こわばった表情でお辞儀した赤尾文子に笑いながら手を振って外に出た清水は、スーツのポケットから携帯電話を取り出して、自分の「上司」である片桐にかけた。 清水 「もしもし、片桐の親分ですかぃ、清水です」 片桐 「おう、清水か。で、今日はどうだった? 目ぼしいカモはいたか?」 清水 「今日は3つほど回ったんですがね、3つ目のグランドブレーカーっていう会社の橋本ってヤロウですがね、どうやらいいカモのような雰囲気なんで……」 片桐 「ほう。どんな感じだ?」 清水 「これがまた、優柔不断を絵に描いたようなやつでしてね。ちょっと怒鳴りつけてやったらすぐビビりやがるし、民法を持ち出したらイチコロでさぁ」 片桐 「そうか。カモがネギしょってやってきた、ってやつか」 清水 「へい。あさってのアポを取ってきたんで、霧島の兄貴と一緒に行って、雑誌購読と観葉植物の話を押し込めば、橋本は契約書に判を押しますぜ。霧島の