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ブックマーク / www.riken.jp (73)

  • DNAメチル化調節因子の作用機作を解明

    理化学研究所(理研)開拓研究部 眞貝細胞記憶研究室の新海 暁男 上級研究員、志村 知古 テクニカルスタッフⅠ、福田 渓 客員研究員、眞貝 洋一 主任研究員らの国際共同研究グループは、さまざまな生命現象やがんや免疫不全などの疾患に関与しているDNAメチル化をコントロールする仕組みを明らかにしました。 研究成果は、DNAメチル化制御の全容解明に向けた一歩であり、疾患治療や創薬の基礎につながるものと期待されます。 ICF症候群[1]と呼ばれる免疫不全ではDNAの低メチル化が認められ、その原因遺伝子にHELLSとCDCA7が含まれていることなどからHELLS-CDCA7(HELLSタンパク質とCDCA7タンパク質の複合体)がDNAメチル化の制御をつかさどっていると考えられてきました。しかしその分子機構は不明でした。 今回、国際共同研究グループは、両側鎖がメチル化されたDNAの複製の際に形成され

    DNAメチル化調節因子の作用機作を解明
  • やせ型糖尿病モデルハムスターを開発

    理化学研究所(理研)バイオリソース研究センター 遺伝工学基盤技術室の廣瀬 美智子 テクニカルスタッフⅡ、小倉 淳郎 室長、マウス表現型解析技術室の田村 勝 室長、京都大学大学院 医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学の村上 隆亮 助教、稲垣 暢也 名誉教授らの共同研究グループは、ハムスターの遺伝子を改変することにより、やせ型糖尿病モデル動物の開発に成功しました。 研究成果は、やせ型糖尿病の発症機構の解明や治療法の開発に用いられることが期待されます。 今回、共同研究グループは、糖質や脂質の代謝がヒトに類似しているといわれているゴールデンハムスター[1]を用いて、卵管内ゲノム編集法(i-GONAD法)[2]により糖尿病の原因遺伝子の一つであるIRS2(インスリン受容体基質タンパク質2)遺伝子を働かないようにすることで、やせ型糖尿病モデルハムスターの開発に成功しました。日の糖尿病患者数は予備

    やせ型糖尿病モデルハムスターを開発
  • 全ゲノム解析で明らかになる日本人の遺伝的起源と特徴

    理化学研究所(理研)生命医科学研究センター ゲノム解析応用研究チームの寺尾 知可史 チームリーダー(静岡県立総合病院 臨床研究部 免疫研究部長、静岡県立大学 薬学部ゲノム病態解析講座 特任教授)、劉 暁渓 上級研究員(研究当時:ゲノム解析応用研究チーム 研究員; 静岡県立総合病院 臨床研究部 研究員)、東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター シークエンス技術開発分野の松田 浩一 特任教授らの共同研究グループは、大規模な日人の全ゲノムシークエンス(WGS)[1]情報を分析し、日人集団の遺伝的構造、ネアンデルタール人[2]およびデニソワ人[3]由来のDNAと病気の関連性、そしてゲノムの自然選択が影響を及ぼしている領域を複数発見しました。 研究成果は、日人集団の遺伝的特徴や起源の理解、さらには個別化医療[4]や創薬研究への貢献が期待されます。 今回、共同研究グループは、バイオバン

    全ゲノム解析で明らかになる日本人の遺伝的起源と特徴
  • 脳の基本単位回路を発見 | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター局所神経回路研究チームの細谷俊彦チームリーダー、丸岡久人研究員らの研究チーム※は、哺乳類の大脳皮質[1]が単純な機能単位回路の繰り返しからなる六方格子状の構造を持つことを発見しました。 大脳はさまざまな皮質領野[2]に分かれており、それぞれ感覚処理、運動制御、言語、思考など異なる機能をつかさどっています。大脳は極めて複雑な組織なため、その回路の構造には不明な点が多く残っています。特に、単一の回路が繰り返した構造が存在するか否かは不明でした。 今回、研究チームは、大脳皮質に6層ある細胞層の一つである第5層をマウス脳を用いて解析し、大部分の神経細胞が細胞タイプ特異的なカラム状の小さなクラスター(マイクロカラム)を形成していることを発見しました。マイクロカラムは六方格子状の規則的な配置をとっており、機能の異なるさまざまな大脳皮質領野に共通に存在して

