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ブックマーク / morningrain.hatenablog.com (100)

  • 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』 - 西東京日記 IN はてな

    監督のアレックス・ガーランドは『28日後...』の脚の人だということを見終わってから知って、「なるほど」と思いました。 『28日後...』はストーリーとうよりはシチュエーションやシーンを中心に構成された作品ですが、この『シビル・ウォー』もそうだと思います。 監督兼脚のアレックス・ガーランドが描きたいのは、アメリカ内戦のストーリーではなくて今のアメリカに生まれそうなシチュエーションやシーンなんですよね。 『シビル・ウォー』は内戦に突入したアメリカを描いた映画ですが、内戦の過程を描くのではなく、内戦の中でニューヨークからワシントンD.C.へと向かう(危険な地域を避けるためにかなり回り道をしながら)、ジャーナリストを描いたロードムービーになっています。 ファシスト的な大統領が憲法を無視して3期目に突入し、FBIを解散させるなどの行為を行ったため、テキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる「西

    『シビル・ウォー アメリカ最後の日』 - 西東京日記 IN はてな
    kaikaji
    kaikaji 2024/10/24
  • 安達貴教『21世紀の市場と競争』 - 西東京日記 IN はてな

    副題は「デジタル経済・プラットフォーム・不完全競争」、GoogleAppleAmazonなどの巨大企業が君臨するデジタル経済において、その状況とあるべき競争政策を経済学の観点から分析したになります。 基的にGoogleのような独占企業が出現すれば市場は歪んでしまうわけですが、例えば、Facebookが強すぎるからと言ってFacebookを分割すればそれがユーザーにとって良いことかというと疑問があります。Facebookは巨大だからこそいろいろな人とつながれって便利だという面もあるからです。 書はこうした問題に対して、「不完全競争市場こそがスタンダードなのだ」という切り口から迫っていきます。 このように書くと難しそうに思えるかもしれませんが、全体的に読み物のような形に仕上がっており、また、高校の教科書の記述などを拾いながら書かれていて、経済学にそれほど詳しくない人でも読めるものにな

    安達貴教『21世紀の市場と競争』 - 西東京日記 IN はてな
    kaikaji
    kaikaji 2024/08/22
  • クラウディア・ゴールディン『なぜ男女の賃金に格差があるのか』 - 西東京日記 IN はてな

    2023年にノーベル経済学賞を受賞したゴールディンによる一般向けの書。 ここ100年のグループを5つに分けてアメリカの女性の社会進出の歴史をたどるとともに、それでも今なお残る賃金格差の原因を探っています。 世代についての叙述も面白いですが、ここでは現在の賃金格差の原因となっている「どん欲な仕事」についての部分を中心に紹介したいと思います。 目次は以下の通り。 第1章 キャリアと家庭の両立はなぜ難しいか―新しい「名前のない問題」 第2章 世代を越えてつなぐ「バトン」―100年を5つに分ける 第3章 分岐点に立つ―第1グループ 第4章 キャリアと家庭に橋をかける―第2グループ 第5章 「新しい女性の時代」の予感―第3グループ 第6章 静かな革命―第4グループ 第7章 キャリアと家庭を両立させる―第5グループ 第8章 それでも格差はなくならない―出産による「ペナルティ」 第9章 職業別の格差の原

    クラウディア・ゴールディン『なぜ男女の賃金に格差があるのか』 - 西東京日記 IN はてな
    kaikaji
    kaikaji 2024/06/04
    "外科医、金融分野などもつねに仕事に対応できるような人間が求められているということが想像できると思います。このようなつねに仕事への対応が求められるような仕事が本書のいう「どん欲な仕事」です"
  • ハン・ガン『別れを告げない』 - 西東京日記 IN はてな

