立教大学図書館様が所蔵する洋装貴重書への保存修復処置をお引き受けする機会を頂いた。まずは貴重書群全体の特色や劣化状態を調査・把握し、図書館様と協議のうえ処置方針を定めた。これに基づいて対象資料を選定し、2013年度から2015年度までの3年間にのべ500点の資料に対して手当てを行い、貴重書群全体の状態の改善を図った。以下に概要を報告する。 立教大学図書館は、それまで池袋キャンパスに点在していた図書館を統合・一元化し、2012年11月に全面開館した。収蔵可能冊数200万冊、閲覧席数1520席を誇る、国内の大学でも屈指の大規模図書館である。地下には約3000点の洋装本・和装本の貴重書・準貴重書を収蔵する貴重書庫が設けられている。 貴重書庫は、床・壁・天井の外側に空気層を設け、書庫内の温湿度環境を制御している。壁面には国産杉を、壁面の内部には調湿性能と酸・アルカリ吸着性能を持った無機質系調湿材を