愛した女への思慕をつづり、写真をコラージュし、小説だか、日記だか、論文だか、判然としない、フリーなスタイルのテクスト。これって今なら、ウェブ日記とかでよくあるけど、1928年に書かれた、ってことを考えると、斬新だよね。 白水Uブックスの『ナジャ』は中学3年生のとき、一度読んでいる。でも、難解で、最初のほうでつまずいちゃって、うまく読めなかった。じつは、中学受験で勉強漬けのガキだったぼくが文学にハマったのは、シュルレアリスムがきっかけだった。アポリネールの『異端教祖株式会社』、ジャリの『超男性』、ベアリエの『水蜘蛛』なんかと一緒に、手にした。世の中の思考方法はすべて効率が優先され、垂直と水平のフレーミングだけが大切だ、と思いこんでいた当時。ふと図書館の片隅に光る外国文学レーベルに手をのばしたんだ。それがUブックスだった。 ぜんぶぶっ壊せ、夢と現実の境はない、幻想が現実の領域に入りこみ世界を反