大失敗したことがある。それは、ドーキンス『利己的な遺伝子』の「利己的」を誤解していたことだ。 タイトルから「利己的な遺伝子がいて、そいつが生物の行動を決定する」と思い込んでいたが、これは誤りだ。この本でドーキンスが言いたかったのは、生物の行動様式を説明する際、遺伝子の自己複製というレベルからだと整合的に理解できるということ。「利己的な遺伝子」は説明のために擬人化されたメタファーにすぎない。分かりやすくするための擬人化の罠の顛末は[分かりやすさという罠『利己的な遺伝子』]で曝露しているので、教訓とされたし。 『野性の知能』は、擬人化の罠に囚われていないか問いかける。動物を観察する際、ヒトに似た属性の有無を探し、ヒトの基準で動物の行動を評価する。何かヒトに似た行動を取ったとしても、その行動を生んだ根源的なメカニズムまでがヒトと同じとは限らない。それぞれ異なる身体と神経系をもち、それぞれ異なる生
サイボーグ化する動物たち-ペットのクローンから昆虫のドローンまで 作者: エミリー・アンテス,西田美緒子出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2016/08/05メディア: 単行本この商品を含むブログを見る「サイボーグ化する動物たち」と言われると、ブースターが付いていて時速300キロで走るイヌや肩にブレードが付いていて標的を切り刻むネコなどを思い浮かべてしまう(僕だけかもしれない)。本書の原題は「FRANKENSTEINS'S CAT Cudding Up to Biotech's Brace New Beasts」であり、どちらかといえばバイオテクノロジーによる動物の任意的な遺伝子改変による成果を紹介する側面が強い本だ。 遺伝子改変 biotech関連では現状の成果をほとんど知らなかったので、読んでみて「けっこうなことやってんなあ」と思う事例が多い。たとえば中国ではミュータントマウスの大量
死んだら魂は新たな肉体に宿る、という「生まれ変わり」を信じている人は多い。それもただ信じているだけでなく肯定的に、こう死後生まれ変わりたいという願いとして持っているし、さらに今の自分が生前他の人物であったという前世も信じていることが多い。以前知り合いに、前世は中世イタリアの踊り子だったと真面目に信じている人がいた。「やべーな中世イタリアとか戦争と略奪と破壊と飢饉と疫病の終わらないサイクルで庶民が生きていくのは地獄じゃねーか」と言いたくなるキモ歴オタ特有の意地悪な気持ちはぐっとどっかに追いやり、自由で夢と希望にあふれたその人の前世についてとても面白く話を聞いていて、ああなるほど「生まれ変わり」信仰が今を生きるその人の存在意義を形作っているのだな、と思ったものだ。 そして、これは現代日本だけの傾向ではなく世界的な潮流である。様々な調査データが一様に「生まれ変わり」「輪廻転生」を信じている人の世
Author:くるぶし(読書猿) twitter:@kurubushi_rm カテゴリ別記事一覧 新しい本が出ました。 読書猿『独学大全』ダイヤモンド社 2020/9/29書籍版刊行、電子書籍10/21配信。 ISBN-13 : 978-4478108536 2021/06/02 11刷決定 累計200,000部(紙+電子) 2022/10/26 14刷決定 累計260,000部(紙+電子) 紀伊國屋じんぶん大賞2021 第3位 アンダー29.5人文書大賞2021 新刊部門 第1位 第2の著作です。 2017/11/20刊行、4刷まで来ました。 読書猿 (著) 『問題解決大全』 ISBN:978-4894517806 2017/12/18 電書出ました。 Kindle版・楽天Kobo版・iBooks版 韓国語版 『문제해결 대전』、繁体字版『線性VS環狀思考』も出ています。 こちらは10刷
23000: 氷三部作3 (氷三部作 3) 作者: ウラジーミルソローキン,Vladimir Sorokin,松下隆志出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/07/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る現代ロシアのポストモダン文学を代表するウラジミール・ソローキンによる氷三部作が『氷』『ブロの道』に続く本書『23000』で無事に完結した。宇宙創世から世界をまるごと創造し、世界の終わりまでを描き切ろうとした、壮大な野心を持った三部作だ。SFといえばSFだし、陰謀/宗教/テロ小説・現代小説とジャンル混合型の海外作品として、個人的にはこの数年でもっとも楽しませてもらった作品である。 世界観とかあらすじとか 三部作を通して描かれるのは革命期から現代に至る20世紀のソ連・ロシアを中心とした世界中。時代や状況はおおむね現代と同じように推移しているが、しかしこの世界には