    ハン・ガンによる済州島4.3事件をテーマとした作品。 ハン・ガンは個人的にはノーベル文学賞を獲って当然と考える作家で(同じ韓国の作家ならパク・ミンギュも好きだけど、こちらはノーベル賞を獲るタイプではない)、そのハン・ガンが韓国現代史の大きな闇である済州島4.3事件をテーマにしたということですごい作品なんだろうなと予想しながら読んだわけですが、想像とはちょっと違う形でやはりすごい作品でした。 この作品は作者のハン・ガンを思わせる主人公のキョンハが疲弊しきっている状態になっているところから始まります。キョンハは光州事件と思われる事件についての著作を書き上げましたが、そのために疲弊しきっています。 そこにカメラマンでもあり短編のドキュメンタリー映画もつくっている友人のインソンから連絡が入ります。インソンは故郷の済州島で木工の仕事もしていたのですが、そこで指を切断する怪我をしてしまったのです。 こ

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    kaikaji 2024/06/03
  • 淺野良成『賛同・許容・傍観された自民党政治』 - 西東京日記 IN はてな

    ちょっと変わったタイトルのように思えますが、まさに内容を表しているタイトルです。 第2次安倍政権がなぜ長期にわたって支持されたのかという問題について、その理由を探ったになります。 書の出発点となているのは、谷口将紀『現代日の代表制民主政治』の2pで示されている次のグラフです。 グラフのちょうど真ん中の山が有権者の左右イデオロギーの分布、少し右にある山が衆議院議員の分布、そしてその頂点より右に引かれた縦の点線が安倍首相のイデオロギー的な位置であり、安倍首相が位置が有権者よりもかなり右にずれていることがわかります。また、衆議院議員の位置が右にずれているのも自民党議員が右傾化したことの影響が大きいです。 では、なぜ有権者のイデオロギー位置からずれた政権が支持されたのでしょうか? 『現代日の代表制民主政治』では、自民党の政党としての信用度、「財政・金融」、「教育・子育て」、「年金・医療」な

    淺野良成『賛同・許容・傍観された自民党政治』 - 西東京日記 IN はてな
    kaikaji
    kaikaji 2024/05/07
    "従来の説明では、外交・安全保障における政策距離を経済政策が埋めていたという説明が多かったですが、対外的脅威を認知する中で自民党の右寄りの政策を「許容」したという解釈もできる"
  • 岩谷將『盧溝橋事件から日中戦争へ』 - 西東京日記 IN はてな

    書の「あとがき」を読むと、このを書き上げるまでの著者の経験が普通ではなかったことがわかります。 著者は2019年に中国で2ヶ月以上も拘束され、その後解放されました。そのため普通は恩師や同僚、編集者などが並ぶ謝辞において、安倍晋三元首相や菅義偉前首相、茂木敏充元外務大臣といった名前が並んでいます。 「軽井沢の別荘にて」みたいなことが書かれる最後の部分には、「競売にかけられるかもしれなかったまだローンの残る札幌の自宅にて」とあり、著者が大変な状況を切り抜けていたことがわかります。 では、なぜ中国当局は著者を拘束したのでしょうか? その理由については書に書かれているわけではありませんし、ひょっとしたら著者が防衛省防衛研究所教官を勤めていたことなどが影響したのかもしれませんが、書の内容も現在の中国政府からするとやや都合の悪いものだったのかもしれません。 書は、日中のさまざまな史料をもとに

    岩谷將『盧溝橋事件から日中戦争へ』 - 西東京日記 IN はてな
    kaikaji
    kaikaji 2024/04/14
    "日中のさまざまな史料をもとに、盧溝橋事件から近衛声明までの日中戦争が全面化するまでの流れを追っているのですが、本書から見えてくるのは中国側が日本の侵略に対して常に受け身であったわけではないということ"
  • 渡辺浩『日本思想史と現在』 - 西東京日記 IN はてな

