前回は、モンゴルのロシア支配(タタールのくびき)において、多元的権力の社会から単一権力社会への転換が行われたこと、そしてそれと平行して所有関係(所有形態)の質的転換が行われたことを述べた。さらに、単一権力社会と多元的権力の社会では、権力と所有の関係が異なること、単一権力社会における所有関係のあり方は「すべての所有(私有)に王の意志が優先する」であり、多元的権力の社会における所有のあり方は「所有は所有権として存在するがゆえに、王権は臣下の所有から制限を受ける」というところまで話が及んだ。 今もなお、マルクス主義とかマルクスの歴史観に愛着を持っている我々としては、どうしても農村共同体とか農民的土地所有が、キエフ国家期及びモンゴル支配期において、実際にどのようなものであったのかについて、強い関心をもたざるをえないが--筆者の勉強不足のせいではあるが--どうも具体的には見えてこない。キエフ国家期に