ブックマーク / note.com/terumapy (12)

  • 絵画で味わう江戸のさかな【江戸の蟹、上方の酒】|鷹 輝政

    魚は日酒に合う。刺身に煮物、焼き物に揚げ物、さまざまな魚料理が日酒とともにされている。その姿を描いている浮世絵も多数存在するが、その中でも一風変わった一枚を紹介したい。 喜多川歌麿の『教訓親の目鑑』俗ニ云ばくれんである。『教訓親の目鑑』は、「こんな子に育ててはいけない」という親向けの教訓を描いたシリーズものである。その一編である「ばくれん」とは、すれっからしという意味である。 『教訓親の目鑑』俗ニ云ばくれん絵を見てみよう。ギヤマンと呼ばれるガラスの杯で日酒をぐぅっと空けている女性が描かれている。着乱れた着物と恍惚とした表情が特徴的である。 片手に握られているつまみはガザミであろう。江戸前のガザミは当時有名であり、日常的に手に入るものであったと考えられる。塗られた色からも、よく火が通り赤々としているさまが伺える。身だけでなく、殻に入ったミソはとりわけ日酒にあったことだろう。 この日

    絵画で味わう江戸のさかな【江戸の蟹、上方の酒】|鷹 輝政
    kaku_q-karakuwa
    kaku_q-karakuwa 2024/03/13
    片手に握られているつまみはガザミであろう。江戸前のガザミは当時有名であり、日常的に手に入るものであったと考えられる。塗られた色からも、よく火が通り赤々としているさまが伺える。
  • 江戸時代の魚事典を原文で読んだら心が熱くなった|鷹 輝政

    魚の事典というと、今ではやWebサイトなど多くのところで見ることができる。実は、江戸時代にもそれはあった。魚鑑(うおかがみ)というである。 国会図書館デジタルアーカイブで読むことができる。サムネイルもここから引用。挿絵とともに、133魚種分の産地や名前の由来、べ方、どこが体に良いか悪いかというところまで書いた、実用的なである。 かつお、真鯛、えび、ふぐ、赤貝の挿絵ためしに1ページ読んでみよう。試みに「くろだい」の節を書き下してみた(一部文字が出なかったところはカタカナで記した)。 くろだい 倭名抄に出づ。経にホウ魚と訓す。又弁式立成に海鲫魚和名ちぬ。西国にちぬだい。小なるものを俗にかひづといふ。漢名烏頬魚ミン志にみゆ。形たいに似て、全身灰色なり。古へよりいやしむといへども、その味ひ美し。真鯛に次ぐものなり。気味温毒なし。妊婦ふときわ堕胎す。蕨とともにうことを忌む 魚鑑 下巻倭

    江戸時代の魚事典を原文で読んだら心が熱くなった|鷹 輝政
    kaku_q-karakuwa
    kaku_q-karakuwa 2024/03/07
    つまり、海に囲まれ水産資源にすこぶる恵まれているこの国において、日々の食膳にのぼる魚の知識を示すことで市井の人々の養生に資するのだ、という意志のもとで書かれているということらしい。
  • 絵画で味わう江戸のさかな【遊郭のバックヤード】|鷹 輝政

    きらびやかな服を着てうまいものをべ、客をもてなす華やかな世界。喜びも大きいだろうがその気苦労はいかばかりか。彼女たちにも、ゆっくりと過ごす時間が必要だったはずだ。そんな時間に焦点をあてたのが、歌川豊国の見立源氏品定(みたてげんじしなさだめ)である。 末広恭雄 監修「魚づくし」より絵を見てみよう。格子窓の外には屋形船や荷船が往来していることから、品川や洲崎あたりであると推測できる。8人の人物が登場しており、あるものは足の爪を切り、あるものはを抱いている。寝転んでを読む横には、寿司の折詰と桜の箱。とっくりには酒が入っている。三味線をのんびり弾く女の横には、禿らしき少女が文を届けている。彼女たちに後ろには出前のものと思われる丼が置かれ、事をとったあとののんびりとした時間が描かれていると思われる。 折詰が二つ重ねて置かれている。上には「於加免寿司(おかめずし)」とあることから寿司の折詰、

    絵画で味わう江戸のさかな【遊郭のバックヤード】|鷹 輝政
    kaku_q-karakuwa
    kaku_q-karakuwa 2024/03/05
    折詰が二つ重ねて置かれている。上には「於加免寿司(おかめずし)」とあることから寿司の折詰、下には「向嶋桜餅(むこうじまさくらもち)」とあることから甘味の折詰であることがわかる。桜餅は食後のデザート、ある
  • 絵画で味わう江戸のさかな【かわいい子には寿司をあげよ】|鷹 輝政

