「親孝行はした方がいい」「親子は無条件に“良い”関係性である」……そのような模範は広く社会に共有されているといっても過言ではない。 しかし、その一方で、我が子に精神的・肉体的な虐待を与える“毒親”と呼ばれる人たちも存在する。ネグレクト、過干渉、暴言……“毒親”による一方的な押し付けによって苦しんでいる子どもたちは、親に対して感謝の念を抱く必要はあるのだろうか。 気鋭の若手評論家として活躍する古谷経衡氏による著書『毒親と絶縁する』(集英社新書)から、毒親による虐待の実情、そして心に受けた深い傷を紹介する。 ◇◇◇ 生き地獄 話を私のパニック障害発症の1998年12月に戻すことにしよう。私の発作は、この体育館での出来事を切っ掛けに、以後頻繁に起こるようになった。それは、「広く逃げ場の無い場所」「衆目から監視されている場所」および「静寂が支配する緊張した空間」という三点のうち、どれか一つの条件が