だが、戦前戦中ばかりか戦後日本の加害性までを深く内省し、徹底して思いつめ、ストイックなまでに身を律して行動に移した若者が1970年代の日本にいた。結果として多くの人の命を奪い、傷つけることになってしまったが、そうした若者たちの存在に光を当てたドキュメンタリーが現在の日韓でどう受けとめられるか。 せめて小さな芽になってほしい もちろん、1本のささやかなドキュメンタリーが両国関係を大きく突き動かす可能性はないだろう。ただ、最悪状態に陥った両国関係を憂う心ある者たちの意識にさざなみを立て、互いの過去と未来をあらためて捉え直す契機にはなる。 そう直感したからこそ、キム・ミレという韓国人女性はこのドキュメンタリーを手がけたのではないか、というのは私の妄想に過ぎないが、せめて小さな芽になってほしいと切に願う。 もう一点、事件の凄惨さがもたらす過剰な悲愴感が薄いのも本作の特徴といえる。作品内でカメラを向