ゆうきまさみ氏の『新九郎、奔る!』の最初は三十八歳の新九郎が堀越公方の御所を襲撃するシーンから始まりますが、そこから十一歳の千代丸に戻ります。そしてその千代丸が伊勢宗家に同居する実父の伊勢備前守盛定の邸に引き取られてすぐに起きたのが文正の政変です。 『新九郎、奔る!』では伊勢家から見た文正の政変が描かれています。 伊勢貞親は足利義政の養育先であった縁で、貞親の嫡男の伊勢兵庫助貞宗(新九郎の従兄)が義政の長子の義尚(作中では春王)の養育先となっています。 ただ義政には後継者に足利義視がおり、伊勢家としては義視が将軍となった場合、旨味がありませんので、義視を排斥して義尚を後継者につけようと画策します。 とここまで書いてきて気づく方もいらっしゃるかもしれません。義視を排斥して義尚に跡を継がせようとしたのは日野富子ではないのか、と。これについては現状の有力な説では明応の政変後に作られた『応仁記』の