    子どもは寿司が好きだ。休日にスシローやくら寿司を訪れてみると、寿司に大はしゃぎする子どもをなだめる夫婦の微笑ましい姿がよく見られる。 あまり知られていないが、浮世絵にも親子と寿司をモチーフとしたものがある。それが、歌川国芳の美人画『縞揃女弁慶』(しまぞろいおんなべんけい)である。 末広恭雄 監修「魚づくし」よりをさな子も ねたる安宅の松か鮓 あふぎづけなる 袖にすがりて 絵画上部には上記のとおり狂句が記されており、袖にすがって寿司をねだる子どもの様子が詠まれている。ここに表れる「松か鮓」というのは、江戸の寿司屋を指す。松下氏も紹介しているとおり、この店は握り寿司を生み出した店としても知られ、その味は大変な評判であったとされる。 細かいが「御膳 あたけ 松のすし さかな屋」と読める (読みやすいよう画像を回転させてある)この絵では、母親と思われる女性が皿に盛られた寿司を子どもに与えようとして

    絵画で味わう江戸のさかな【かわいい子には寿司をあげよ】|鷹 輝政
    kaku_q-karakuwa
    kaku_q-karakuwa 2024/03/04
    絵画上部には上記のとおり狂句が記されており、袖にすがって寿司をねだる子どもの様子が詠まれている。ここに表れる「松か鮓」というのは、江戸の寿司屋を指す。この店は握り寿司を生み出した店としても知られ、そ
  • 絵画で味わう江戸のさかな【蒲焼きと男前】|鷹 輝政

    今回は、男性のみに焦点をあてた絵画をとりあげる。歌川国芳の「かばやき 沢村訥升」である。訥升は『とっしょう』と読む。 末広恭雄 監修「魚づくし」より沢村訥升は、歌舞伎役者の名跡を表す。特にこの絵で描かれているのは、五代目 沢村宗十郎の若き日の姿である。そのため、この絵は町の様子をそのまま描いたものではなく、歌舞伎絵の一種である。 絵のモチーフは絵中央「沢村訥升」の左に太く書かれた文字のとおり、鰻屋である。特に2文字目と4文字目が読みづらいかもしれないが、それぞれ変体仮名/くずし字でありこれで「かばやき」と読む。 小林正博「実力判定 古文書解読力」より抜粋かごにひしめく鰻に脱がれた高下駄、手元に散らばった目釘の風情など、沢村訥升扮する鰻屋が高い写実性をもって描かれている。キッと振り返った色白二枚目の目線と真っすぐに立った鰻包丁、やや前かがみの姿態からなる交叉が味わい深い。まな板・かっかと燃え

    絵画で味わう江戸のさかな【蒲焼きと男前】|鷹 輝政
    kaku_q-karakuwa
    kaku_q-karakuwa 2024/03/02
    実は、鰻と歌舞伎は縁が深い。宮川政運の『俗事百工起源』によると、大久保今助という人物が鰻丼(鰻飯)の創始者として知られている。今助は中村座・市村座の金主(興行資本家)で、化政期の江戸劇壇の実力者として知
  • サザエさんと魚食の伝統:「大衆魚」の誕生を読んで|鷹 輝政

    歌詞に見る卓の情景「お魚くわえたドラ追っかけて はだしで駆けてく 陽気なサザエさん」 表記の一節は、日の国民的アニメ『サザエさん』のオープニングである。誰もが口ずさむことのできるこの曲は、1969年の放映開始当時から使用されていた。東名高速が完成しアポロが月へ行った、高度成長期も終焉を迎えつつある年のことである。 サザエさんが通う魚屋「魚徳」(長谷川町子美術館公式より)。この店は飲店として世田谷区に現存しているこの歌詞からは、当時の卓における魚の消費のされ方が浮かび上がってくる。主婦が家計をやりくりしながら、日々家族の好みにあわせた旬の材を鮮魚店で購入する。持ち帰ってそれを煮たり焼いたりしつつ、卓の準備をする。完成すると、親子三世代がちゃぶ台を囲んで事につく。 このように、明確な性別役割分業のもとで家事を中心となって担っていた女性たちが、不定形で多種多様、かつ調理に手間のか