青の数学 (新潮文庫nex) 作者: 王城夕紀出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/07/28メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る『天盆』でファンタジーを、『マレ・サカチのたったひとつの贈物』ではSFを描いてきた王城夕紀さんの三作目は、前二作につづいてこれはまた難しそうなところに放り込んできたな、と一読して思わせられる「数学バトル青春小説」である。 「数学バトルってなんじゃい」と思うかもしれないが、現実にも「数学オリンピック」といって難問に対して何点とれたかを競い合う数学競技がある。加えて、本書にはフィクション要素としてそれ以外に夜の数学者と呼ばれる日本人がつくりあげたネット上の数学コミュニティサイト「E2」が存在している。そこにはとても解けきれないほどの問題が用意されており、参加者らは決闘という形で同じ問題群に取り組み、さまざまなルールで勝敗を決することができる
〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則 作者: ケヴィン・ケリー,服部桂出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2016/07/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る1989年生まれの僕が小学生だった頃、パソコンは家になく、インターネットといえば「遊戯王カードのレアをパック購入前に当てる方法」などの普通は出回らない情報がある場所で、少ないお小遣いで必死に遊戯王のカードを買いあさっていた僕は父親に頼んで職場から検索して出てきたページをコピーしてもらっていた。 そんな時代から考えると、起きたらとりまパソコンを立ち上げ、家から出てもシームレスにiPhoneでネットに繋がり続けている現代はまるで別世界に来てしまったような気がする。たぶんこの後の30年でも同じように振り返ってみると、「まるで別世界に来てしまったように感じる」変化は起こり続けるのだろう。本書は1
TIME LOCKER - Shooter sotaro otsukaゲーム無料 無料 無課金 広告もほぼ無し 指一本でプレイ可能 プレイヤーを動かしている時だけ時間が進む、という新感覚シューティングゲーム 課金要素が無いので安心してDLできます(作者さんは儲かるのか疑問ですが…)。 しかし、時間泥棒すぎてこれだけで貴重な夏休みが終わってしまう可能性がありますので十分ご注意ください…!! 関連 センスの塊。スマホのカジュアルシューティング最高峰『TIME LOCKER』レビュー 『Time Locker』製作者インタビュー。「人間は、好きなものしか作れない」から独立した男 TIME LOCKER Shooter ユニット・パワーアップまとめ | 花屋敷
MIT engineers have developed a microfluidic device that replicates the neuromuscular junction — the vital connection where nerve meets muscle. The device, about the size of a U.S. quarter, contains a single muscle strip and a small set of motor neurons. Researchers can influence and observe the interactions between the two, within a realistic, three-dimensional matrix. The researchers genetically
2,000万件もの医学論文を学習した人工知能が、遺伝子のデータから「二次性白血病」という特殊な白血病であることを10分ほどで見抜き、患者を救った‥‥これは未来の話ではなく、現在進行形で起こったことです。人工知能 病名突き止め患者の命救う 国内初かという記事になっていました。 東京大学医科学研究所の附属病院は、アメリカの大手IT企業IBMなどと協同で、人工知能を備えたコンピューターシステム「ワトソン」に2000万件に上るがん研究の論文を学習させ、診断が極めて難しく治療法も多岐にわたる白血病などのがん患者の診断に役立てる臨床研究を進めています。 人工知能の活用方法は様々ですが、医療での応用では病名を見抜くという成果が出ているようです。 通常は複数の医師が遺伝情報のデータと医学論文を突き合わせながら病名の診断を行うところ、今回は人工知能に医学論文と遺伝情報のデータを読みこませることで、10分ほど
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