企業の現場でユーザビリティ関係者と話しをしていると「何か人間中心設計を取ることが有効だと実証できるような事例はないですか」という話題になることが多い。事例があれば周囲を容易に説得できるからだ。また、企業幹部などと話しをしていても「人間中心設計を実施して有効だったという事例はありますか」と聞かれることは多い。あるなら取り入れることを検討しましょう、というスタンスなわけだ。 事例があればたしかに納得してもらいやすいだろう。ただ、その前に、相手を説得するにはあまり役にたたないが、そうした発想に含まれている問題点を指摘しておきたい。 たとえば広告費用を取り上げてみよう。広告に関する費用対効果の議論は結構なされているのだけれど、厳密な意味で、それが本当にどこまで有効なのか、明確に示しているデータは少ないと思う。広告代理店が提示するデータは、当然ながら彼らにとって有利に作用するものだ。それにもかかわら