    サザエさんと魚食の伝統:「大衆魚」の誕生を読んで|鷹 輝政
    kaku_q-karakuwa
    kaku_q-karakuwa 2024/03/01
    戦後の漁業生産力の大幅な拡大や、流通網の整備、所得の向上などによって日本全体に拡大していった。サザエさんの歌詞から浮かび上がる魚食の情景も、一見伝統的なものに見えるが、実はかなり現代的な消費の姿の一
  • 絵画で味わう江戸のさかな 【錦絵の寿司】|鷹 輝政

    今回紹介したい絵は、同じく豊国が描いた見立源氏はなの宴である。錦絵の中でも珍しい、握りずしを描きこんだものとして知られている。 末広恭雄 監修「魚づくし」より背景左には桜の花が見事に咲いている。背景右から中央部にかけては二階建ての家屋が配置されており、桜を観る女性や座敷での飲に興じる男性の姿が各部屋から見て取れる。左側に消失点を置いた遠近法が使われていることがわかる。 手前には遊女たちとともに飲に興じる男性の姿が描かれている。この絵は偐紫田舎源氏(にせむらさき いなかげんじ)という江戸時代最大のベストセラーから題材が取られており、ここで描かれた男性もその主人公である足利光氏(あしかが みつうじ)その人である。 遊女からお酌を受けつつ手を伸ばすその先には、3人の女性が描かれている。一番右の青色の服をきた女性は禿(かむろ。上位の遊女に仕える少女のこと)であり、封じ文を手に持っている。 「魚

    絵画で味わう江戸のさかな 【錦絵の寿司】|鷹 輝政
    kaku_q-karakuwa
    kaku_q-karakuwa 2024/02/29
    まず目を引くのは寿司である。なんと桶に積まれている。一番下には卵を使った巻き物が置かれ、その上に海老や小肌と思われる握りずしが乗っている。少し見づらいが一番上にはようじのようなものが刺さっており
  • 絵画で味わう江戸のさかな 【品川で食べる鯛の紅焼】|鷹 輝政

    新しく連載を始めることにした。テーマは表題のとおり、絵画から江戸の魚を味わおう、というものである。 これまで史料を原典で読みつつ江戸時代の水産物流通について調べ、記事に起こしてきた。これも、もの書きの端くれとして大変勉強になったのだが、文字がずらずら並んでいくだけで味気ないものとなった。 ならば、江戸時代の絵を鑑賞しながら、当時の魚に想いをはせてみようではないかということで企画したのが今回の連載「絵画で味わう江戸の魚」である。当時の味を想像しながら読んでもらえると嬉しい。 品川で鯛をべる今回扱う絵は、三代目歌川豊国(ここでの記名は五渡亭国貞)が描いた品川松弁新広間祝である。 末広恭雄 監修「魚づくし」より「松弁」とは、当時品川にあった娼家妓楼である。現在、品川といえば有名企業が連なるオフィス街というイメージだが、当時では大人の遊び場という側面があった。落語の「品川心中」などでも取り上げ

    絵画で味わう江戸のさかな 【品川で食べる鯛の紅焼】|鷹 輝政
    kaku_q-karakuwa
    kaku_q-karakuwa 2024/02/28
    ちなみに「魚づくし」では、鯛の置き方に着目している。通常、日本で魚をさらに置くときは頭を左に、腹を下に置くものである。しかしこの絵では、あえて腹が上になるように配置されている。
  • 平安時代の魚料理を再現した|鷹 輝政

    ちはやふるを見て思いました。 「かるたにはあれだけ多くの歌人が出てくるのだから、一人くらい魚好きがいるのでは?」 調べたところ該当者がいました。「あらざらむ...」を詠んだ和泉式部という女性です。歌の名手として知られますが、大変ないわし好きという話も残っています。 猿源氏草子という室町時代のには、和泉式部がいわしをべていたところを見つかり、恥ずかしくなって慌てて隠すといわれるシーンがあります(諸説あるものの)。当時いわしは庶民のべる魚で、高貴な方が口にするのは卑しいとされていたようですが、きっと好きでたまらなかったのでしょう。 ところで彼女はどうやっていわしをべていたのでしょうか?当時の流通では塩味の干物で主にされていたと考えられます。でもいくらいわし好きとはいえ塩味だけでは飽きるでしょう。何かアレンジをしていたのではと想像してしまいます。今回は当時の調味料を組み合わせていくこと

    平安時代の魚料理を再現した|鷹 輝政
    kaku_q-karakuwa
    kaku_q-karakuwa 2024/02/15
    和泉式部もたいそう驚かれると思うのですが、一方でほっとするのではないでしょうか。好きないわしを食べても、もう後ろ指をさされないどころか、食と健康を大切にする人だとも思ってもらえる世になったのですから。
  • 万葉集に詠まれた魚料理を再現してみた|鷹 輝政

