文芸評論家 持田叙子 今年、新幹線が開通し、加賀百万石の文化を誇る古都・金沢が大きく注目されています。 外国のお客様もずいぶん増えていると聞きます。 泉鏡花 はその金沢に生まれ、金沢の神秘的な山や川、湖や沼を舞台にした小説や戯曲をたくさん書きました。歌舞伎でもよく上演される「夜叉が池」など特に有名ですね。 明治・大正・昭和に活躍した夢と幻、ロマンの作家です。 芥川龍之介、谷崎潤一郎、三島由紀夫、柳田國男など、鏡花の神秘あふれる幻想文学を熱烈に愛する作家や学者は昔から数えきれないほどです。現代では、歌舞伎俳優の玉三郎さんが鏡花をもっとも深く愛しておられるのではないでしょうか。 永遠の少女。永遠の母なるもの。男にとっても女にとっても永遠のあこがれの天使です。 そうしたヒロインをつくるために鏡花はしばしば美しい花のイメージを活用します。彼のヒロインはきまって、夢のように美しいきものをまといます。