100年前の戦争の歴史は過去形ではない。現下のウクライナ戦争は、100年前に起きた戦争の歴史の連なりなのだ──前編に引き続き、猪瀬直樹がウクライナ関連の映画を一気にレビューする。 いきなり映画を観始めると、いったい誰が誰と戦っているのかチンプンカンプンになってしまうかもしれない。まずは「マイダン革命」というキーワードを頭に入れておこう。 ウクライナ危機の火種に着火したキーパーソンの一人が、ヤヌコビッチ大統領だ(2010年2月〜2014年2月在任)。ヤヌコビッチはウクライナとEU(ヨーロッパ連合)の連合協定締結を約束していたのに、2013年11月、親ロシア派に寝返る。 怒れる民衆は首都キエフの広場に集結し、流血を厭わず特殊部隊との衝突を繰り返した。デモ隊はとうとう100万人が参加するまでに勢いを増す。一連のデモ活動は「エブロマイダン」(Euromaidan=ウクライナ語で「ヨーロッパの広場」