    万葉集に、長意吉麻呂(ながのおきまろ)という方が読んだ鯛の歌があります。 万葉集 第16巻3829番歌醤酢尓蒜都伎合而鯛願吾尓勿所見水葱煮物 万葉集これで「ひしほすに ひるつきかてて たひねがふ われになみえそ なぎのあつもの」と読みます。 (「こんなお吸い物とかじゃあなくってサ、醤酢に蒜いれたやつで鯛がべたいのヨ」という願望をうたっています) 今回のレシピは「醤酢尓蒜都伎合」のたった七文字です。ひしお(みそ・醤油のご先祖さま)を酢に溶いたものに、ノビル(今回はにんにくで代用)を砕いたものを混ぜて鯛につけ完成です。 使用した材料。真鯛はsakana baccaで購入。ひしお。自作したかったが銚子山十さんのもので代用。べるしょうゆとあったが、ゆるめの味噌という感じ。甘みが入っているため当時のものとは少しずれるはず。ひしおを酢に解いたものに蒜(今回は近い味のにんにくで代用)を崩したものを加

    万葉集に詠まれた魚料理を再現してみた|鷹 輝政
    kaku_q-karakuwa
    kaku_q-karakuwa 2024/02/13
    これで「ひしほすに ひるつきかてて たひねがふ われになみえそ なぎのあつもの」と読みます。 (「こんなお吸い物とかじゃあなくってサ、醤酢に蒜いれたやつで鯛が食べたいのヨ」という願望をうたっています)
  • 戦国の魚料理「鯉の陣中漬け」を再現してみた|鷹 輝政

    では、農民から天皇まで色々な方がさまざまな場所で魚をべてきました。古くは戦国時代、合戦の場においても例外ではありません。 今回は、織田・徳川軍と長篠の戦いで激突した武田軍(甲陽軍鑑で有名ですね)は甲斐国に伝わる陣中(合戦の際にべる糧の一種)、「鯉の陣中漬」を再現してみました。 甲陽軍鑑作り方は簡単です。まず鯉をさばきます。よく揚げた上で、醤油とみりんをベースにしたタレに2, 3日漬けます。引き上げたあと、味噌に1か月ほど漬けて完成です。 養殖の鯉を仕入れて使った(調理の際は保冷をはじめ衛生面には特に気を使っています。常温調理など、当時と同じ条件で作るとお腹を壊す場合があるので、現代で作る際は気をつけてください) 陣中漬けを一口。しょっぱい…べてみましたが、やっぱり味が濃いです。加えて、鯉の身を強めに揚げたのもあり少しパサついているところもあります(私の調理スキルのせいなのもあ

    戦国の魚料理「鯉の陣中漬け」を再現してみた|鷹 輝政
    kaku_q-karakuwa
    kaku_q-karakuwa 2024/02/09
    当時は現代のような冷蔵庫もなく、食物の保存を考えるとどうしても塩分が濃くならざるを得ないのでしょう。そして内陸の甲斐国では淡水魚の鯉を糧食として選ぶことになりこういう味になったのかもしれません。
  • 日本の漁船でStarlinkが使えるようになりそう〜海外事例と国内での活用〜|鷹 輝政

    の領海外でもStarlinkが使えるようになりそう総務省は12月25日、電波法関係審査基準の一部を改正する訓令案を発表しました。訓令案は船舶などに搭載される「非静止衛星通信システム」(Starlinkもこれに含まれます)の無線局について、領海外でも通信できるようにすることが盛り込まれており、2023年12月26日から2024年1月29日まで案に対する意見聴取(パブリックコメント)を実施するそうです。 通信の速さは下りで40〜220+MBPS、上りで8〜25+MBPS、レイテンシが99m sec未満。価格も1TB(少人数のクルー向けで、クラウドアプリケーション、ビデオ通話をサポートする船舶に最適なプラン)で月13万円ほどと、Starlinkは性能は高く、コストは比較的低く抑えられています。 これまで法令上の制約で領海外においてStarlinkとの通信が行えないようになっていたこともあり、

    日本の漁船でStarlinkが使えるようになりそう〜海外事例と国内での活用〜|鷹 輝政
    kaku_q-karakuwa
    kaku_q-karakuwa 2023/12/30
    Starlinkユニットは2020年4月にバンクーバー島のスタンプ・リバーに設置され、それ以来継続的にインターネット接続されたカメラから水流速を測定し、魚の個体数を正確に追跡することができているそうです。
  • 1