  • 寄生植物は植物ホルモンを使い宿主を太らせる | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター植物免疫研究グループのトーマス・スパレック国際特別研究員、若竹崇雅特別研究員、白須賢グループディレクターらの国際共同研究グループ※は、寄生植物が植物ホルモンであるサイトカイニン[1]を使って宿主植物の成長を操作し、効率のよい寄生を実現していることを発見しました。 寄生植物は主要な穀物など、さまざまな作物に寄生し、収穫量を大幅に減らす農業上の有害植物です。特にアフリカや地中海沿岸地域での農業への被害は深刻です。このため、寄生植物がどのように宿主植物の生理機能や成長を制御しているのかを理解することは、こうした被害への対策を講じる上で重要です。寄生植物は根に吸器と呼ばれる侵入器官を形成し、この器官を介して宿主組織に侵入、維管束[2]を連結することで宿主植物との連絡を確立します。寄生植物はこの連絡を介して水や栄養を宿主植物から奪いますが、同時にさま

    keloinwell
    keloinwell 2017/06/20
    おもしろい
  • 卵母細胞はその大きさゆえに間違いやすい | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)多細胞システム形成研究センター染色体分配研究チームの北島智也チームリーダーと京極博久基礎科学特別研究員の研究チームは、卵子が染色体数異常になりやすい理由の一つは「卵子のもととなる卵母細胞[1]の細胞質サイズの巨大さ」であることを実験的に示しました。 成長した卵母細胞は、大人の体の中で最も巨大な細胞の一つです。卵母細胞は減数分裂[2]を行うことで卵子となり、精子と受精して胚発生の開始点となります。受精後の胚発生を正常に行うためには、卵子は正常な数の染色体を持つ必要があります。ところが、卵子では染色体数の異常が頻繁にみられます。染色体数異常の卵子が受精すると、その多くは正常に胚発生できず、着床前に失われるか、流産となります。出産まで至った場合には、ダウン症(21番トリソミー)[3]などの染色体数異常による先天性疾患を引き起こします。卵子の染色体数は、卵母細胞の減数分裂

    keloinwell
    keloinwell 2017/05/09
    マイクロピペットで卵母細胞の大きさを小さくしたり、核を除いた卵母細胞を他の卵母細胞と融合させることで倍の体積の卵母細胞を作り、染色体分配を調べている
  • 脳の働きに重要なIP3受容体の動作原理を解明 | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター発生神経生物研究チームの濱田耕造研究員と御子柴克彦チームリーダーらの共同研究チーム※は、記憶や学習などの脳機能に必要なカルシウムチャネル[1]であるIP3受容体(イノシトール三リン酸受容体)[2]の動作原理を、X線結晶構造解析[3]と変異体の機能解析により解明しました。 IP3受容体は小胞体の膜上に局在するタンパク質で、個体の発生や神経のシナプス可塑性[4]を担っています。IP3受容体は四つ組み合わさって中心部にカルシウムイオン(Ca2+)を一つだけ通す小さなイオン透過口を形成し、カルシウムチャネルとして働きます注1)。IP3受容体の遺伝子変異は、家族性脊髄小脳失調症[5]やGillespie(ガレスピー)症候群[6]の原因となります。またこのチャネルは、認知症の主な原因である神経変性にも関与していることが知られています。そのため、IP3受容

