コロナの中の、保健所の中の人。一気に読める。一気に読むべし 保健所の「コロナ戦記」TOKYO2020‐2021書評 あくまで私見だが、医者は文章書きがあまり上手ではない。特にぼくが医者になったばかりの数十年前はそうだった。 当時の医者は、そもそも患者や家族、同業者たちにさしたる説明責任を持っていなかった。なぜ、この病気だと思うのか。なぜ、この検査をするのか。なぜ、この薬を処方するのか。誰にも説明を求められず、誰にも説明しない。それでなくても読みにくい乱筆のカルテは、実は読める字で読んでも意味不明だった。日本語の医学書は過剰なまでに難解で、論理的ですらなかった。海外のテキストと比較すればその違いは明らかだった。もちろん、近年は素晴らしい若手の書き手が激増中なので、このトレンドも早晩消失することとは思ってはいるが。 少なくとも、ぼくが研修医になったばかりの頃は、分かりやすく、読みやすく、合理的