    今まで著作の評判を聞いてきて、これはいつか読まねばと思いつつ読んでいなかった渡辺浩の小文集が筑摩選書という手に取りやすい形で出たので読んできました。 非常に鋭い切り口がいくつもあり面白く読めるですが、核心的な部分に関しては「続きは別ので…」といったところもあり、やはり、主著である『日政治思想史 十七〜十九世紀』、『明治革命・性・文明』といったを読まねば、と思いました。 そういった意味では、渡辺浩の「入門書」というよりは「導入の書」みたいな位置づけになるのかと思います。 目次は以下の通り。 1 その通念に異議を唱える 2 日思想史で考える 3 面白いをお勧めする 4 思想史を楽しむ 5 丸山眞男を紹介する 6 挨拶と宣伝 冒頭には福沢諭吉の『学問のすゝめ』についての文章が置かれています。 私たちは、江戸時代は身分制の社会であり、それを支えたのが儒教で、そうした儒教に支えられた身分

    渡辺浩『日本思想史と現在』 - 西東京日記 IN はてな
    kaikaji
    kaikaji 2024/04/02
  • 五十嵐元道『戦争とデータ』 - 西東京日記 IN はてな

    副題は「死者はいかにして数値になったか」。 書の序章の冒頭では、著者がボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争における死者を調べていて、20万人という数字と10万人という数字が出てきたというエピソードが紹介されています。 死者数というのは戦争の悲惨さを伝えるためのわかりやすいデータではありますが、それが倍近くもい違っているのです。 特に文民の死者数となると、なかなか正確な数字は出ません。 しかし、実際に何人の兵士が死んだのか? 戦争によってどれだけの文民が犠牲になったのかというのは非常に重要なデータです。 書はこうした戦争での死者がいかに数えられるようになったのか? 誰が数えているのか? どのようにカウントされているのか? といったことを過去に遡って明らかにしながら、戦争とデータの問題を考えています。 今まであまり光の当たっていなかった問題をとり上げた興味深いです。 目次は以下の通り。 序章

    五十嵐元道『戦争とデータ』 - 西東京日記 IN はてな
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    kaikaji 2023/12/15
  • 東島雅昌『民主主義を装う権威主義』 - 西東京日記 IN はてな

    「民主主義」の反対となる政治体制というと「独裁」が思い浮かびますが、近年の世界では金正恩の北朝鮮のようなわかりやすい「独裁」は少なくなっています。 多くの国で選挙が行われており、一応、政権交代の可能性があるかのように思えますが、実際は政権交代の可能性はほぼ潰されているような体制の国がけっこうあります。 独裁からこういった選挙があるけど政権交代の可能性がほぼない国までひっくるめて政治学では「権威主義」、「権威主義体制」と言い、近年では今井真士『権威主義体制と政治制度』、エリカ・フランツ『権威主義』のように権威主義を分析したや、川中豪『競争と秩序』のように民主主義と権威主義の狭間で動くような国(東南アジアの国々)を分析したも出ています。 こうした中で書は権威主義体制の戦略、特に権威主義体制における選挙の利用について分析したになります。 権威主義体制に選挙は必要ないような気もしますが、先

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    kaikaji 2023/06/05
  • 竹内桂『三木武夫と戦後政治』 - 西東京日記 IN はてな

    実は書の著者は大学時代のゼミも一緒だった友人で、いつか書いたを読んでみたいものだと思っていたのですが、まさか「あとがき」まで入れて761ページ!というボリュームのを書き上げてくるとは思いませんでした。 タイトルからもわかるように三木武夫の評伝なのですが、タイトルに「戦後政治」と入っているように三木武夫を中心としながら三木が亡くなるまでの戦後政治をたどるような内容になっていることと、「政局」と「政策」の双方を追っているとことが、書がここまで厚くなった理由でしょう。 「バルカン政治家」という異名からもわかるように、三木武夫というと「政局の人」というイメージが強いですが、書はその「政策」をきちんと追うことで、三木の行動原理のようなものがわかるようになっています。もちろん、その判断は権力闘争と密接に絡まっているわけですが、権力闘争と政策が渾然一体となっているところが三木の面白さかもしれま