  • 2018年度 基礎科学特別研究員 募集要項 | 理化学研究所

  • 化学的手法でクモの糸を創る | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター酵素研究チームの土屋康佑上級研究員と沼田圭司チームリーダーの研究チームは、高強度を示すクモ糸タンパク質のアミノ酸配列に類似した一次構造[1]を持つポリペプチドを化学的に合成する手法を開発しました。また、合成したポリペプチドはクモ糸に類似した二次構造[1]を構築していることを明らかにしました。 クモの糸(牽引糸)は鉄に匹敵する高強度を示す素材であり、自動車用パーツなど構造材料としての応用が期待されます。しかし、一般的にクモは家蚕のように飼育することができないため、天然のクモ糸を大量生産することは困難です。また、一部の高コストな微生物合成法を除くと、人工的にクモ糸タンパク質を大量かつ簡便に合成する手法は確立されていません。 今回、研究チームはこれまでに研究を進めてきた化学酵素重合[2]を取り入れた2段階の化学合成的手法を用いて、アミノ酸エステル

    keloinwell
    keloinwell 2017/01/20
    まさにスパイダーマン。
  • 生体内ゲノム編集の新技術を開発 | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)多細胞システム形成研究センター非対称細胞分裂研究チームの恒川雄二研究員、松崎文雄チームリーダー、米国ソーク生物学研究所の鈴木啓一郎研究員、ベルモンテ教授らの国際共同研究グループ※は、ゲノム編集ツールであるCRISPR-Cas9[1]システムを利用し、マウス・ラット生体内の神経細胞など非分裂細胞[2]でも有効な新しい遺伝子操作技術を開発しました。 近年、ゲノムの標的遺伝子を書き換える「ゲノム編集[3]」技術が急速に進歩し、ゲノム中の塩基配列を自由に選んで設計・改変することが可能な時代に入ってきました。ゲノム編集技術のさらなる発展は、医療・エネルギー・品などさまざまな分野に大きな利益をもたらすと期待されており、次世代のバイオテクノロジーとして注目を集めています。しかし、既存の方法は、損傷を受けたゲノムDNAを修復する機構(DNA修復機構)の一種であり、細胞が分裂する

  • 病原菌が鉄を細胞内に取り込む仕組み | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)放射光科学総合研究センター城生体金属科学研究室の直江洋一特別研究員(研究当時)、中村希研修生(研究当時)、城宜嗣主任研究員(兵庫県立大学大学院生命理学研究科教授)、杉宏専任研究員らの研究チームは、病原菌が増殖に必要な鉄を自身の細胞内に取り込む際に機能するタンパク質の立体構造を原子レベルで解明しました。これにより、病原菌が効率的に鉄を細胞内へと輸送する仕組みが明らかになりました。 私たちがべ物から吸収した鉄分は、体中の細胞へ運ばれてさまざまなタンパク質と結合した状態になります。例えば、ヘモグロビン[1]として血液中で酸素の運搬をしたり、細胞が呼吸をするのに使われたりします。一方で病原菌は、ヘモグロビンから鉄を含んだ化合物「ヘム[2]」を奪い、病原菌の細胞膜を貫通しているタンパク質「ヘムトランスポーター(ヘム輸送体)」を利用して細胞内へ取り込みます。 これまで、ヘ

  • シビレエイ発電機 | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)生命システム研究センター集積バイオデバイス研究ユニットの田中陽ユニットリーダーらの共同研究グループ※は、シビレエイ[1]の電気器官を利用した新原理の発電機を開発しました。 火力や原子力といった既存の発電方法に代わる、クリーンで安全な発電方法の開発が急がれています。そこで近年、生物機能に着目し、グルコース燃料電池[2]や微生物燃料電池[3]などのバイオ燃料電池が開発されていますが、従来の発電法に比べて出力性能が劣っています。 一方、シビレエイに代表される強電気魚は、体内の電気器官で変換効率が100%に近い効率的な発電を行っています。これは、ATP(アデノシン三リン酸)をイオン輸送エネルギーに変換する膜タンパク質が高度に配列・集積化された電気器官とその制御系である神経系を強電気魚が有しているためです。共同研究グループは、これを人工的に再現・制御できれば、画期的な発電方

