最近取材したエコノミストの経済見通し会議で、日銀副総裁に就任した岩田規久男氏が話題になっていた。「インフレ2%目標を達成できなかったら辞任する」とした、“背水の陣”発言にウォール街が感銘を受けている。 記者(松浦)が大学生だった1990年代初め、上智大学教授だった岩田氏が教えていた経済原論の授業を聴講した。ネアカでテニス好き。甲高い声で教える岩田氏の授業は人気があった。 当時はバブル崩壊直後。「中央銀行が制御できる」としたハイパワードマネー拡大を岩田氏は主張していたが、授業でも「日銀は分かっていない」とぼやいていた。マネーサプライの低迷が景気の二番底につながる懸念を強調していたが、“異端学者”とされていた岩田氏が懸念していた通りに90年代の日本経済は坂道を転げ落ちた。 岩田氏は教授としても変わっていた。印象に残っているのは、「T勘定」と呼ばれる簿記を用いて、家計や企業のバランスシート(貸借