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    kaikaji
    kaikaji 2023/05/07
  • 呉濁流『アジアの孤児』 - 西東京日記 IN はてな

    1900年、台湾に生まれ、日の植民地支配の中で育った著者の手による日語の小説。植民地支配の中で教育を受けたものの、日人と同じようにはなれず、一方で大陸に渡れば警戒され、下に見られるという台湾生まれの知識人の悲哀を描いた内容になります。 書は1943〜45年6月にかけて執筆されたといい、日の植民地支配が終わろうとする中で、それをなんとかして記録しようとした小説とも受け取れます。 基的には胡太明という著者と重なる人物の人生を描いた小説で、知識人である自分と周囲との軋轢など、日の近代小説と似ている部分もあります。 また、女性の描き方は非常に古臭く、このあたりも日の戦前の小説を思い起こさせるものです。 というわけで、やはり読みどころはまさに「アジアの孤児」ともいうべき台湾の位置づけになるのだと思います。 主人公が生まれた頃はまだ日の植民地支配が始まってまもなくのときですが、しだい

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    kaikaji 2022/11/26
  • ケイトリン・ローゼンタール『奴隷会計』 - 西東京日記 IN はてな

    奴隷制というと野蛮で粗野な生産方式と見られていますが、「そうじゃないんだよ、実はかなり複雑な帳簿をつけてデータを駆使して生産性の向上を目指していたんだよ」という内容のになります。 何といっても書で興味を引くのは、著者は元マッキンゼーの経営コンサルタントだったことです。 著者はたくさんのスプレッドシートを見ながら経営効率を上げる仕事をしながら、このように働く人をスプレッドシートのセルとして扱うようになったのはいつなのか? ということに疑問を持つようになったといいます。 そこから大学院に入って見つけたのがプランテーションの帳簿で、「まさしく現代のものだと思われていたデータ処理が、奴隷制と共存するばかりか、補完までしていたことを示して」(はじめに iXp)いたことに気づいたといいます。 このテクノロジーとグロテスクさの共存というのが書の読みどころで、奴隷制という「離脱」が許されない世界の中

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    kaikaji 2022/10/09
  • 北村亘編『現代官僚制の解剖』 - 西東京日記 IN はてな

    2019年に出版された青木栄一編著『文部科学省の解剖』は、過去に村松岐夫が中心となって行った官僚サーベイ(村松サーベイ)を参考に、文部科学省の官僚に対して行ったサーベイによって文部科学省の官僚の実態を明らかにしようとしたものでした。 書は、それを受ける形で文部科学省以外の省庁(財務省、経済産業省、国土交通省、厚生労働省、文部科学省)にも対象を広げて行われたサーヴェイ・2019年調査(書はヴェイ表記)をもとにして分析を行っています。 執筆者では、北村亘、青木栄一、曽我謙悟、伊藤正次といったところが『文部科学省の解剖』とかぶっています。 現代において完了に対してサーヴェイを行う難しさというものはあるのですが(松村サーベイは「行政エリート調査」と題されていましたが、現在ではこのタイトルではいろいろ警戒されてしまうでしょう)、やはり実際に調査をして見えてくるものはありますし、現代の日の官僚が

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    kaikaji 2022/07/03
    "ワーク・ライフ・バランスがいいのは総務省、厚労省、文科省の順で(厚労省が入るのが意外だと筆者も指摘している)、上司による仕事外の配慮は文科省が突出して高く、文科省の家族的な組織風土を表している"
  • リン・ハント『人権を創造する』 - 西東京日記 IN はてな

