僕の仕事仲間に山本太郎さんという人がいた。仮名か実名かわからない名前なのでこのまま書こう。もちろんあの政治家とは無関係だ。 太郎さんはちょっと変わった人で、よくしゃべった。あんまり人の話を聞かずにしゃべるくせに結論がなかったりするので、会議の中では僕はたまに苦笑した。 彼の方が年上だけど一度など、 「黙れ! オレがしゃべっとんねん」 と黙らせたことすらある。放っておくとまたしゃべり出す。 仕事でなければとても愉快な人で、誰とでも友達になる特技があり、実際に友達も多かったと思う。 もう十五年近く前のことだが、僕と太郎さんはもう一人の仲間とスウェーデンとフィンランドに出張した。現地のタクシーの中では、最も英語が話せない太郎さんが一番よくしゃべった。 「*** Hotelね。Little hurryね」 「太郎さん、英語のあとの、その『ね』はなんなんですか」 出張の終盤、だいたい仕事は済んだ頃に
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