の浸透、睡眠不足、外遊びの減少、親子間のコミュニケーション不足、子供を狙った広告戦略など、英国での子供を取り巻く問題について取り上げている。 これらの現象を、インターネットの普及に代表される社会の急激な変化が子育てに及ぼす「副作用」ととらえ、経済学や心理学、栄養学、脳神経学など専門家の研究成果や知見を引用しながら説明し
<< 前の記事 | トップページ | 次の記事 >> 2007年11月09日 (金)視点・論点 「学力新時代の課題 大阪大学教授 志水 宏吉 今年の4月に、43年ぶりに実施された全国一斉学力テストの結果が、先日発表されました。 見出された主な結果は、以下の3点にまとめることができます。 第一に、知識を問うA問題では7~8割、知識の活用の仕方を問うB問題では、6~7割の 正答率に達したこと。 この結果から、子どもたちの学力低下に一定の歯止めがかかったと評価しうるもしれません。 第二に、家庭学習時間の増加や朝ごはんを食べる子どもの比率の増加など、 子どもたちの生活習慣や学習習慣に一定の改善が見られたこと。 これも近年の、いわゆる「早寝早起き朝ごはん」を代表とするような「生活改善運動」の成果の あらわれと言えるかもしれません。 そして第三に、「地域間格差」がそれほど大きくないと
10月に、ここでもご案内した「博士の生き方座談会 in 広島~ポスドク問題を再考する~」の報告がウェブサイトにアップロードされています。ご覧下さい。 第五回「博士の生き方」座談会 in 広島「ポスドク問題を再考する」の報告 続いて、第6回として名古屋大学で座談会が計画されています。奥井さんから送られてきた情報を転載させていただきますが、同じものがこちらにもあります。名古屋の近くにいらっしゃる関係者の方はふるってご参加ください。 ***************************** 第6回 『博士の生き方』座談会 in 名古屋 ~ポスドク問題を再考する~ 2007年12月1日(土)開催 開催の目的: ポスドク問題に関しては、企業の採用に関する体質の問題、本人の資質や能力の問題、大学と産業界のミスマッチの問題、研究室での教育の問題など、さまざまな角度から課題があるのではないかと指摘されて
2007.11.12 教師の専門性 (22) カテゴリ:学校・教育原理・教育全般 教師の専門性を高める事は、 研究会をしていてそこに集まってくる先生方からの 声を聞き、 このブログで語られる教育の事を読むに付け、 重要な課題だと感じています。 その専門性を高めるにはどうするか、この事を現場にいた者として 提案したい事があります。 それは、実践的に専門性を高める事にもっと、 教育行政が力を入れることだと考えます。 そのことから、外れての研修が、最近、増えてきているようです。 実践的に研修するという事は、どういうことかといいますと、 先生が、その学校で、 その学校の教師から、実際に学ぶと言う事です。 例を挙げて書きます。 僕の学年に新卒の教師(女性・Aさん)が来ました。 5年生でした。 ですから、卒業までその学級の責任を持つということです。 新卒にしてみれば、これは、大変な重責です。 力を着け
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