    タイトルからして面白そうだなと思っていたですが、今年になって11年ぶりに重版されたのを機に読んでみました。 「人権」というのは、今生きている人間にとって欠かせないものだと認識されていながら、ある時代になるまでは影も形もなかったという不思議なものです。 中学の公民や高校の政治経済の授業では、社会契約説の思想家たちの、「たとえ国家がなかったとしても、すべての人間には一定の権利・自然権があるはずでしょ」という考えが、「人権」という考えに発展し、アメリカ独立革命やフランス革命で政府設立の目的の基礎として吸えられた、といった形で説明していますが、そもそも社会契約説が登場する前には「すべての人間には一定の権利があるはずでしょ」という議論は受け入れられなかったと思うのです。 こうした謎に1つの答えを与えてくれるのが書です。 人権というと、どうしても法的な議論が思い起こされますが、書が注目するのは「

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    kaikaji 2022/05/28
  • オリヴィエ・ブランシャール/ダニ・ロドリック編『格差と闘え』 - 西東京日記 IN はてな

    2019年10月にピーターソン国債経済研究所で格差をテーマとして開かれた大規模なカンファレンスをもとにした。目次を見ていただければわかりますが、とにかく豪華な執筆陣でして、編者以外にも、マンキュー、サマーズ、アセモグルといった有名どころに、ピケティと共同研究を行ってきたサエズやズックマンといった人々もいます。 そして、時代が変わったなと思うのは、「格差は是か非か」「政府の介入は是か非か」という原則論が戦わされているわけではなく、格差の是正の必要性重、政府の介入の必要性を認識を共有しつつ、「では、どのような原因があり、どのような政策対応が可能なのか?」といった点で議論が進んでいる点です。 例えば、サマーズとサエズの論説は対立していますが、それは資産税という方法の是非をめぐるもので、政府の介入の是非をめぐるものではありません。 「格差の是正策として、労働市場の規制緩和と社会福祉の削減によって

    オリヴィエ・ブランシャール/ダニ・ロドリック編『格差と闘え』 - 西東京日記 IN はてな
    kaikaji
    kaikaji 2022/05/05
    ”「政府の介入は是か非か」という原則論が戦わされているわけではなく格差の是正の必要性、政府の介入の必要性を認識を共有しつつ「ではどのような原因がありどのような政策対応が可能なのか?」といった点で議論”
  • 渡辺努『物価とは何か』 - 西東京日記 IN はてな

    ここ最近、ガソリンだけではなく小麦、用油などさまざまなものの価格が上がっています。ただし、スーパーなどに行けば米や白菜や大根といった冬野菜は例年よりも安い価格になっていることにも気づくでしょう。 このようなさまざまな商品の価格を平均化したものが書のテーマである物価です。 著者はまず、物価を蚊柱、個々の商品の価格を個別の蚊に例えています。個別の蚊はさまざまな動きをしますが、離れてみると一定のまとまった動きが観測できるというのです。 書は「個別の蚊の動きを追っても蚊柱の動きはわからない」という前提を受け入れつつ、同時にスーパーなどの商品のスキャナーデータなどミクロのデータも使いながら、「物価とは何か?」、さらには「日の物価はなぜ上がらないのか?」という謎に挑んでいます。 ジャンルとしては経済エッセイということになるのでしょうが、理論と実証を行き来する内容は非常に刺激的で面白いですね。

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    kaikaji
    kaikaji 2022/03/11
  • 閻連科『年月日』 - 西東京日記 IN はてな

    現代中国を代表する作家の1人である閻連科。今まで読んだことがなかったので、今回、この『年月日』が白水Uブックに入ったのを機に読んでみました。 最後に置かれた「もう一人の閻連科 ー 日の読者へ」で、閻連科人が、自分は「論争を引き起こす作家、凶暴な作家」と見られているが、作は違うといったことを述べていますが、その通りなんでしょうし、普通の小説とはちょっと違います。 舞台は千年に一度の日照りに襲われた山深い農村で、村人たちが逃げ出す中で、たった一だけ残ったとうもろこしを守るために、老人の「先じい」と盲目の老犬「メナシ」が残るというものです。 途中でネズミやオオカミは出てきますが、出てくる人間は先じいただ一人と言っていいです。ですから、基的に書には会話がなく、描写と先じいのモノローグで構成されています。 帯には「現代の神話」とありますが、呼んでいる印象は神話とか説話に近いです。 日照り