  • ミトコンドリアゲノムの初期化機構を発見 | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)吉田化学遺伝学研究室の凌楓(リン・フォン)専任研究員、吉田稔主任研究員、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)メディカル・ゲノムセンターの後藤雄一センター長らの共同研究グループは、細胞分裂後にできる娘細胞にミトコンドリアDNA(mtDNA)からなる「線状多量体(コンカテマー)[1]」が送り込まれることでミトコンドリアゲノムの初期化が促進されるという、mtDNA複製と分配の新しいメカニズムを発見しました。 1つの細胞には、数千個ものミトコンドリアが存在します。ミトコンドリアゲノムは加齢に伴い変異が蓄積し、成人の体細胞で変異型mtDNAと正常型mtDNAが混在した「ヘテロプラスミー[2]」という状態になります。さらに、変異型mtDNAの比率が一定以上になるとミトコンドリアの機能が低下し、ミトコンドリア病[3]などを発症することが知られています。一方、新生児のミトコ

  • 精子が卵子を活性化する新しい仕組みを解明 | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)生命システム研究センター発生動態研究チームの大浪修一チームリーダーと髙山順研究員の研究チームは、線虫C. elegans[1]の受精の際に精子のカルシウム透過性チャネル[2]が卵子の中に「受精カルシウム波[3]」を引き起こすことを明らかにし、精子が卵子を活性化する新しい仕組みを解明しました。 動物の一生は、精子と卵子が受精することから始まります。卵子は物質の合成をほとんど行わない不活発な細胞ですが、精子と受精すると活発に物質を合成し、細胞分裂を始める胚へと状態が大きく転換します。これを「卵子の活性化」と呼びます。この転換のきっかけとなるのが、卵子内のカルシウム濃度変化が伝播していく現象「受精カルシウム波」です。 研究チームは、精子が受精カルシウム波をどのように引き起こしているかを明らかにするため、体が透明かつ遺伝学的実験が容易な線虫C. elegansを用いて、そ

  • シナプスの微細構造まで鮮明に | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)多細胞システム形成研究センター感覚神経回路形成研究チームの今井猛チームリーダー、柯孟岑(カ・モウシン)国際特別研究員、金沢大学新学術創成研究機構の佐藤純教授らの共同研究グループ※は、生体組織深部の超解像イメージングを可能とする新しい組織透明化試薬「SeeDB2(シーディービーツー)」を開発しました。SeeDB2と超解像顕微鏡[1]を用いて、マウスやショウジョウバエの脳の蛍光イメージングを行い、シナプス[2]の微細な3次元構造を大規模に解析できることを示しました。 神経細胞はシナプスと呼ばれる構造で互いに連絡し合い、脳内に神経回路を構成しています。しかし、その構造は1マイクロメートル(μm、1μmは1,000分の1mm)以下と小さく、従来の光学顕微鏡でその詳細を観察することは困難でした。また、近年、光の回折限界[3]を超える分解能[4]を持つ超解像顕微鏡が開発されて

  • 脳の進化的起源を解明 | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)倉谷形態進化研究室の倉谷滋主任研究員、兵庫医科大学教養部門生物学の菅原文昭講師(理研倉谷形態進化研究室客員研究員)らの共同研究グループ※は、顎(あご)を持たない脊椎動物「円口類」に属するヌタウナギ[1]とヤツメウナギ[2]の脳の発生過程を観察し、これらの動物では見つかっていなかった脳の中の2領域を新たに発見しました。これにより、段階的に進化してきたと考えられてきた脳の各領域のほとんどが、5億年以上前にすでに成立していたことを明らかにしました。 脳は細かく領域化された複雑な器官ですが、各領域が進化の過程でいつ獲得されたのかについては、未解明な点が多く残されています。現在、地球上に生息する脊椎動物の中で最初に分岐したのは、顎を持たない「円口類」と呼ばれる動物群です。円口類と、ヒトのように顎を持つ「顎口(がっこう)類」との比較により、脊椎動物の脳の初期進化を解明できると

  • 電気で生きる微生物を初めて特定 | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所環境資源科学研究センター生体機能触媒研究チームの中村龍平チームリーダー、石居拓己研修生(研究当時)、東京大学大学院工学系研究科の橋和仁教授らの共同研究チームは、電気エネルギーを直接利用して生きる微生物を初めて特定し、その代謝反応の検出に成功しました。 一部の生物は、生命の維持に必要な栄養分を自ら合成します。栄養分を作るにはエネルギーが必要です。例えば植物は、太陽光をエネルギーとして二酸化炭素からデンプンを合成します。一方、太陽光が届かない環境においては、化学合成生物と呼ばれる水素や硫黄などの化学物質のエネルギーを利用する生物が存在します。二酸化炭素から栄養分を作り出す生物は、これまで光合成か化学合成のどちらか用いていると考えられてきました。 共同研究チームは、2010年に太陽光が届かない深海熱水環境に電気を非常によく通す岩石が豊富に存在することを見出しました。そして、電

  • 光遺伝学によってマウスのうつ状態を改善 | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター 理研-MIT神経回路遺伝学研究センターの利根川進センター長、スティーブ・ラミレス大学院生らの研究チームは、うつ様行動[1]を示すマウスの海馬[2]の神経細胞の活動を操作して、過去の楽しい記憶を活性化することで、うつ様行動を改善させることに成功しました。 一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しくない、などの症状を示すうつ病は、日においても入院と外来合わせて約96万人もの患者がいると言われています(厚生労働省による2011年患者調査)。しかしながら、一般的に使われている治療薬の効果は個人差が大きく、うつ病の克服は容易ではありません。研究チームは2014年に、最新の光遺伝学[3]を用いて、マウスの嫌な体験の記憶を楽しい体験の記憶に書き換えることに成功しました。「うつ病では、それまで楽しかったことが楽しくなくなるなど、過去の楽しい体験を正しく

  • 細胞の分化状態の可視化に成功 | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)生命システム研究センター先端バイオイメージング研究チームの市村垂生研究員、渡邉朋信チームリーダー、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの藤田英明准教授らの共同研究チーム※は、ラマン散乱光[1]の分光スペクトル[2]を用いて、細胞の分化状態を非染色かつ非侵襲で識別し、細胞分化の途中過程における細胞状態の変遷を可視化することに成功しました。 正常細胞とがん細胞との識別や良質な人工多能性幹細胞(iPS細胞)[3]の仕分けなど、細胞の種類や分化状態を判断するために、近年では遺伝子やタンパク質発現・相互作用などの情報が主に使われてきました。しかし、これらの情報を得るためには、細胞を破砕するか、蛍光抗体[4]で染色する必要があります。このような従来の方法では細胞に損傷を与えてしまうため、細胞を損傷なく識別する方法の開発が待たれていました。 ラマン散乱は、物質に光を照射した際

  • 記憶痕跡回路の中に記憶が蓄えられる | 理化学研究所

    要旨 理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター 理研-MIT神経回路遺伝学研究センターの利根川進センター長らの研究チーム※は、従来記憶の保存に不可欠だと考えられていたシナプス増強[1]がなくても、記憶が神経細胞群の回路に蓄えられていることを発見しました。 私たちの記憶は、はじめは不安定ですが、記憶の固定化[2]というプロセスを経て、より長期的な記憶に変化します。記憶は記憶痕跡[3]とよばれる神経細胞群とそれらのつながりに蓄えられると考えられています。記憶が長期的に保存されるには、この記憶痕跡細胞同士のつながりを強めるシナプス増強という過程が不可欠であるとされています。実際、実験動物においてシナプス増強を薬剤で阻害すると、過去のことを思い出せなくなることが分かっています。しかし、記憶の固定化プロセスの中で、記憶痕跡を形成する神経細胞群そのものにどのような変化が起きているのかは、まったく分か