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    kaikaji 2022/03/05
  • S・C・M・ペイン『アジアの多重戦争1911-1949』 - 西東京日記 IN はてな

    満州事変から日中戦争、太平洋戦争という流れを「十五年戦争」というまとまったものとして捉える見方がありますが、書は中国における1911年の清朝崩壊から1949年の中華人民共和国の成立までを一連の戦争として捉えるというダイナミックな見方を提示しています。 一連の戦争と書きましたが、著者はこの時期の中国において、「内戦」、日との「地域戦争」、そして太平洋戦争を含む「世界戦争」という3つの戦争が重なり合う形で進行していたとしています。 内戦下の中国において経済的な権益を求めた日は地域戦争を引き起こし、日中戦争という地域戦争の処理をめぐって日は世界戦争に突入して敗北します。そして日の引き起こした戦争が、共産党に内戦の勝利をもたらしたのです(逆に言うと国民党に敗北をもたらした)。 書の面白さはこの流れを重層的に描いている点です。副題は「日中国ロシア」となっていますが、これにさらにアメ

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    kaikaji 2022/02/27
  • 筒井淳也『社会学』 - 西東京日記 IN はてな

    先日紹介した松林哲也『政治学と因果推論』に続く、岩波の「シリーズ ソーシャル・サイエンス」の1冊。 社会科学の中でも「サイエンス」とみなされにくい社会学について、「社会学もサイエンスである」と主張するのではなく、「社会を知るには非サイエンス的なものも必要なのである」という主張によって社会学の意義付けをはかっています。 著者は以前にも筒井淳也『社会を知るためには』(ちくまプリマー新書)でも、社会学のあり方について論じていましたが、(一応)中高生向けのプリマーより1歩も2歩も3歩も踏み込んだ議論がなされています。 社会学に限らず、社会科学に興味がある人の幅広くお薦めできるですね。 目次は以下の通り。 はじめに 第1章 社会学における理論――演繹的ではない理論の効能 第2章 因果推論と要約――記述のための計量モデル 第3章 「質と量」の問題 第4章 知識の妥当性・実用性 終 章 「満員電車を避

    筒井淳也『社会学』 - 西東京日記 IN はてな
    kaikaji
    kaikaji 2022/01/28
    ”こうした研究は再現性の問題なども含むのですが、対象に近づく、あるいは対象の認識に近づかないと見えてこないものというものは確実にあり、ここに社会学の存在意義といったものもあるのでしょう”
  • 小林悠太『分散化時代の政策調整』 - 西東京日記 IN はてな

    著者の博論をもとにしたで副題は「内閣府構想の展開と転回」。興味深い現象を分析しているのですが、なかなか紹介するのは難しいですね。 タイトルの「分散化時代」と言っても「そんな言葉は聞いたことがないし、何が分散したんだ?」となりますし、「政策調整」と言ってもピンとこない人が多いでしょう。 そこでまずは第2次以降の安倍政権時に言われた「官邸一強」の話から入りたいと思います。 90年代後半の橋行革によって1府12省庁制となり、首相と内閣府の権限が大きく強化されました。それまで日では各省庁からボトムアップの形で政策形成がなされており、首相のリーダーシップは弱いままにとどまっていましたが、この改革によって「政治主導」の実現が目指されたのです。 このしくみをうまく利用したのが小泉政権や第2次安倍政権でした。特に安倍政権では内閣人事局の発足も相まって、省庁の官僚を首相や官房長官、あるいは官邸官僚と

    小林悠太『分散化時代の政策調整』 - 西東京日記 IN はてな
    kaikaji
    kaikaji 2022/01/10
    ”政治主導という「上からの要因」もあるのですが、資源が限られる中で省庁が政策調整のために内閣府を頼り、それが内閣府の規模拡大につながっているという「下からの要因」もあるのです”